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誰がやってもお先真っ暗の水道事業、国会で見えなかった財源論

 

 

 

閉会を間近に控える国会で可決した「改正水道法」。端的にいえば、水道事業の民営化を可能にする法案である。水道事業はインフラの所有権と、そのインフラを使って事業を行う運営権に分かれる。所有権は自治体に残したまま、運営権を民間に委ねる、いわゆるコンセッション方式を認めるのが今回の改正水道法の骨子だ。

 

 

特段新しい手法ではないコンセッション方式


公共インフラにおけるコンセッション方式は特段新しい話ではなく、すでに空港でもコンセッション方式は導入されており、関西国際空港や仙台空港などでは導入済みだ。空港以外にも道路にもコンセッション方式が導入されていて、愛知県が採用した際には大いに話題になったのは記憶に新しいところである。

 

特段、新しいテーマではないにも関わらず、なぜ、水道事業でコンセッション方式が話題になったのだろうか。実は今回の国会論戦ではこのポイントがぼけてしまったように思う。非常に重要なテーマなだけに、野党にはもう少し戦略が欲しかったというのが正直なところだ。

 

もっとも、他の法案よろしく、今の政権与党は国会運営を基本的には軽んじる傾向が強いため、審議時間の確保などがまったく丁寧ではないため、野党としても、その限定された土俵の中で戦わないといけないハンディがあることにも、有権者としては理解を示さなければならないだろう。

 

 

空港や道路はよくて、水道はダメ?


さて、本題だ。改正水道法ではコンセッション方式の導入によって、「水道料金が跳ね上がることへの懸念の声」が野党から相次いだ。この指摘はいくつかの点で穴がある。

 

一つは今のまま、自治体が運営していても、早晩水道事業は維持できなくなる自治体が出てくることは明白であり、かつ、水道料金の価格差は今後広がる一方であることも自明である。現状ですら、全国の自治体を比較すると、最大で8倍の価格差が存在し、ユニバーサルサービスは言えない状況にある。

 

加えて、コンセッション方式の導入は行政サービスの価格を引き上げてしまう可能性は確かに存在して、それが本当に問題なのだとしたら、それは水道事業だけではなく、空港や道路などでも同様のはずだ。それとも空港や道路は利用料金が上がってもいいけれども、水道事業は利用料金が上がってはいけない、ということなのだろうか。この点は、野党の訴えが弱かった点だ。

 

 

改正水道法のポイントは広域化ではないか


今回の改正水道法では水道事業の広域連携というオプションも入っている。水道事業の広域化によって中間コストを抑えて、水道料金の値上がりを防ぎつつ、インフラを実態に合わせてシュリンクさせていくことは可能である。その選択肢が用意されている、つまりコンセッション方式を選ぶのか、広域化を選ぶのか、その選択肢が自治体および有権者に与えられたという点はむしろ、評価すべきではないかと思う。

 

法案の反対討論の中で、この辺のバランス感覚を有していたのが国民民主党だ。同党は改正水道法には「反対」ではあったが、(1)震災への備えとなる水道事業者等に施設の維持・修繕を義務付ける規定(2)都道府県に水道事業者等の広域的な連携の推進役としての責務を規定し、都道府県が水道基盤強化計画を定めたり、広域的連携等推進協議会を設置できるようにすること、については法律を改正すべき事項であるとの立場を明確にしたその上で、コンセッション方式への懸念を示し、反対へ回った。

 

 

バランス感覚を示した国民民主党


今のメディア報道の中では、目立ちにくい立ち位置だが、本来は有権者はこういう部分をもっと知るべきだろう。なんでも反対の野党と、法改正のうち必要なところは必要と認める姿勢。願わくば、岐路を迎える水道事業の財源論を語ってほしかったところだが、それは国民民主党の一つの課題なのかもしれない。