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佐川氏の証人喚問を見る際のポイント

 

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佐川前国税庁長官が国会に証人喚問される運びとなりそうだ。

 

 証人喚問となれば、佐川氏が理財局長在任中に行われた決裁文書の書き換えについて主に追及されることになるが、ここでは、証人喚問を見る際のポイントを確認しておきたい。

 

回答しない事項は何か

 

 証人喚問では、嘘の答弁は偽証罪に問われることになる。例えば、佐川氏が理財局長に国会で行ったような答弁を行うと、偽証罪に問われる可能性が生じる。

 

 そこで、答えにくい質問がなされた場合、無理に答えることはせずに、「その点は、捜査中のようなので、お答えできない」といった回答で凌ぐことがこれまでも行われてきた。今回も、佐川氏は都合の悪い質問には答えないことが予想される。

 

 裏をかえすと、明確に回答しない事項については、そこに佐川氏にとって不都合な何かが隠されているということになる。この回答しない事項は何かということを見定めるのが第一のポイントである

 

 

与党議員による質問への回答

 

 証人喚問では、与党の議員も質問に立つ。その与党議員の質問が生ぬるいものであれば、今度は自民党や公明党にも批判の矛先が向かうことになる。かと言って、野党のように鋭い質問を重ねると、佐川氏が答えに窮することにもなりかねない。

 

おそらく、事前に念入りな調整を行って、佐川氏およびに財務省として認められる責任の限界を確認するような質問を与党議員は行うはずである。「悪いと認められることを悪いと認めさせた」と思ってもらえるような質問を目指すのである。

 

 つまり、与党議員の質問は財務省およびに安倍政権が設定している防衛線をなぞるものになることが予想されるのである。どこまで安倍政権として責任を認めようとしているのか、与党議員の質問を通してその見極めを行うというのが第二のポイントである。

 

 

時系列に沿った説明の有無

 

 麻生財務大臣は佐川氏が局長を務める理財局が中心となって文書を書き換えたと話している。そして、書き換えについては、佐川氏が行った国会答弁に合わせるために行ったものであるとしている。

 

 この説明は明らかに不自然である。というのも、佐川氏が何の準備もせずに国会で答弁を行うことはないからである。森友学園の問題に限らず、答弁を準備していないことを質問された場合、大臣や官僚は「通告にないので答えられない」「調査中であり、答弁は差し控えたい」として、答弁を行わない。

 

 あれだけ明確に佐川氏が答弁したということは、答弁にあたって事前にきちんと準備をしていたということであり、「文書がない」「記録はない」と答えるのであれば、答弁を実際にする前に、文書の改竄や記録の廃棄を済ませていると考えるのが自然だ。

 

 よって、文書の書き換えは国会答弁の前から行われていたはずである。この点につき、時系列に沿った確認がなされるのか否かが第三のポイントになる。

 

 

佐川氏が書き換えを知ったのはいつか

 

 前のポイントとも関係して、佐川氏は文書の書き換えをいつ知ったのかが第四のポイントとなる。もちろん、佐川氏が書き換えを指示したのであれば、もうその時点で書き換えを知っていたことになるが、そうである場合には、書き換えの完了をいつ知ったのか、あるいは確認したのかも焦点となる。

 

この点は佐川氏自身の責任に大きくかかわるところであり、①のポイントとも関係して、明確に答弁しないことも考えられる。「書き換えを明確に指示した記憶はない。書き換えが行われたようではあったが、それがいつどのように行われていたのかも承知していない」といった答弁が予想される。この場合、いわゆる監督責任は認めるであろうが、それ以上の公文書偽造などについて自身の責任を認めないことになるだろう。

言い換えると、佐川氏自身が自らの責任をどこまで認めるのかが第四のポイントである。

 

 

迫田元理財局長の責任について

 

 佐川理財局長の下で文書の書き換えが行われたこととされているが、ここで見落としてならないことは、書き換えが行われることになった文書は佐川氏の前の理財局長である迫田氏のもとで作成されていたものであるということである。森友学園問題ということであれば、佐川氏よりも迫田氏の方が実情を把握していたはずであり、森友学園の件の経緯について迫田氏から佐川氏にどの程度の引継ぎが行われていたのか確認したいところである。

 

 証人喚問は文書改竄について佐川氏の責任が追及される場になるだろうが、そもそも森友学園の問題全体で考えれば、佐川氏は必ずしも中心人物とは言えない。問題が浮上し、国会で取り上げられるようになった際に理財局長であったのが佐川氏であり、いわば事後の処理を行わされていたに過ぎないのである。森友学園への国有地売却に関して問題があったのであれば、その責任は事後に国会で答弁に立った佐川氏ではなく、実際に関わった可能性のある迫田理財局長や当時関わった職員にあると言える。改竄しなければならない文書が作成されるようになった出来事に関して、当事者の責任の所在を明確にする必要があるのだ。

 

 文書の引継ぎの経緯を確認することを通じて、佐川氏の前任の理財局長である迫田氏の責任を明らかにすることが出来るのかどうかが第五のポイントとなる。

 

 民間人であるとは言え、佐川氏は国税庁長官にまで上り詰めた官僚中の官僚の一人であり、簡単に証人喚問でボロを出すことはないだろう。巧みに質問を交わし、誰かの責任を明らかにしてしまうような言質を取られないよう細心の注意を払うはずである。そのような中で、一瞬見せるかもしれない綻びや動揺を見落とさないように努めたいところだ。