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新型コロナウィルス、法改正ではなく現特措法で対応が本来あるべき姿

2020年3月5日。国民民主党の玉木雄一郎代表は、時事通信社のtwitterにコメント付きリツィートする形で次のように発信した。
「特措法10条に基づき、国や地方公共団体、電力会社等にはマスクの備蓄が義務付けられているが、この備蓄マスクが一部使われ始めている。その意味で、特措法に基づいて既に新型コロナウイルスへの対策が行われている。法改正を待つことなく、速やかに備蓄マスクを活用すべきだ」。

 

 

旧民主党政権下で制定された特措法

今、政府与党は、新型コロナウイルスの感染拡大に対応するため、新型インフルエンザ等対策特別措置法を改正すべく動き出している。同法は旧民主党政権時代に制定された法律で、対象疾病として、(1)新型インフルエンザ、(2)再興型インフルエンザ、(3)新感染症の3つを規定している。中でも新感染症については、「すでに知られている感染症の疾病とその病状や治療の結果が明らかに異なるもの」と定義している。

 

冒頭の玉木代表のtwitter投稿にあるように、現行の特措法でも新型コロナウイルス対策は十分可能だ。これは政局の視点ではなく新法でいくのと、現行法で対応するのと、どちらかよりスピード感を持って対応できるか、まさに戦術の話だ。従って、当然のことながら国会の日程闘争など政局をゆめゆめ持ち込んではならないのは当然のことだ。

 

国民民主党のまっとうな主張

その上で言えば、国民民主党が言うように、新型コロナウイルスの対策がこの1、2週間が山場とされる中、新法よりも現行法で対応すべきというのは、筋が通った主張と言えよう。国民民主党の主張は次の通りだ。

  • 新型コロナウイルスは、感染症法第6条9項の「新感染症」え読めるはず。改正ではなく、速やかに「特措法」の適用を決めるべき。
  • 法改正をするにしても、「新感染症」の定義を改める感染症法の改正をすべき。
  • 私権制限を伴う「みなし」規定を2月1日からとする訴求効は認められない。
  • 「みなし」規定を追加するような法改正はすべきではない。今後、新型コロナウイルスのような新たなウイルスが出てきた場合に、その都度、法改正を求められ対応が遅れる事態を招きかねない。

至極もっともな主張だが、残念ながら、政権がこの意見をそのまま読み込む状況にはなっていない。ただ、今回、国民民主党が国民の安心・安全を第一に考え、その最も有効な対応方法、スケジュールを提案したことを忘れてはいけないだろう。

 

安倍政権こそが新型コロナに政局を持ち込んだ

実際、安倍政権の対応は常に後手後手だった。この騒ぎが落ち着いた時には、国会でしっかりと審議すべきだろう。

今回の法改正も「政局を持ち込むべきではない」との立場から野党は改正案の審議には応じる構えだが、政府の「原因となる病原体が特定されていることから、現行法にさせることは困難」との主張は非常に心許ない。

それであれば、中国・武漢での新型コロナウイルス発症のニュースが流れ、ダイヤモンド・プリンセス号での一連の難しい対応が迫られていた段階で、もっと早く対応すべきだった。おそらく、その時点であれば、現行法で対応できたし、そうしたはずだ。今回、政権が法改正にこだわるのは、「今さら、適用するとは言えない」からだ。言ってみれば、安倍政権の体面を取り繕うための法改正であって、新型コロナウイルスに政局を持ち込んでいるのは安倍政権と言ってもいい。

 

広く有権者が知るべき、野党の正しい主張

とはいえ、そこまで詳しい内情はなかなか国民に伝わらないし、ここで法改正に反対の立場を取れば、これだけ国内経済が落ち込み、国民心理がネガティブになっている状況では、理解は得られない。悔しい思いはあるだろうが、政権の法改正スケジュールに乗るしかない。

ただ繰り返しになるが、今回の新型コロナウイルス対策で、本来あるべき姿を訴え続けてきたのは国民民主党をはじめとする野党であることを忘れていけない。