2018年は国政選挙がない
2017年、衆議院議員総選挙が行われた。一年で解散というのは考えにくく、余程の一大事でもない限り、2018年に総選挙が行われることはない。よって、国政選挙としてこの後に予定されているのは、当面は2019年の参議院議員選挙となる。
そこで、2018年に国民的な関心を集めることになるのは、自民党の総裁選挙となるだろう。2017年3月に自民党は総裁の任期について従来の「連続2期6年」から「連続3期9年」に延長することを決定している。安倍総理は現在2期目であり、2018年9月に任期満了を迎える。任期の延長が決定されたため、来る総裁選挙に3期目を目指して挑戦する道が開かれている。
焦点は通常国会の会期延長
ところで、本サイトでも度々指摘されてきたことであるが、安倍政権下では、通常国会が延長されることは少ない。
2018年も、通常国会の会期末となる6月末頃には、国会の延長の有無について与野党間での攻防が予想される。しかし、当面の国政選挙の心配はなく、安倍総理自身の自民党総裁選挙のことも考えると、おそらく本年も通常国会は延長されないか、延長されても小幅なものに限定されることになるはずだ。
国会では国民生活にも直結する事柄が議論され、例えば野党が党内の事情で国会の日程を遅らせたりしようものなら、直ぐに国民生活を置き去りにしたとして批判が集中することになるが、はたして自民党の総裁選挙となるとどうだろうか。自民党総裁選挙の時期に関わらず、必要とあらば国会を延長して、議論を積み重ねて欲しいところである。
対立候補の動向
そんな中で、既に野田聖子総務大臣が来る総裁選挙への立候補に意欲を見せている。
野田総務大臣は前回の総裁選挙でも立候補を模索し、推薦人も確保していたとされる。しかし、野田陣営が確保していたとされる推薦人を安倍陣営が切り崩したとも言われ、結局、野田議員は立候補には至らなかった。そして、無投票で安倍総裁が再選を果たしている。
今回も安倍総裁が立候補するのであれば、対立候補への事前の切り崩し工作も激しく行われることだろう。もちろん、二回連続の無投票は問題があるとして対立候補を擁立する動きは当然あるはずで、野田総務大臣以外にも、例えば若手を中心に比較的当選回数の少ない議員の中から次代のリーダーを担ぎ出す動きが見られるかもしれない。
ただ、野田総務大臣は閣内にいることから、あまり表立った総裁選挙のための活動はしにくいだろう。それは、2009年の総裁選挙に立候補し、谷垣禎一氏の次点に終わった経験を持つ河野太郎外務大臣も同様である。実際に、前回2015年の総裁選の際に、石破茂地方創生相は、閣内にいる以上は総裁選に出ないのが信条であるとして立候補を見送っている。
そうなると、現在は閣外にいる岸田文雄政調会長や石破茂元地方創生相の動向も気になるところである(政調会長は大臣ではないため閣外であるとはいえ、総裁を支える役職である以上、総裁が再選を目指すとすると、自らも立候補するというのは微妙ではあるが)。ただし、この二人が領袖を務める宏池会と水月会は、自民党内では第四・第六派閥であり、安倍総理の所属する第一派閥である清和政策研究会や麻生太郎副総理が会長を務める第二派閥の志公会に単独で対抗するのは難しい。特に水月会は所属議員が石破会長を含めて20名であり、一致結束するだけでは推進人の確保も危うい。
現状を考えれば、安倍総裁が三選へ向けて盤石な戦いを展開することになるだろう。派閥の締め付けは緩くなっていると言われても、所属する派閥が推す候補とは異なる候補者を推して、後に閑職に追いやられるリスクを負う議員も少なく、安倍総裁三選の流れが出来れば、実際に対立候補が立つかどうかすら不透明と言えそうだ。
野党も埋没せずに国会での議論を
対立候補の動向を見ると、少々盛り上がりに欠ける総裁選挙になりそうな気配ではあるが、自民党のメディア戦略は巧みであり、総裁選に向けて、国民的な関心が集まるような仕掛けも施してくるだろう。そうなると、野党の存在は埋没していくことになる。
現在の国会の各党の勢力から、自民党の総裁に選出されることは内閣総理大臣にも選出されることと同義である。よって、誰が立候補するのか、どのような政策が掲げられるのかといったことは国民にとっても当然に重要な事柄である。ただ、この総裁選挙はあくまでも自民党という一政党のトップを決める選挙であることは忘れてはならない。
前にも指摘したように、通常国会の会期末に向けて、自民党は国会を早めに閉じて、総裁選挙モードに持ち込もうとするはずだ。そこで、あくまでも自民党という政党のトップを決める選挙であることを確認した上で、野党としては国会で少しでも丁寧に国民生活に関わる議論や議決を行えるよう各方面に働きかけていくことが求められる。
間違っても、安倍政権を早く終わらせるために安倍総理以外の候補と連携しようと画策したり、誰が良いとか悪いとか論評をしないことである。国民的関心が集まるからと言って他党の総裁選挙に関わるようなことはせず、国会の場で野党として出来る仕事を最大限していくことが結果として国民の信頼を得ることにつながるはずだ。