総額約466億円のうち、マスク調達に約91億円?
一世帯あたり2枚の配布が始まった「アベノマスク」。
厚生労働省はWebサイトで全国の配布状況を公開している。
この文章を書いている時点では、大半の県が「準備中」となっている。都市圏を中心に配布を始めるとしており、全国に行きわたるのは少し時間がかかるのかもしれない。
実施すると決めた以上は、迅速な配布を求めたいところだ。
ところで、この「アベノマスク」に要する費用の問題。
当初、安倍総理がマスクの配布を表明した際には、200億円程度の費用が見込まれているとされていた。
しかし、実際の予算は約466億円であった。
その内訳をこれまで政府は公表してこなかったが、このほど、その一部が厚生労働省から公表された。
以下がマスクの調達先と金額である。
- 興和:約54億8千万円
- 伊藤忠商事:約28億5千万円
- マツオカコーポレーション:約7億6千万円
3社で約90億9千万円である。
マスクではなく配布に大きな費用を要している
全世帯への配布に先立って妊婦向けの配布が開始されていたが、その中でマスクに異物の混入があり、マスクを製造したとされる4社がどこなのか関心が集まっていた。
しかし、今回公開されたのは3社。この3社からのマスクの調達なのか、他にもう1社あるのか不明である。予算の総額は約466億円であり、配達の分の費用が別にかかることを考慮しても、3社で約91億円ということで、不明な部分が大きい。
あるいは、加藤勝信厚生労働大臣のお得意の「ごはん論法」を厚生労働省としても駆使して、3社以外のもう1社は布マスクと合わせて何か別のもの、例えばマスクを梱包するパッケージも納入しているので、上記3社とは別という扱いで金額を公表しないとしたのか。
または、布マスクの製造先は4社であるが、そこから上記の3社が購入をして、それを日本政府に納品したということなのか。
何か理由があるのかもしれないが、いずれにしても今回公表された金額を見る限り、アベノマスクの配布は、布マスクそのものの調達費用とは別のところで大きな費用を要していたことになりそうだ。ごく単純に、466億円-91億円=375億円ということで、マスク調達費用以外の375億円は配達費用ということなのだろうか。
マスクが不足しているので、政府がそれを配布するという施策は理解出来ないわけではない。ただ、結局は、不足しているマスクを政府が購入する費用よりも、それ以外の配布といった部分などに大きな費用がかかってしまったことは記憶されてしかるべきだ。政府が何をするにも、そこには大きな手間と費用を要するのである。
不正を防止するために
マスク不足の対策として国民にマスクを配布するとしても、実際に要する費用はマスク以外の部分の方が大きくなりそうだ。
同じようなことは他の対策でも起きうる。
例えば、一人当たり10万円の現金給付が決まったが、これも手続きを複雑にしたりすれば、配る現金の総額よりも、その配布のための手続に関わる費用の総額の方が大きくなりかねない。この場合の費用は、例えば、手続に関わる職員の人件費やシステム開発費である。
かような費用が大きくなると、そこに無駄が入り込む余地が生じる。さらには、不正が起きる余地も生じる。
そもそも、今回の布マスクも緊急の事態であるということで、通常よりは高い価格で政府は調達している。緊急事態ということで、ある程度はそういうことにも目をつぶろうという意見もあるとは思うが、こういう時に一儲けを企む者がいないとも限らない。そこに不正の可能性が生じる。
もちろん、現段階で、布マスクの件で厚生労働省の担当者が不正を許していると言うのは失当だ。さりとて、きちんと情報公開が行われなければ、国民の預かり知らぬところで不正が起きていても、確認のしようがない。
今回、野党議員の求めに応じて布マスクの調達に応じた3社と金額が情報公開されたが、その詳細は非公開のままである。正しい施策が実施されていることを国民が確認出来るよう、厚生労働省には十分な情報公開を求めたい。