霞が関から見た永田町

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統計の不正は府省の仕事のあり方の問題である

 

 

 

毎月勤労統計の誤りはプログラムの間違い?

 

 厚生労働省による毎月勤労統計に関する不正問題。特別監察委員会による報告書が公表され、組織をあげた不正の隠蔽は否定された。
 この報告書を受けて、厚生労働事務次官以下22名に処分が下されることとなった。

 

 ともすると、この特別監察委員会による報告書は、統計の処理に関するプログラムに問題があり、それを発見して修正出来る技術者が不足していたことに問題を帰着するかのような書きぶりになっている。

 

報告書:

https://www.mhlw.go.jp/content/10108000/000472506.pdf

 

 

 実際に、池田信夫氏など、「勤労統計問題の原因は「COBOLプログラムのバグ」」と題するエントリまで公表している。

 

agora-web.jp

 

 あたかも厚生労働省の職員は重大な間違いを犯していないかのような、そんな方向付けが行われようとしているようだ。

 

 

他の誤りを見せることで、最初の誤りを見えにくくする

 

 この「厚生労働省の職員は悪くない」という間違った見解。早速、それを増強するように、他の基幹統計も再調査したところ、他にも誤りがあったとする結果が公表された。

 

www.asahi.com

 

 問題があったのは厚生労働省による統計調査だけではない、他の府省の統計調査でも間違があった。そういうことらしい。
 もちろん、きちんと確認した結果、厚生労働省以外でも間違いが見つかったということなのだろうが、こうして同じような間違いなるものが一気に出てくると、最初の厚生労働省の問題は見えにくくなっていく。

 

 このままでは、問題は有耶無耶にされて終わってしまう。

 

 

問題は府省の仕事のあり方である

 

 この統計不正は、府省の仕事のあり方に問題があることを明確に示している。
 統計法という法律が歴然と存在しながら、それに反するかたちで仕事がなされ、あるいは間違いに気付いた職員がいたにもかかわらず、それを修正する者もおらずに、漫然と間違ったやり方が踏襲され続けた。このような仕事のあり方に問題がないはずがない。

 

 毎月勤労統計には問題がありそうだということは政治家からも指摘されてきたことであって、例えば、麻生太郎財務大臣はサンプルの入れ替え時に変動があることが指摘されているので改善をすべきとの発言をかつて行っている。
 安倍政権に批判的な田中龍作氏などは、この麻生大臣の発言をとらえて、不正を行うよう指示したのだとしている。

 

tanakaryusaku.jp

 

 さすがに、それは穿った見方だろう。むしろ、問題はより深刻であって、財務大臣が指示をしたところで、その段階では一向に問題が改められることがなかったということである。

 

 法律に基づかない。大臣の指示であっても、それには従わない。
 もはや、これを官僚の暴走と言わずに、何と言えば良いのだろうか。

 

 

国の根幹を揺るがす

 

 先日、勤労統計の不正が国家の根幹を揺るがすと、このブログでも指摘されたところだ。

 

www.ksmgsksfngtc.com

 

 

 他の基幹統計にも不正が明らかとなり、文字通り国家の根幹が揺らぐ事態になっている。

 

 「厚生労働省だけではなく、他の府省でも、ちょっとしたミスをしてしまっていました。なので、今後は改めます」程度にしか各府省も思っていないのではないかと疑ってしまうが、事は相当深刻である。

 

 毎月勤労統計に誤りがあったことで、延べ2千万人以上に影響が及ぶとされ、新年度の予算の修正まで行われることとなった。
 その他の基幹統計も、日本政府による様々な政策判断に用いられており、今後、逐次その修正が求められていくことになる。場合によっては、大きな追加の出費が必要となる分野もあるだろう。

 

 法律や政治家を無視した官僚たちの勝手な仕事ぶりが、結果として国家財政にも大きな負担を強いる可能性があるのである。

 

 今月末に始まる新年度の通常国会。
 昨年明らかとなった財務省の文書改竄問題から、今回の件は連続しており、特に野党には、この統計不正の件につき、政権批判に過度に陥ることなく、官僚たちの不適切な振る舞いを追求するという観点から問題の核心に迫って欲しいところだ。