報告書に重大な誤り
導入が予定されている陸上配備型の迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」。その候補地選定に関わり防衛省が公表した報告書では、その配備地として、秋田県秋田市の陸上自衛隊新屋演習場が東日本では唯一の候補地とされていた。この程、その報告書に重大な誤りがあったことが判明した。
防衛省はその誤りを修正したとしても、新屋演習場を候補地とする結論に変更がないとしているが、その他の候補地を不適とするその理由そのものに誤りがあったというのが今回明らかになったことであり、防衛省の判断に重大な疑義が投げかけられる事態になっている。
そもそも最初から新屋演習場が候補地として決まっていて、それ以外の候補地を不適とするために、その根拠が捏造されたのではないかとの疑いまでかけられるような状況である。
かく言うのも、明らかになった誤りは、現地を確認すれば直ぐに分かるような誤りであったからである。
その誤りとは、山の高さに関する誤りである。ごく簡単に言うと、イージス・アショアの周辺に一定程度の高さの山があると、レーダーの妨げになる。そのため、候補地の周辺の山の高さを確認して、一定の高さがある山があれば、その地を候補地としては不適としたのである。レーダーの妨げとなる山について調べた9カ所全てで実際より過大な数値を記して、候補地として不適と結論付けていたというのだから、重大な誤りという以外の何物でもないだろう。使用した地図ソフトでは、表示の縮尺の調整が必要であったところ、それを怠っていたのではないかとの憶測もあるようだが、実際に配備地になる可能性のある場所につき、現地を確認せず、コンピューター上の計算だけで済まそうとしていたとしたら、それはそれで大きな問題である。
これにより、配備地に関する判断の大前提が崩れ去ったわけだが、秋田市の新屋演習場が唯一の候補地であるという結論に変わりがないというのは、どういう理屈でそうなるのか理解に苦しむ。
アメリカのための導入、そして捏造なのか
既に、イージス・アショアの配備地の選定については疑義があることは指摘されていた。
日本の防衛のためではなく、アメリカの防衛のために最適な場所に配備されるのではないかとの疑いがかけられていたのだ。
その疑いを晴らす上でも、正確な調査と的確な根拠の提示が必要であったところ、まるでそんなことはなされず、いい加減な数値を並べて秋田市以外の候補地を不適としたのだがから、唖然とするばかりである。こうなっては、調査の前から、どこからか配備地の指示があって、それありきで調査の結果も捏造されたのではないかとさえ疑ってしまう。
実際、働き方改革関連法案の審議の際には、そうやって、政府にとって都合の良い調査結果があろうことか様々な調査の結果の切り貼りをすることで捏造されていた。
少なくとも、レーダーとの周辺の山の関係という理由付けでは、秋田市の新屋演習場以外の候補地は不適とするという結論が根拠のないものとなった。にもかかわらず、どうして、その誤った結論のまま突き進もうとするのか。ここまでくれば、アメリカの指示があったという批判に反論することは出来ないのではないだろうか。
正確な根拠に基づく政策判断を
イージス・アショアに関しては、防衛省Webサイトに各種情報が掲載されている。
その中には、今回問題となった報告書も含まれているが、その報告書を中心に、あらためて再検証が必要なのではないだろうか。
少なくとも正確な情報に基づいての政策判断がなされたとは到底思えない状況にある。そのような状況で、特に新屋演習場の周辺の住民らの理解を得ることは難しいだろう。来年に秋田県知事による受け入れ判断がなされるが、この判断も揺れることになるだろう。
日本の防衛のために本当にイージス・アショアが必要であり、その配備地を決めなければならないというのであれば、可能な限り綿密な調査を行い、誰が見ても納得する客観的な根拠を示す責務を日本政府は負っている。
間違っても不正確で捏造が疑われるような報告書を根拠に、配備地を決め、それを強行するようなことはあってはならない。
6日には、岩屋大臣が委員会で陳謝したようだが、謝ればそれで済ませられるような問題でない。
結論を白紙にし、一から正確な方法で候補地の選定に関わる調査を行うべきである。