Twitterが政治広告を禁止へ
Twitterのジャック・ドーシーCEOは政治広告を禁止すると発表した。
対して、Facebookは政治広告の受付について変更を行わないことを表明しており、二つの主要なSNSで政治広告に対する姿勢が異なる事態となっている。
来年11月のアメリカ大統領選挙へ向けて、激しい政治広告の応酬が予想される。相手候補の貶めるために、なかには虚偽や捏造による広告も打たれることになるだろう。これまでもアメリカでは、非難な中傷の広告も数多くなされており、その被害に遭っていることから、広告規制が必要であると訴える議員もいた。Twitterとしては法的な規制が課される前に、自主的に規制を行うことで影響を最小限に抑えようとしているということかもしれない。
もう一方のFacebookは、表現の自由を根拠に政治広告の禁止にまでは踏み込まないとマーク・ザッカーバーグCEOが議会で発言している。合衆国憲法修正第1条に規定される「表現の自由」を最大限の尊重しようという姿勢がそこにはあわれている。政治広告についても表現の自由の観点から尊重されるべきであって、その内容の当否は受け手側の判断に任せるというのがFacebookのサッカーバーグの立場だ。
Twitterが禁止するとしているのは有料の広告であって、例えばある候補者が支持者を動員して大量に広告と見まがう投稿をしてくるといった事態に対しては、その対応策を別途考える必要がある。
政治家や政治家が利用する企業から広告費を受け取って政治広告を自らのサービス上で展開させるということを禁じるというのは、ひとつの姿勢としてはあり得るとは思うが、実際には抜け道があり、Twitterを利用した情報発信の応酬は今後も続くことは間違いないだろう。
日本の選挙運動では
日本では、このTwitterの政治広告禁止措置について、あまり熱い議論には発展していない。それは、日本の場合、特に選挙期間中の広告には規制がかけられており、そこまで自由に広告を打つことが出来ないという事情があるからだ。
総務省のサイトに、その詳細が掲載されている。その3に、「選挙運動用有料インターネット広告の禁止等」がある。この表題が示すように、選挙運動では有料でインターネット広告を行うことは基本的に禁止されている。Twitterが会社として政治広告を受け付けるかどうかにかかわらず、日本の選挙運動では積極的に広告を行うことが出来ない。
ただし例外がある。それは、政党は一部有料での広告が認められていることだ。上に示した総務省のサイトには、「選挙運動期間中、当該政党等の選挙運動用ウェブサイト等に直接リンクした有料インターネット広告を認めることとしています」とあるとおり。
Twitterが利用できなくなったとしても、FacebookやYoutubeあたりでは、今後も政党の広告が打たれることになるはずである。
ここで気になるのはLINEの動向だろう。
ちょうどこの文章を書いているときに、大きなニュースが飛び込んできた。
日本では、特に利用者の多いLINE。ヤフーと統合することで、今後どのようなサービス展開を図っていくのか気になるところ。
LINEもそうだが、Facebookなどのメッセージ機能の利用は日本の選挙運動でも認められている。もちろん、それも無制限というわけではないが、Twitterが政治広告を禁止することと相俟って、いわば抜け道的にメッセージ機能の利用する政治家も出て来るはずだ。
そのものズバリの政治広告は打たないのではないか
今回、Twitterは直接的に政治広告を認めないという方針を打ち出してきたわけだが、おそらく、Twitterがどのような対応を取ったとしても、そのものズバリの政治広告を打つことを政党は避けるようにしていたのではないかと予想する。
考えてみて欲しい。政治広告ばかり見せられたら、誰でも辟易する。日本の場合は選挙期間が限られるため、特にその期間に広告も集中する。出来るだけ広告と思わせないようにして自党を宣伝する手法が採用されていく。そんなことが容易に想像できる。
気軽な感じでLINEのメッセージが政党から飛ばされてくる。Twitterでも、広告など打たずに、応援ツイートを同時多発的に仕込むなんてことが今後は行われるはずだ。
目に見えやすい部分では今回のTwitterの政治広告禁止の影響を受けるかもしれない。しかし、結局のところ、Twitter社に広告収入が生じないだけで、政党や政治家からお金が業者に流れて、その政党や政治家を応援する情報発信がなされることには変わりがなく、そのような動きはかえって加速していくように思う。