霞が関から見た永田町

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統計不正の疑念は昨年から存在していた

 

 

 

昨年は労働時間の偽装

 

 昨年の今頃、国会では働き方改革関連法案をめぐって激しい議論が行われていた。特に、厚生労働省が示した労働時間に関する調査の結果が恣意的に操作されていたものであったことから、野党から激しい追及を受けていた。
 当時、本サイトでも、厚生労働省や安倍総理の姿勢の問題点を指摘していた。

 

www.ksmgsksfngtc.com

 

 野党が現在厳しく追及している統計不正の問題も、思い返せば昨年と同様の問題点を浮かび上がらせているように思う。

 

 

昨年の大塚耕平議員の追及から

 

 昨年、大塚耕平参議院議員は、日本の労働生産性をめぐって、安倍総理や加藤厚生労働大臣(当時)らと議論を交わしている。

 

www.ksmgsksfngtc.com

 

 その中で、大塚議員は議論の土台となる正確なデータの共有の必要性を強く主張していた。
 そんな折に今年になって浮上したのが統計不正の問題である。

 

 正確なデータ共有の必要性を大塚議員は説いていたわけだが、結局のところ、厚生労働省側は正確なデータなんて持ち合わせていなかったことになる。労働時間をめぐる調査結果を誤魔化した厚生労働省。そんなところに正確なデータの提供を求める方が酷だったのかもしれない。

 

 

日本銀行も政府を疑っていた

 

 大塚耕平議員の古巣である日本銀行も、日本政府によるGDPの算出について疑念を呈し、算出の根拠となるデータの提供を内閣府に求めていた。

 

www.ksmgsksfngtc.com

 

 日本銀行が要求したのが昨年の11月。今に至っても、日本銀行が求めていたデータは提供されていないようだ。
 GDPの「偽装」の疑いについては、予算委員会でも立憲民主党会派の小川淳也議員らが質問を行う事態に発展しており、この問題も解決するどころか政府による不正の疑念が強まっている。
 ただ、2%物価目標の達成のメドが一向に立たない日本銀行も立場は弱い。13日の予算委員会では、国民民主党の階猛議員が日本銀行の黒田総裁に「少なくとも経営者クビです。黒田総裁あなたは一般常識からすればとっくにクビ、そういう自覚はありますか」と迫っている。階議員の鋭い質問に対して、黒田総裁は何度も繰り返した「今後も鋭意努力する」という趣旨の答弁しか出来なかった。

 

www.dpfp.or.jp

 

 この状況下で、日本銀行が更に政府にデータ提供を迫るというのも考えにくそうだ。

 

 

誠意をもって対応しない安倍政権の体質

 

 昨年から問題になっていた労働時間をめぐる調査結果の偽装やGDPの算出に関する疑念。結局のところ、それらに安倍政権は誠意をもって対応してこなかった。
 野党や日本銀行の「言いがかり」。そんな程度に考えていたのではないだろうか。

 

 そうして噴出したのが統計不正の問題である。

 

 連日の予算委員会での野党からの追及にも、「問題など存在しない」と言わんばかりの対応を安倍総理以下の関連する大臣は取っている。
 2月12日の予算委員会の質疑では、菅官房長官は「統計には関心がなかった」とまで言っている。統計法改正時に所管する総務大臣を務めた経験を持つ菅官房長官をして、その程度の認識しか示さない。およそ統計不正の問題に向き合おうという姿勢は安倍政権にはないということなのだろう。

 

 これまでも繰り返されたように、問題が明らかとなった時には「真摯に対応する」と答え、実際には対応しない。そして、時間が経過して、国民がその問題に関心を失うのを待つ。統計不正の問題についても、野党の追及をある程度は受けながら、あとは時間の経過を待ち、有耶無耶にするというのが安倍政権の基本姿勢となりそうだ。

 

 野党も繰り返し同じ問題について取り上げると、「何度も同じ問題をとりあげている。他に重要な問題があるはずだ」という批判を受けることにもなるため、どうしても及び腰になってしまうのかもしれない。
 ただ、これまでの問題と統計不正の問題は少し様相を異にする。というのも、統計はあらゆる政策の基本に関わるからだ。今回の問題自体は毎月勤労統計をめぐるものであるが、その他の統計についても本当に正しく調査されたものなのかどうか。あらゆる政策について、その根拠の正当性を問うていく。そういう追及の仕方を野党には求めたいところである。
 毎度のように行われる時間経過による逃げ切りを許してはならない。