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野党提出の「航空保安法案」の成立を急げ

 

 

 

野党会派が「航空保安法」を提出

 

 6月29日(金)、 国民民主党、立憲民主党、日本共産党、社会民主党、無所属の会、無所属議員は、「航空機強取等防止措置に係る体制の強化のための施策の推進に関する法律案」(航空保安法案)を共同で衆議院に提出した。概要は以下の通りである。

 

(目的)
 近年の国際的テロリズムの発生、訪日外国人旅客数の増大等を踏まえ、航空機強取等防止措置の重要性の増大に鑑み、その体制強化のための施策(「航空保安体制強化施策」)を集中的に推進 (基本理念)
・航空機の強取等の防止による航空の安全の確保が国家的に重要な課題
・国がこれに対処するために中核的な役割を果たすべき
・航空保安体制強化施策を積極的かつ速やかに推進
・個人の権利利益が不当に侵害されることのないように配慮
(国の責務)
 国は、基本理念にのっとり、航空保安体制強化施策を策定・実施
(施策の基本となる事項)
 政府は、法施行後2年以内に、航空保安体制強化施策を実施するめに必要な措置を講ずる
(1)役割分担の見直し
 関係者の役割分担の在り方について、国が中核的な役割を果たすこととなるよう見直し・必要な措置
(2)従事者の処遇並びに資格及び教育訓練
 従事者の人材の確保及び資質の向上のため、従事者の処遇並びに資格及び教育訓練の在り方について検討・必要な措置
(3)旅客及び荷主の協力の確保
 旅客及び荷主の協力の確保の在り方について検討・必要な措置
(4)費用の負担
 費用の負担の在り方について、航空運送事業者の負担に配慮しつつ国の一般財源による負担割合を引き上げる方向で検討・必要な措置

 

 

「911テロ」後、出入国・搭乗手続きは格段に厳しくなった

 

 野党案については、紹介した概要を一読すれば、その目的や趣旨は明快であり、詳細な説明は必要ないだろう。この法案は旧民進党を中心としてとりまとめられ、過去にも提出されたことがあったが、与党の非協力的な姿勢により審議に附されることもなかった。

 

 さて、2001年の「911米国同時多発テロ事件」が世界に与えた影響は甚大なものであった。イラク戦争、アフガニスタン軍事作戦などにつながり、その後の国際情勢の変動をもたらした。


 当然、航空保安の面では大きな変化があった。911テロ後では、特に国際線に乗る際、出入国手続き・搭乗手続きが格段に厳しくなった。液体類などの持ち込みが厳しく制限され、手荷物だけでさっと乗り込むことが難しくなった。


 出入国手続きに限らず、航空機の搭乗手続きの際にもパスポートは厳重にチェックされるようになった。航空券に登録された名前が正確でないなどと呼び出しを受けた乗客がいて、そのために出発が遅れるような事象も起こっている。アメリカに公務で出張したある国土交通副大臣が帰国の際、根掘り葉掘り沿質問を受け、飛行機に乗り遅れそうになったとぼやいていたことを思い出した。

 

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国際観光旅客税をとるのなら航空保安法案を通せ

 

 平成30年度税制改正において、国税として国際観光旅客税が導入された。日本を出国する旅行者らから1000円を徴収するもので、来年1月から適用される。政府は観光先進国の実現に向けた観光基盤の拡充及び強化の要請にこたえるものと説明していたが、十分な納得は得られなかった。

 

 観光立国を推進していくことにはほとんどの人が賛同するだろう。この税金が、受益者負担の原則に反しているのではないかということが一番の問題となった。観光・ビジネスを問わず日本人出国者も含めて課税されるにもかかわらず、使途が国内の観光目的となっていることや、航空券等の値段に関係なく一律に1人1000円の負担を求めることの正当性について疑問が残ったままだったが、法案は成立してしまった。

 

 国が責任を持って保安体制を強化することにも国際観光旅客税も含めた税源を充てれば、日本人出国者の理解も深まるのではないか。その意味で国際観光旅客税を導入した政府・与党は航空保安法案の審議に応じるべきだし、最終的には超党派で法案の成立に向けて協力をすべきである。この問題は与野党で対立するテーマではない。

 

 

裏方も含めた航空産業の人材確保への環境整備を

 

 航空業界というとパイロット、客室乗務員など華やかなイメージがあり、若者に人気がある業界という受け止め方を世間ではされているが、裏方の人材確保には苦労しているようだ。

 

 今回の野党の法案のとりまとめにおいても少なからぬ役割を果たした、航空労働界を代表する最大の産業別労働組合「航空連合」は、ウェブサイトに「空港の裏方お仕事図鑑」を立ち上げるなど、空港の裏方の仕事にも関心を持ってもらうように活動を行っている。


 この取り組みは「空港裏方、面白さ知って、労組が就活向けHP、現場の話題、動画・漫画に」(『日本経済新聞』2017年5月13日付け夕刊)という記事でも紹介された。

 

 航空保安に関わる政策に触れたが、パイロット、客室乗務員は勿論のこと、カウンター業務をする人、飛行機を誘導する人、機内食を作る人、荷物を運ぶ人、荷物の検査をする人などが日夜努力しているからこそ飛行機が順調に飛んでいることをあらためて認識したい。