霞が関から見た永田町

霞が関と永田町に関係する情報を、霞が関の視点で収集して発信しています。

MENU

【徳島1区】徳島自民 VS 後藤田正純

 

 阿波戦争の再来か?それとも令和の政治改革か?

 

新たな二項対立の軸、一つ目は徳島1区で勃発した徳島自民 VS 後藤田正純の構図である。

 

大阪自民 VS 大阪維新の構図がよく似た構図だが、大阪の対立構造の本質は当時の大阪府知事であり非常に人気の高かった橋下徹の虎の威を借ることで保身を図った大阪府議、大阪市議、堺市議の自民党所属の離党組との対立である。

また、「大阪都構想」といった虚構を掲げることにより大阪を中心に地域政党として党勢を拡大することで、大阪府市における既得権益者が大阪自民党府連から大阪維新の会に移ったに過ぎないという点で、従来型の二項対立である。

 

 

www.ksmgsksfngtc.com

 

 

また、後藤田正純の大叔父に当たる後藤田正晴が起こした阿波戦争と同様の構図のようにも捉えられるが、阿波戦争は当時の田中角栄率いる田中派と三木武夫率いる三木派との派閥争いによる対立構造であり、権力争いといった点ではこちらも従来型の二項対立である。

 

 

きっかけは1974年の第10回参議院議員通常選挙。分裂選挙の舞台となった1人区の徳島県選挙区には現職の久次米健太郎がいたが、田中角栄首相は現職を優先するという不文律に反し内閣官房副長官であった後藤田正晴を自民党公認候補とし、現職の久次米に公認を出さなかった。徳島選挙区は三木派を率いる大物政治家三木武夫の地元で、久次米は「三木武夫の城代家老」と呼ばれていた三木側近の一人であったことから、三木は田中の決定に猛反発し、派閥をあげて党公認候補後藤田の対立候補である久次米の選挙戦を支援し保守陣営が分裂する選挙戦となった。この選挙以後長きにわたって徳島では自民党が分裂状態に陥った。

 

阿波戦争 - Wikipedia

 

 

では、徳島自民 VS 後藤田正純の構図は何が従来型の二項対立と異なるのか?

 

結論、あるべき政治の形について正論を発信した後藤田正純に対して自分たちの理論に基づいて批判する徳島自民の間で対立構造が生じている点で従来型の二項対立と異なる。

 

つまり、古き悪しき政治との戦いである。

 

後藤田正純は不倫や結婚詐欺賛報道が過去にあったこともあり賛否両論があるものの、今回の徳島自民 VS 後藤田正純の構図とその本質については新たな地方の自由民主党、ひいては地方政治の健全化に向けて非常に重要な一石を投じている。

 

 

 

徳島自民と後藤田正純の経緯まとめ

 

徳島県知事多選問題

 

2018年12月5日

飯泉嘉門徳島県知事 5選出馬表明

 

2018年12月21日

岸本泰治(当時徳島県議、自由民主党徳島県支部連合会副幹事長)が「16年間で何の成果も上がっていない飯泉県政をこのまま4年続けることは良くない。新たな選択肢を」として出馬表明。2019年2月19日に自民党を離党。

 

2019年3月6日

元自民党県議の岸本泰治が出馬表明しているにもかかわらず、徳島自民は5選を目指す現職の飯泉嘉門を推薦すると決定。

 

飯泉知事は自由民主党の所属はなく、自民・公明の推薦でこれまで県知事選に出馬していた。筋であれば徳島自民は岸本氏を推薦すべきであったが、これまで推薦を続けていた飯泉氏の推薦を決定したのである。

 

これに対して後藤田正純は、

徳島県は宿泊者数4年連続で全国最下位、魅力度ランキングでは下から2番目、対抗馬として出馬した人は自民党の県議なのに、なぜ無所属の知事を自民党が推薦するのか。百歩譲っても自主投票で良いではないか。

と主張した。

「地方紙と首長と議会のなれ合いは、徳島だけじゃなく全国的な地方政治の劣化の問題です」 - 木下ちがや|論座 - 朝日新聞社の言論サイト

 

徳島県記念オーケストラ問題

 

2011年

徳島県で「とくしま記念オーケストラ(以下、記念オケ)」の文化事業が開始

 

2017年5月

記念オケ事業を随意契約で受託していた徳島の株式会社モウブから多額の資金が流れていた東京の有限会社アンサンブル・セシリアに対して東京国税局が法人税など3,000万円の脱税の疑いで東京地検に告発し、翌年執行猶予付き有罪判決が確定。

 

2017年11月30日

記念オケ事業の本年度での終了と議会の議論を経ずに多額の事業費が拠出されていた文化立県とくしま推進基金の廃止を発表。「県は被害者だ」「民間事業者の取引内容に関すること」として事件の幕引きを図る。

 

2021年6月

扶川敦徳島県議が2017年5月の刑事確定訴訟記録に残されていた一部を記者会見で公表し問題が再燃。有限会社アンサンブル・セシリアの代表を務めていた川岸美奈子は飯泉知事によって徳島県の政策参与に任命された人物であり、県職員とのやり取りなどの汚職疑惑の新情報が公になった

 

2021年6月24日

徳島県議会での徳島自民嘉見博之の代表質問に対して飯泉知事が2017年に東京地検が捜査した際にもし地方自治法違反等が認定されれば「私や県職員にお咎めがあったはずである」と回答。

 

2021年7月9日

徳島県議会で県内2つの市民団体から疑惑の解明や徹底調査を求める2つの請願が、徳島自民県議23人を含む30人の反対でいずれも不採択となった。

 

この件の不採択賛成理由として徳島自民県議の立川了大は、

刑事確定訴訟記録については、記載内容が真実かどうかは必ずしもその全てが担保されたものであるといえないことや、誰が適法に入手したのか、また検察庁からどのような制約が付されているのかといった情報を基に、議会として、より高い規範意識も視野に入れ、本会議や委員会の場での使用の可否を慎重に判断する必要がある。その情報がないままに、安易に使用することは許されないものであり、法に基づき活動しているわれわれ議員が不確かな情報をうのみにし、法的な問題が払拭できていないにもかかわらず、請願の紹介議員として名を連ねることは驚きを禁じ得ない。

と主張した。

【記念オケ問題詳報】「知事答弁が虚偽だった可能性が出てきた」「請願が求めているのは議会として真相を究明していく姿勢」 しかし徳島県議会は疑惑解明求める請願を不採択に|徳島の話題|徳島ニュース|徳島新聞電子版

 

 

7年間で徳島県から飯泉知事の懇意にしていた女性が代表を務める会社に約8億円の資金が流れていたことを鑑みると、県としては調査を徹底的に行うべきであるにもかかわらず、確固たる証拠がないと調査をしないというのは論違いである。

というのも汚職をした確固たる証拠があれば県議会で調査する必要はなく、関係者は刑事罰を受けるだけのことである。

 

 

これに対して後藤田正純は、

地検の捜査は、記念オケ汚職の一つの事案である知事知人女性の『巨額脱税』が争点のはず。

今度は、記念オケ汚職のもう一つの新たな疑惑が明らかに。

それは、県庁の組織的関与であり、『背任や談合』の疑いであり全く別の事案である。

知事が『おとがめなし』だったとした議会発言は、逆に虚偽答弁として報道されるべき重大な発言。

議会も徳島新聞も、記念オケ汚職問題の全容解明をする気はあるのか?

県民不在の『なれ合い県政』で、最後まで隠蔽に加担するつもりか。

と主張した。

Facebook

 

記念オケ問題の詳細はこちら↓

www.zaiten.co.jp

 

徳島県新型コロナ対策の迷走

 

2020年4月21日

飯泉知事が徳島県外からどの程度の人が徳島県を訪れているのかを把握するため、直ちに県内の施設などで県外ナンバーの車の実態調査を行う考えを示すが、徳島県内で県外ナンバー車へのあおり運転や投石、傷つけ、ドライバーへの暴言などの嫌がらせが相次ぎ、3日後の24日に記者会見で謝罪。

 

2020年12月4日

徳島自民の県議が主催する50人規模の懇親会に飯泉知事と県の幹部職員が参加、飯泉知事は「感染対策を行って実施され問題がないものと認識している」と主張。一方で徳島自民の寺井正邇は「配慮が足りなかった」と謝罪。

 

2020年12月16日

新風とくしまが主催する20人規模の懇親会に飯泉知事が参加。飯泉知事は「感染対策を行って実施されたことについては問題がない」と主張。一方で新風とくしまの臼木春夫は「配慮が足りなかった」と謝罪。

 

2021年1月29日

徳島県理事県議会で全国知事会の会長でもある飯泉知事は12月の会食に出席したことに対して「大変申し訳ない」と一転して謝罪。

 

 

 

次期衆院選の徳島1区公認候補問題

 

2021年4月3日

徳島自民の県連幹事長である嘉見博之が飯泉知事も出席していた杉本直樹県議の県政報告会の場で「(飯泉知事に)徳島1区で出てほしい」と発言。

この発言を受けて徳島自民の山口俊一県連会長(徳島2区)は「個人の見解を述べるのは自由」との認識を示す

 

2021年4月6日

徳島市議、町議、元県議ら24人が嘉見博之の発言は反党行為であるとして、自民党本部の山口泰明選対委員長(埼玉10区)に県連幹部の刷新を求める要請文を提出。

 

2021年5月9日

徳島自民の常任総務会で、県議24人が後藤田正純の県知事と県議会を「なれ合い」や「猿山の群れ」とする一連の批判に対して「うそとでたらめにまみれた言動」があるとして、自由民主党の公認をしないように党本部に申し入れをする案を提案し、常任総務会45人の内半数以上の24人を擁する県議の賛成多数で可決。

 

2021年5月17日

徳島自民の山口俊一県連会長(徳島2区)は党本部で林幹夫幹事長代理と面会し、次期衆院選で後藤田正純を公認しないように申し入れた。しかし、山口泰明選対委員長(埼玉10区)は「後任は現職優先。申入書など持ってこられても困る」とコメントした。

 

 

 

「個人の見解を述べるのは自由」なのであれば、後藤田正純の県政のなれ合い批判も個人の見解を述べているので自由であるとなるにもかかわらず、それを非公認にすべき根拠として党本部に申入書を持参する徳島自民は大丈夫であろうか。

 

 

これに対して後藤田正純は、

「危機管理の時にこそ、長期政権のゆがみが出てくる。4月21日に愛媛がまん延防止等重点措置の適用を要請したが、なぜ徳島はあの時点でやらなかったのか。大失政だ。なぜ大型連休に県境を越えるな、実家に帰ってくるなと言わなかったのか。無料PCR検査なんて帰省しろと言っているようなものだ」

 「(公道での聖火リレーを中止した)愛媛の知事が涙を流したように、危機管理は危機感を共有するのも大事。徳島は地元新聞社の社長が聖火ランナーをやっていたが、これもアウト。なれ合いトライアングルだ」

と主張した。

非公認申請された衆院1区後藤田氏 「県連は県民不在」:朝日新聞デジタル

 

 

地方政治の今後の在り方を占う選挙区

 

徳島自民 VS 後藤田正純の対立は2年前の徳島県知事選から表面化し、その後自治体の首長選挙でも徳島自民が推薦する候補者に対して独自の候補者を支援し、吉野川市、小松島市は後藤田正純が支援する市長が当選し、徳島市は徳島自民が支援する市長が当選した。

 

これまでの経緯をまとめると、徳島1区の現状は飯泉嘉門と長年の関係にある徳島自民が結託して5選を目指す知事選の妨害を行った後藤田正純に対して、恨みを晴らすため威信をかけて様々な妨害工作をしているのである。

 

しかしこの構図は徳島県に限った話ではない。

 

 “後藤田派”に話を聞けば、「後藤田さんの主張は、正論ではあるんです。県知事選で対立候補を応援したのも、今の知事が5選目で、多選は良くないという考えから。市議のほか町議も彼の反論書に署名していますし、県議以外は“後藤田支持”が大半です。ただ、東京育ちのせいか、田舎特有の“利権”や“なれ合い”が理解できず、県議会の重鎮にもズバズバ物を言ってしまう。主張は正しいのですが、“郷に入っては郷に従う”ができない不器用さが仇になったんですよ」 

「後藤田正純」衆院議員が全県議と真っ向対立 “姑息”“デタラメ”と指弾され | デイリー新潮

 

上記のコメントが全てを物語っているとおり、日本全国の田舎の地域社会にはびこるこれまで連綿と続いてきた既得権益確保となれ合いにまみれた政治の在り方への挑戦であるのかもしれない。

 

次期衆院選は政権与党である自由民主党に壮絶な逆風が吹き荒れる中で、与党対野党の対立構造ではなく、有権者が古き悪しき政治に対してNOを突き付け新たな政治の形を模索するのか、それともこのまま衰退を甘んじて受け入れるのかを選択する新たな二項対立の軸が表出している徳島1区に注目したい。