霞が関から見た永田町

霞が関と永田町に関係する情報を、霞が関の視点で収集して発信しています。

MENU

入管法改正、遅ればせながら対案を示した国民民主党を評価したい

 

 

 

本臨臨時国会の大きな目玉である、入出国管理法改正。安倍首相の外遊日程と、会期延長をせずに法案を通したい政府・与党の思惑に押される形で、衆議院を通過した。
本法案の審議において、政府の国会運営は確かに乱暴だった。少子化により労働力不足が懸念される日本にあって、本来、外国人労働者の受け入れについては保守もリベラルも問題意識を共有できるはずだし、落とし所も見つけられるはずだ。そういう意味で、衆議院における国会運営は残念の一言に尽きる。

 

 

旧態然とした野党に国民もしらけている


一方で、野党にも問題がないわけではない。結論から言えば、野党の国会戦術はあまりに旧態然としてて、正直、有権者にはまったく共感は広がっていないのが現実だろう。

 

11月27日、同法は衆議院を通過したわけだが、午前の法務委員会開催中に、野党8党から法務大臣の不信任案が提出された。これにより、委員会は中断し、本会議を開き、不信任案の採決が行われている。結局、法務委員会が再開されたのは夕刻だった。

 

従来の国会戦術ではこれでもよかったのだろう。強引に国会運営を押ししすめようとする政権に対して、不信任案を提出し、時間を稼ぐ、という戦術だ。有権者からも「野党は頑張っている」と見えていた時代もあった。

 

 

カメラ目線の気持ち悪さ


しかし、今は違う。与党の国会運営が乱暴だということを差し引いても、法務委員会の採決の際に、委員長席に詰め寄る野党議員の中に、視線が明らかにテレビカメラに向いている議員が何人かいた。あのような姿を見れば、彼らが本気ではないことは有権者は見抜くのだ。見抜くどころが、白けてしまう。

 

法案がザルだらけで、中身のあるものにしてほしいというのが産業界、有権者の共通した思いだ。その思いを汲めばこそ、政府案への対案を野党こそ出して欲しかったし、それを望んでいた人も多かった。

 

実際、国民民主党は対案を用意していた。これは素晴らしいことだ。ただ、問題は国会戦術として野党の足並みが乱れることを恐れて、衆議院には法案を提出しなかった。

 

 

国民民主党の「解決から対決」はいずれ支持を集めるだろう


残念ながら国民民主党の政党支持率は低いままだ。彼らが有権者の支持を集められるとすれば、それは国民民主党の目線が永田町ではなく、国民に注がれていることを証明できた時だろう。野党の足並みが乱れていることを恐れている場合ではないのに、と筆者は歯がゆく思っていたところだ。そんなところに、参議院では国民民主党が対案を提出したというニュースが飛び込んできた。

 

与党に対して徹底した抗戦を図りたい立憲民主党からは「趣味のような政策案」と揶揄する声も一部にはあるようだが、そんな声をきにする必要は全くない。政府が国民民主党が提出した法案を審議する可能性は低いだろうが、提出したことでメディアを含めて、様々な場面で国民民主党は説明する責任が生まれた。つまり、それは言い方を変えれば、政府案と何が違うのか、何が工夫されているのかを国民に説明するチャンスを得たということだ。

 

「与党の国会運営が拙速で乱暴だ」と批判することしかできない、やらないと映っている立憲民主党と、政府案の課題を明らかに、それに対して法案を提出することで自分たちの立ち位置を明確に説明しようとする姿勢を見える国民民主党と、有権者がどちらに信頼を置くか、それは自明だろう。

 

 

有権者を信じることが第一歩


もちろん、この1回でいきなり信頼を勝ち得ていくわけではない。しかし、従来の「なんでも反対」「法案可決率を下げること」を狙った野党の国会戦術では有権者の信頼は勝ち取るができない今、国民民主党の戦術は時間とともに功を奏していくことになるだろう。短い会期になるが、国民民主党の論戦に期待したい。