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公表された反省の色なき2018年度版厚生労働白書

 

 

 

2018年度版厚生労働白書が公表される


 ずっと公開されないままの状態が続いた2018年度版の厚生労働白書。
 9日に閣議で報告され、その全文がようやく厚生労働省のWebサイトでも公表されている。


 その経緯については以下に詳述しているが、公開する段になっても、参議院議員選挙の際


中を選んでくるなど、政権が悪いのか、厚生労働省が悪いのか分からない事態となっている。

 

www.ksmgsksfngtc.com

 

 既に十分過ぎるほど、その公開は遅れているのだから、何もわざわざ国政選挙の際中に公表することもなかろうにとは思うが、おそらく、公表出来るとなってから、少しでも話題になりにくい日を選んだら、この日だったということなのだろう。
 ダメージコントロールと言えば聞こえが良いが、隠蔽体質の表れと言ってしまえば、その通りである。こそこそ発表して、少しでも国民の関心が向かわないようにという魂胆が透けて見える。

 

 

障害者雇用の水増し問題については謝罪せず


 さて、公表された2018年度版の厚生労働白書だが、その中では、障害者雇用の水増し問題や統計不正問題に対して謝罪する文章が挟み込まれていた。この点を取り上げて、マスコミも報じるわけだが、実物を読んでみると、少し印象は異なる。

www.jiji.com


 
 厚生労働白書は以下で閲覧可能なので、是非ダウンロードしてみて欲しい。

www.mhlw.go.jp

 

 謝罪が主に記されているのは、「はじめに」と第2部第11章「行政体制の整備・情報政策の推進」の部分。


 「はじめに」で、障害者雇用の水増しの件に言及している。ここでは、実に巧みな言い回しがなされ、「水増し」という表現は用いられていない。「障害者である職員の不適切な計上」がそれだ。そして、「障害者である職員の不適切な計上があったことを深く反省し」という一文がある程度で、国民の信頼は損なったという表現は見られるものの、一見したところ厚生労働省には責任がないかのような、どこか他人事の記述となっている。


 この障害者雇用の件の締めは以下の一文だ。


 「各府省とともに、障害者雇用の理念に立ち返り、今般明らかとなったような事態を二度と引き起こさず、公務部門における障害者雇用の取組みが、名実ともに民間の事業主に率先するものとすることができるよう、強い決意をもって取り組んでいく考えである。」

 

「はじめに」

 

 「各府省とともに」と、責任の主体の誤魔化しを図るところ、本当に反省しているのか疑問が残ろう。

 

 

統計問題もどこか他人事


 統計問題については、少々長くなるが、「はじめに」の中では、以下のように記されている。


 「第2部では、年次行政報告書として現下の政策課題への対応状況について記載してい る。なお、第2部第11章「行政体制の整備・情報政策の推進」において、毎月勤労統計について、本来とるべき統計調査の変更の手続きを行わず全数調査すべきところ一部抽出調査を行い、かつ抽出調査を行う際にとるべき統計的処理を行わなかった等の、厚生労働省が所管する統計調査における不適切な取扱いが長年にわたり続けられてきた事案について記載している。政策立案や学術研究、経営判断の礎として、常に正確性が求められる政府統計に対する信頼が損なわれ、国民の皆様に御迷惑をおかけし、さらに、雇用保険や労災保険等の受給者の方に追加給付が必要な事態を招いたこと等について、深くお詫び申し上げる。」

 

「はじめに」

 

 こちらは、最後にお詫びで締めており、反省の様子がうかがえる。ただし、ここでも不適切な取り扱いの原因は書かれていない。

 

 では、第2部第11章の方で、その不適切な取り扱いの原因が書かれているかというと、そうではない。


 こちらの第11章では、統計に関する問題につき、その誤りについて事実が記されているのみで、それ以上の踏み込んだ表現は何ら見られない。

 

第11章 行政体制の整備・情報政策の推進

 

 簡単に言えば、「数字を間違えていました」ということしか言っていないのである。

 

 「厚生労働省としては、これらの事案を真摯に反省するとともに、これら事案に係る報告 書の指摘を重く受け止め、政府統計の社会の基盤としての重要性を十分に認識し信頼回復 と再発防止に全力を挙げて取り組んでいくこととしている。」
※厚生労働白書第2部第11章より引用

 

 このように決意表明されているが、その言葉は空疎である。
 何より、毎年、年度内に公表されてきた厚生労働白書が年度に発表されないという異常事態になったことについての説明が不十分であるからだ。

 

 「今回の厚生労働白書は、国の行政機関等における障害者雇用に関する今般の事案の重要性に鑑み、事案への対応の経過や、その対応策を盛り込んだ障害者雇用促進法の改正法案の内容等の記載を行うため例年より公表を遅らせたところである」 
 ※厚生労働白書「はじめに」より引用

 

 ここに漂う「私たちは何も悪くありません」感。実際、何か悪いことをしたなどとは思っていないのだろう。

 

 遅れて公表された厚生労働白書。その数値などは修正されたようだが、厚生労働省の呆れた体質には変化が見られないことがその公表を通じて確認されたと言えよう。