霞が関から見た永田町

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首長の都市経営力が都市の浮沈を左右する時代へ

 

 

 

茨城県が決済事務処理を電子化し、その決済率はほぼ100%に達した、という(9/24付朝日新聞)。茨城県の知事は大井川和彦氏。通産省を経て、マイクロソフト執行常務、シスコシステムズ専務執行役員、ドワンゴ取締役と30代後半からは一貫してIT畑の経営者を歩んできた人物だ。2017年の茨城県知事選挙で初当選を果たしている。大井川知事のリーダーシップの下、県庁で発生する年間26万〜27万件の決済事務がすべて電子化されるという。

 

 

意思あるリーダーの早い決断が行政を変える


こうしたニュースを聞くにつけ、つくづく感じるのは首長のリーダーシップの重要性だ。

 

そういえば、つくば市も五十嵐立青氏が市長に就任してから、矢継ぎ早に行政改革を進めている。五十嵐市長の下、NTTデータなどとRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の共同研究を開始した。これより、新規事業者登録や電子申告などの5業務で年間330時間、異動届受理通知業務で年間71時間の業務時間の削減がすでに見込まれている。

 

五十嵐市長も若いが、その彼を参謀として支える副市長はもっと若く、27歳だ。毛塚幹人氏。東京大学法学部を卒業後、財務省へ入省し、五十嵐市長にヘッドハントされ、財務省を辞めて、つくば市の門を叩いた。ある意味、退路を立ってのキャリアといってもいいだろう。

 

 

ITの開発手法を行政に取り入れるつくば市


そんな若い二人が掲げるビジョンが「行政もアジャイル開発を」、である。アジャイル開発とは、ITにおけるソフトウエア開発の用語で、短い期間で実装・改善を繰り返す手法のことで、実装には100%を求めない。とにかく動くものを作って、動かしてみて、不具合や改善点を見つけて、修正を加えながら、完成形を目指すというやり方だ。

 

もちろん、若ければ何でもいいというわけではない。大事なのは、柔軟性だろう。大井川県知事は50代だが、民間企業で経営者を務めてきた経験があるからこそ、行政判断も素早く、かつ柔軟性を持っている。

 

 

誰がやっても同じ、という時代は終わった


これまでは自治体のトップといえば、正直、誰がやっても同じだった。市民税と固定資産税、地方消費税、そして国からの地方交付税を財源としつつ、自治体によっては様々な補助金を組み合わせて財源をまかなっていた。

 

しかし、これからは違う。国の財政がそもそも逼迫している上に、従来のように地方自治体がすべての行政事務をフルセットで抱えることはもう不可能な状況に陥りつつある。

 

これから10年、20年の間に起きるのは、地方自治体の淘汰だろう。かつての日本産業よろしく、垂直統合型の、フルセット至上主義を諦められない自治体はおどろくほど早いスピードで衰えていく時代がやってくる。

 

 

自治体も垂直統合から水平分業へ


一方、フルセット至上主義を諦め、中に残す行政事務と、外へアウトソースする行政事務を見極める自治体は、都市の活力を維持していくことになるだろう。両者を分けるのは、ひとえにトップである市長、県知事の意思決定による。

 

もっとはっきりいえば、彼らの時代を見る目にかかっている。つくば市の五十嵐市長も、茨城県の大井川県知事も、そういう視点で都市経営に当たっているはずだ。そう、まさにトップの都市経営力が自治体の浮沈を握る時代に突入しつつあるのだ。

 

 

政党県連の役割が今後増すだろう


今日現在を見ても品川区で区長選挙が行われているし、全国各地で市長選、県知事選が行われる。今までのように、地方議会の中からなんとなく順送りで誰かを担ぐ、地方行政の中からなんとなく順送りで誰かを担ぐ、あるいは国会議員の中から誰かを担ぐ、というぼんやりしたやり方をしていたら、その都市は凋落していくことになるだろう。

 

その自治体が都市としてどういう課題を抱えていて、それをどういう財源的な裏付けをもって解消していくのか、その中で市民が望んでもできないこと、やるべきではないことも取捨していかなければならない。そういう意味で、政党および県連の果たす役割は大きい。特に野党がもう一度、政権奪取を本気で狙うのであれば、地方都市の首長を一つひとつ、選挙で取っていくこと。それが極めて重要だろう。