霞が関から見た永田町

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なぜ文書の改竄が起きるのか -役人の不正行為には理由がある-

 

 

 

 

森友学園問題に新たな展開

 

 森友学園との国有地取引に関して財務省が作成した決裁文書について、契約当時の文書の内容と昨年2月の問題発覚後に国会議員らに開示された文書の内容に違いがあったと朝日新聞が2日に報じた。

 

 森友学園による小学校設立に向けて、その設置趣意書に籠池泰典前理事長が「安倍晋三記念小学校」と記したとの証言を信じて、朝日新聞はそのように報じたところ、後に開示された文書では「安倍晋三記念小学校」ではなく「開成小学校」となっており、朝日新聞の報道にネット上を中心として疑問が投げかけられていた。そのような中でも取材を重ねて、新たな問題を掘り越してきたと言えそうだ。

 

今回の朝日新聞の報道が正しいとすると、設立趣意書の件についてもあらためて疑念が生じる。当事者である籠池氏の証言の信憑性をどのように見積もるのか判断の分かれるところだが、財務省側が文章に手を加えて自分たちの都合の良い内容に仕立てた文書を公開していたとすると、これまでに開示された文書そのものの信頼性が問われるわけで、朝日新聞の前回の報道が間違っていたと簡単には言い難くなるのだ。

 

 もちろん、今回も朝日新聞がガセネタを掴まされた可能性もある。ただ、もし本当に財務省が決裁文書を書き換えていたとすると、財務省のみならず日本の中央省庁全体の信頼に関わることであり、その責任は、関与した職員だけでなく、麻生財務大臣や安倍総理にも及ぶ一大事である。それゆえ、朝日新聞としても慎重に裏付けを取った上で記事にしたはずで、今回は事がそう簡単には済まないことが容易に想像される。実際に、麻生財務大臣は、2日午前中の予算委員会で与党の自民党議員の質問に答えるかたちで、答弁は差し控えたいとして、この件についての明言を避けている。

 

 

どこかで見た「改竄」騒動

 

 厚生労働省による裁量労働制に関する調査データについて、その扱いに誤りがあり、結果として、本国会における安倍政権の看板政策であった働き方改革関連法案の中から、裁量労働制の拡大に関する部分が切り離されるという事態に至ったばかりだ。先日、この件については、データの改竄や調査結果の捏造にあたると評した。

 

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今回は財務省で文書の改竄疑惑が生じているということになる。

 

無いと言った文書が次々と発見され、公開されたと思ったら、その文書は都合の良いように手を加えられていた可能性がある。こうなってくると、行政組織として構造的に何か問題があるのか、現政権のどこかに大きな問題があるのか、いずれかであると言わざるを得ない。

 

もちろん、府省による調査結果や文書について、何か不審なところがあれば直ぐに改竄や捏造が疑われる。多くの場合、調査や文書の取りまとめに関与することが出来る職員は限定されており、さらにその調査結果が大臣の答弁として使用されたり、情報開示請求を受けて文書が開示されたりするとなれば、相応の役職の者による確認を経ることが必須となる。つまり、責任の所在は比較的容易に明らかになってしまうのであって、多くの役人は改竄や捏造を行おうと通常はしないものなのである。発覚した際には、自身のみならず、それを認めた上司の責任まで直ぐに問われるようなことをしようとする役人はそうそういない。

 

役人は自分や自分と関係のある人物が責任を負うような何かを行うリスクを可能な限り避ける人たちであるということをまず確認しておく必要があるのである。裏を返すと、役人が改竄や捏造を疑われるようなことをするには相応の理由があるということである。

 

 

改竄を行う二つの理由

 

文書を改竄するときに、その理由としてまず考えられるのが自身の間違いを隠すためである。自身の責任を隠蔽するために、都合の悪い部分を都合の良いように変えてしまうというものだ。この場合は、事は単純で、改竄や捏造が発覚した際には、それに関わった職員を処分すれば良い。ただ、この場合、組織としての都合も考えて、単なるミスとして片づけることもある。おそらく、厚生労働省の裁量労働に関する調査の件で誰かが責任を取るとなると、この個人のミスという方向での処理がなされることになるはずで、加藤厚生労働大臣の答弁なども職員個人のミスであったかのような口ぶりであった。調査が甘かったことを認め、調査に関わった職員について軽微な処分するということになるのだろう。さらに、これまでのこの種の出来事に対しては、直ぐに処分をするようなことはせずに、定期的な人事異動などに忍び込ませるかたちで関わった職員に処分がなされていた。今回も野党の求めに応じて職員を処分するというふうには見えないように処分を行うということになるのではないだろうか。

 

もう一つの理由は、どこからかの指示があって行う場合である。この場合、不正行為に手を染めさせる以上、高位の者からの指示である必要がある。特に、官僚組織の中にあって不正行為を命じるとなれば、そこには何らかのかたちで政治家が介在していると思った方が妥当だ。しかも、政治家と言っても大臣や有力な政治家が対象となる。よって、今回の場合、麻生財務大臣や加藤厚生労働大臣、あるいは安倍首相の指示が疑われるところだが、おそらく彼らの明示的な指示はなかったはずである。もしあったとしても、それを裏付ける証拠はほぼ間違いなく残されていないだろう。

 

もうひとつ疑われるのは事務次官や局長など、府省内の高官による指示である。彼らが総理や大臣などの意向も忖度した上で、あるいは府省の何らかの意向もあって政権の動きとは必ずしも関係ないところで、文書に手を加えるといったことを命じた可能性もある。この場合も指示の明示的な証拠は残されていないだろう。

 

ただ、いずれの理由による改竄であっても、改竄前の文書などは保存されている可能性があり、これが何らかのかたちで明るみに出れば、関与した者の責任や動機を明らかにすることにつながる可能性がある。

 

 

文書管理の信頼性の根幹を揺るがす

 

昨年の加計学園に関する文部科学省の文書の件でも見られたように、各省庁の中には不正と思しき行為を快く思っていない勢力が存在し、その勢力が内部のネットワークを利用して、文書をリークするといったことが行われる。今回もそのようなことが裏では行われていたことが予想され、今回、朝日新聞はそのいずれからか内部の資料を入手して、裏付けも取って報道したはずである。

 

ただ、文書に手が加えられていたとしても、それがどれほど重大な変更なのか否かは判然とせず、財務省としては軽微な修文であって問題ないという姿勢を取る可能性もある。それでも、これは行政における文書管理の信頼性の根幹を揺るがすような事態であり、この件の対応に誤ると、今後の国会審議では、政府が提出してくると全ての文書やデータについて、その信憑性が厳しく問われる事態に発展しかねない。

 

もちろん、朝日新聞の報道が正しかったとしても、それを認めることは現政権にとっては致命傷につながるため、認めることは絶対に出来ないだろうが、これだけ改竄や捏造が疑われる事態が続けば、安倍総理の関与云々ではなく、政治そのものへの信頼が大きく毀損されてしまうことを肝に銘じなければならない。安倍総理にあっては、行政府の長として、各府省に適切な文書管理の徹底を指示し、問題があった職員に対しては厳正な処分を直ちに下すべきである。もしそれがなされないのであれば、今回の改竄や捏造は安倍総理が指示したものであるという誹りを受けなければならなくなる。

 

 

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