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IR整備法案の付帯決議で実を取った国民民主党

 

 

 

IR整備法案の成立

 

 20日、IR整備法案が成立した。2016年成立のIR推進法を受けて、実際に開設されるカジノについて詳細に定めたのが今回のIR整備法案である。これにより、日本でのカジノ開設へ向けた動きが加速することになりそうだ。

 

 一方で、国民世論は必ずしもカジノ開設には前向きな評価を下しておらず、その声も背景に、野党は法案成立に強硬に反対していた。法案成立へ向けて与党も譲らなかったことから、本国会の最終盤では、このIR整備法をめぐって攻防が繰り広げられていた。そんな中で、最後は与党の数の力で押し切ったかたちとなり、法案成立となったのである。

 

 

付帯決議に国民民主党が賛成

 

 立憲民主党や国民民主党はIR整備法に反対の立場であったが、法案本体の成立後の対応で両党はその立場を異にした。

 

 国民民主党は、IR整備法にかかわる付帯決議について賛成に回ったのである。

 

 付帯決議とは、国会の委員会が法律案を可決する際に、当該委員会の意思を表明するために行う決議である。法律の運用に関する注文や今後の課題など、法律案本体には盛り込むことの出来なかった問題点を指摘する内容になることが多い。

 

 付帯決議は法律的な拘束力を有するものではないため、これを行ったからといって何かが大きく変わるといったことはないが、政府はこれを尊重することが求められる。法律の運用や想定される課題への対応について委員会として注文をつけるかたちとなり、政府としても簡単には無視出来ないのだ。

 

 政治的に見れば、強硬に反対する野党を取り込むために、付帯決議のところで野党の主張の一部を取り入れるということが行われる。そのため、この付帯決議に賛成する野党は他の野党から批判されることも少なくない。いわく、「与党に魂を売った」、と。

 

 今回も、国民民主党が付帯決議に賛成したため、その委員の発言中に立憲民主党の議員から批判を浴びるという場面があった。

 

 白か黒、1か0で考えるのであれば、法案本体に反対していながら、付帯決議には賛成するというのは受け入れがたいものであろう。ただ、数の力で劣る野党として、少しでも自らの主義主張をかたちにするという意味では、付帯決議であっても与党にその主義主張を受け入れさせるという方法は現実的に採用を検討すべき方法のひとつである。

 

 

国民民主党は実を取った

 

 国民民主党はIR整備法が与党に押し切られて成立してしまうことを見据えて、「最終手段として」31項目の付帯決議を要求した。

 

www.dpfp.or.jp

 

 

結局、付帯決議は採択されるところとなった。

 

第192回国会衆法第20号 附帯決議

 

 

 法律の運用面での注文も数多く、カジノが立地する自治体の関与を強くし、ギャンブル依存症対策をはじめ、負の側面への対応の重要性を指摘したものとなっている。


 カジノが開設されるとしても、野放図な拡大がなされないような配慮がされた付帯決議になっていると評することが出来るだろう。

 

 もちろん、カジノ解禁に反対する立場からすれば、IR整備法案の廃案が目標であって、開設されてからの対策の強化を受け入れるのは敗北以外の何者でもないだろう。しかし、反対ばかり叫んでいても、与党の数の力の前に、押し切られるのは目に見えている。


 反対を叫ぶパフォーマンスは国民の一部には受け入れられるかもしれないし、叫んでいる当の本人たちは仕事をした気になれるのかもしれないが、結局、事実として残るのは与党が押し通して成立した法案が実際に運用されることになるということだけである。

 

 対して、付帯決議は委員会としての意思表明を行うものであり、そこに少しでも反対の立場の野党の主義主張を折り込むことが出来るのであれば、それは反対だけとは違った、一定の成果を得ることが出来ることになる。

 

 その一定の成果という実を取ったのが今回の国民民主党である。野党としての足並みが崩れたという批判も当然に予想されるが、野党が一致したところで法案が成立する事実に変わりがないのであれば、次の策として、可能な限り自分たちの主義主張を実現するための方策を考えることは何も間違ったことではない。

 

 今回の国民民主党の付帯決議への賛成に対しては批判もさることながら、支持を表明する人もいる。ギャンブル依存症対策の活動を行ってきた田中紀子氏もその一人だ。

 

officerico.co.jp

 

 

その他、カジノ専門家の木曽崇氏も好意的なツイートを寄せている。

 

 

 

 

 

 国民民主党の対応は、批判をするのが野党の仕事だと思っている人には理解を得られない方法だろう。しかし、世の中は、そういう人ばかりではない。現実的な対応と代替案の提示が出来てこそ、野党としての存在感を示せるのであり、今回の付帯決議の活用もそのひとつと言える。反対すべきことは出来る限り反対しながら、ほんの少しであっても実が取れるのであれば、それを取りに行く。そんな現実的な対応を積み重ねることが野党としても政権担当能力を示す機会となり、それが支持者を拡大していくことにもつながるのである。