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あえて「盛り上げない」自民党総裁選

 

 

 

自民党総裁選の概要が明らかに

 

 8月27日に総裁選挙管理委員会が実施され、9月に行われる自民党総裁選挙の概要が固まったようだ。

 

www.jimin.jp

 

 

 報道によれば、街頭演説会は全国5カ所、公開討論会は4回予定されているそうだ。


 選挙戦が繰り広げられた2012年の際には、演説会は17回、公開討論会は5回実施されたので、いずれも今回は数が減ったことになる。


 さらに、選挙期間中に安倍首相がロシアに3日間訪問するため、その期間と前後を含めて計5日間は論戦の機会を設けないとしたとのことだ。

 

www.jiji.com

 

 

国民民主党との対比が鮮明に

 

 「盛り上がらない」と揶揄される国民民主党の代表選挙は、その評価とは裏腹に、新しい仕掛けが施されていることは先日指摘したとおりだ。

 

www.ksmgsksfngtc.com

 

 

 これに対して、自民党は「盛り上げない」総裁選挙を目指すようである。もちろん、その選挙戦の方法も従来通りのようで、国民民主党が導入した電子投票を自民党も導入するといったことはなさそうな気配である。

 

 国民民主党の代表選挙は、あくまでも野党の中のひとつの党の代表を決めるに過ぎない。対して、自民党の総裁選挙は事実上の首相を決める選挙である。自民党のトップを決める選挙だから、国民的な関心が向くように盛り上げる必要はないといったことは言い訳にはなり得ない。


 新しい挑戦を行う国民民主党と国民から見えにくい従来の方法を踏襲する自民党、その対比が鮮明になったのではないだろうか。

 

 

自民党員だけではなく、国民が見ていることを忘れてはならない

 

 繰り返すが、自民党総裁選挙は、自民党のトップを決めるだけの選挙ではない。今回、現首相の安倍氏が立候補するが、もし対立候補の石破氏が勝利すれば、安倍氏は総理の座から降り、石破氏が新たに内閣を組織することが予定されている。

 

 安倍総理は、何かと言えば、「党と内閣は別だ」といった詭弁を弄するが、まさか今回敗北するような事態になったとき、「党と内閣は別なので、総裁選挙に負けても内閣総理大臣は辞めない」などと駄々をこねることはないだろう。

 

 自民党総裁選挙は自民党の党員や議員にしか投票権がないとしても、内閣総理大臣を実質的に決める選挙となるので、全国民にその情報は提供する必要がある。少なくとも、野党である国民民主党ですら行っているような情報の公開の取り組みを、たまさか自民党はやらないといったことはあってはならないのだ。

 

 特に今回は憲法改正が争点になると安倍・石破両候補が主張している。であるならば、二人の間で交わされる憲法論議の機会が多過ぎて困るということはないはずだ。にもかかわらず、実際には「盛り上げない」選挙戦を目指しているように見える点は大変残念でならない。

 

 

2012年の自民党総裁選挙から

 

 ちなみに、前に選挙戦が繰り広げられたのは2012年の総裁選挙。このときの自民党の特設Webサイトは、関連するページの一部は閲覧できなくなっているが、現在でも生きている。

 

自由民主党

 

 

 国民民主党が現在開設している代表選挙の特設サイトと同様であり、スケジュールや動画が掲載されている。


 おそらく、今回も同様の特設サイトが開設されることになるとは思うが、そのコンテンツとなる演説会や討論会の開催数自体が少なく、さらには期間中、安倍総理の外交日程を挟む関係で「休戦」するとなると、その内容も薄いものにならざるを得ないだろう。

 

 総裁選挙や代表選挙で、その時の候補者がどのような主張をするのか、というのは重要な事項になる。実際に、安倍氏が2012年に総裁選挙で主張した政策は、その後に政権を奪取した際に、そのまま政権の中心に据えられたものも少なくない。


 安倍・石破どちらの候補が勝利するにしても、そのまま内閣総理大臣になることが予定されており、その政権の今後の政策を知る上でも、総裁選挙での言動は重要な意味を持つ。


 優勢を伝えられる安倍総理としては、総裁選挙の中で今後の政権運営に関わる事柄について言質をとられたくないという思いもあるのかもしれないが、今後の日本の行く末について多くの国民は知りたいと望んでいるはずだ。それは自民党を支持しているとか、野党を支持しているとか関係なく、国民全体の関心事である。

 

 2012年の自民党総裁選挙は、確かに盛り上がった。候補者同士の論戦も華やかであった。その結果かどうか分からないが、国会議員票は安倍氏が優勢であった一方で、地方票は石破氏が他の候補を上回った。そのトラウマでもあるのか、安倍総理は地方議員を官邸に招くなど地方票の確保に躍起のようだが、そういう国民に見えにくいところの選挙戦でなく、国民に見えるところでの選挙戦を切に望むところである。