日本年金機構がデータ入力を委託した業者がずさんなデータ入力を行っていた問題で、業者が契約に違反してデータ入力にスキャナーを使用していたことが分かった。
不祥事が相次ぐ日本年金機構
日本年金機構は情報処理会社「SAY企画」にデータ入力などを委託した。データ入力の際は、2人1組で手入力する契約であったが、同社との打ち合わせでデータの一部をスキャナーで読み取っていると説明された。機械の誤認識により大量の入力ミスにつながっており、機構は手入力するように指示していたが改善されたかどうかの確認はしていなかった。
契約に反した作業の再委託も
3月20日、加藤厚生労働大臣は記者会見で、日本年金機構が個人情報の入力を委託した情報処理会社が契約に反し、中国の業者に作業を再委託していたことを発表した。500万人分の個人情報の入力を委託していたが、「外部に個人情報が流出した事実は確認していない」と述べた。
同社は約500万人分の書類に記載された所得やマイナンバーなどに関する情報を扱っていたが、一部の作業を中国の業者に再委託。個人情報保護のため別の業者への再委託は禁止されている。厚労相は外部委託の事業の監督責任について「大いに反省しなければいけない」と述べた。
今回のミスにより発生した影響は?
今回のミスにより下記のような影響が発生した。
ミスの種類 | 影響のあった人数と金額 | 日本年金機構の対応 |
入力漏れによる過少支給 | 約7万9,000人 総額19億6,000万円 |
約6万5,000人は3月に支払い 約1万4,000人は4月に支払い予定 |
誤入力による過少支給 | 約2万5,000人 総額5,300万円 |
4月に支払い予定 |
誤入力による過大支給 | 約4万5,000人 総額8,000万円 |
4月に差し引き予定 |
源泉徴収票の氏名の誤入力 | 約55万人 支給額に影響なし |
修正書類を1月末に再送付 |
日本年金機構とは
国からの委任・委託を受け、公的年金に関わる一連の運営業務を担う機関である。
日本年金機構(にっぽんねんきんきこう、英語: Japan Pension Service)は、日本国政府(厚生労働大臣)から委任・委託を受け、公的年金(厚生年金及び国民年金)に係る一連の運営業務を担う、非公務員型(民営化ではない)の特殊法人である。 運営業務の内訳は旧社会保険庁が担ったもので、保険料の徴収や年金給付などの年金事業である。公的年金の運用は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が複数の金融機関に委託している。
過去の不祥事は?
入札情報漏えい事件
日本年金機構の職員が、年金記録照合作業の入札予定価格などの内部情報をメールなどで漏えいした事件。
日本年金機構の年金記録照合業務を巡る入札情報漏洩(ろうえい)事件で、旧社会保険庁OBで「エヌ・ティ・ティ・ソルコ」(東京・港)営業担当部長の山本一郎容疑者(43)=競売入札妨害容疑で逮捕=が、同機構の高沢信一容疑者(46)=官製談合防止法違反容疑で逮捕=に入札資料を提供するよう依頼していたことが15日、捜査関係者の話で分かった。
年金管理システムサイバー攻撃問題
職員の端末がウイルスに感染し、基礎年金番号や氏名などの情報が、ファイルごと抜き取られた。
日本年金機構は1日、職員の端末がサイバー攻撃を受け、約125万件の年金情報が外部に流出したと発表した。いずれも加入者の基礎年金番号(3面きょうのことば)と氏名が含まれ、うち約5万2千件は生年月日や住所も流出した。国内の公的機関としては過去最大規模の情報流出。被害はさらに拡大する可能性もあり、国の情報管理のあり方に対する国民の不信が高まりそうだ。警視庁は不正アクセス禁止法違反容疑を視野に捜査する。
年金事務所からの個人情報持ち出し問題
淀川年金事務所に勤務していた元職員が、年金加入者20名分の個人情報を不正に持ち出した問題。
警察の調べによると、二人は2014年10月~16年2月までの間、葛西容疑者が勤務していた大阪市淀川区の年金事務所のパソコンを使い、年金加入者20人分の氏名や住所などの個人情報が記載された書面を印刷し盗み出した疑い。
松島容疑者は2007年に退職していたが、盗み出す加入者の名前を松島容疑者が指示し、葛西容疑者が業務中に印刷し持ち帰ったとみられる。
遺族年金 過払い問題
2017年に会計検査院が、遺族年金の受給者をサンプリング調査した。失権届の提出遅れなどにより、受給資格を失っているにも関わらず受給していた人数が約1,000人いることがわかった。
厚生年金などに加入していた夫を亡くした妻らを対象に日本年金機構が支給する遺族年金について、会計検査院がサンプル調査したところ、再婚などで受給資格を失った1000人弱に支払いを続けていたことが関係者への取材で分かった。今春までの過払い額は計約18億円に上るが、うち約8億円は5年の消滅時効を迎えており、返還請求手続きを取ることができない状態にある。
データ入力を行っていた「SAY企画」の職員は上司に報告をしていたが、遅れている作業への対応を優先し、担当役員らには入力ミスの情報が共有されていなかった。日本年金機構の水島藤一郎理事長は、「SAY企画」に対し、損害賠償請求をする考えを示している。請求額に関しては算定中である。