首長選挙における与野党相乗りの頻出
6月24日投開票の滋賀県知事選挙では、三日月知事が2選を果たした。嘉田元知事の事実上の後継として元民主党の衆議院議員であった三日月氏が立候補した前回の知事選挙では、自民党が候補を擁立したが、今回は三日月氏に与野党が相乗りするかたちとなり、ほぼ無風の選挙戦となった。首長選挙では、現職の候補者が有利とされることから、自民党としても元民主党の三日月氏に対しても対立候補の擁立を見送ることになったのだろう。
この滋賀県知事選に見られるように、現職が立候補した選挙戦では、その現職がいずれの政党に近しいのかに関わらず、与野党の相乗りが行われる。このような相乗りが行われると、当該選挙において有権者の選択肢が限定されることになる。特に大半の政党が相乗りした候補と共産党系の候補の一騎打ちになると、有権者にとっての選択肢は限定され、現職を信任するのか否かという選挙になってしまう。
特に、その相乗り候補が自民党に近い人物の場合は、議会議員の過半の支援も受けているなど、盤石の体制で選挙戦に臨むことも多く、対立候補を擁立もままならず、野党も最後は相乗りということになりがちだ。
自治体における政党の基盤づくり
与党系の現職首長が再選を目指した場合、野党はどのような対応をとるべきなのか。
そもそも首長選挙に政党が関わるべきではないという考えた方もあるとは思うが、国政と地方政治は無関係ではなく、誰が首長を務めるのかというのは政治的に極めて重要な事柄となる。大きな規模の自治体の首長選挙に必ず独自の候補者を擁立するという方針を政権獲得前の民主党が掲げていたが、政権奪取を目指す野党にあっては、自治体における基盤づくりのために、自らの考えに近しい人物を首長とすることを目指すということが行われるのである。
しかしながら、首長選に候補者を擁立するのは容易ではない。候補者として相応しい人物をいかに発掘してくるのか。その政党の地域での体力が問われるのであり、体力のない野党は候補者擁立に至らないのである。地域における支持基盤を涵養していなければ、いざ選挙となっても候補者を擁立することが出来ず、その結果、必ずしもその政治姿勢を支持していなくとも、現職の候補に相乗りせざるを得なくなるのだ。そうして、当該地域では与党の基盤が再強化されていくのである。
野党は候補者発掘の努力を
選挙は、その地域において「政治の時間」を作り出す。報道は当該地域に限定されるとは言え、それでも地域紙やローカルのTV局では一定の報道がなされ、当該地域の住民が選挙に関わる情報に触れる機会がある。日ごろ関心が向かなかったであろう首長や議員の存在に対しても一定程度関心が向かう。選挙戦が激戦となれば、それだけで関心が集まる。しかし、与野党相乗りの候補の場合、この住民の関心度合いがどうしても低まる。「どうせやる前から結果は決まっている」と思われてしまい、それ以上の関心が向かなくなってしまうのである。
地域において選挙を契機に生み出される「政治の時間」こそ、野党が自らの存在を各地域の有権者に知らさせ、その主義主張を伝える最大のチャンスである。そして、先に論じたように、日々の地盤涵養の成果を活かす最大のチャンスでもある。特に、各地域においても大きな関心を呼ぶ可能性のある首長選挙はその最大のチャンスであると言える。
にもかかわらず、多くの首長選挙では、野党は独自候補の擁立には至らずに、そのチャンスを逃している。チャンスを活かすための日々の活動をいかに展開していくのか。野党に突き付けられた課題である。
元国会議員のリクルートも
民主党が政権を獲得した2009年。この選挙で大量の新人議員が誕生したが、後の総選挙で彼らの大半は落選し、その後の衆参両院の議員選挙に繰り返し立候補した者についても結局国会に戻ってきた例は少ない。その中には、既に首長選挙に立候補し、当選した者もいる。
そのほか、旧みんなの党の国会議員経験者の中にも、現在は議席を有していない人物がいる。もはや政治とは無関係の世界に身を置いている者も少なくはないと思うが、一方で捲土重来を期している人物も存在する。
統一地方選挙へ向けて、旧みんなの党系の議員を野党は取り込むべきであるという提言もある。
これは議員選挙だけではなく、首長選挙へ向けても言えることである。地域における日々の地盤涵養としての候補者発掘にあっては、議員経験者をいかにリクルートするのかということも含まれる。特に首長選挙にあっては国政選挙と選挙区域が重なることも少なくないことから、国政選挙での候補者を経験した者はリクルートの対象となりうる。野党にとっては、元民主党や元みんなの党の国会議員経験者の中では政治姿勢が近い人物を見つけやすく好都合である。
衆議院議員選挙とは異なり、基本的に地方議会議員や首長の選挙は実施される時期があらかじめ分かっている。それぞれの選挙へ向けて、計画的な対応が可能であるのだ。目の前の国会での攻防だけではなく、足元の地域における首長選挙にも野党は目を向けて、候補者の丹念な発掘を図りたいところだろう。