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スポーツ産業育成を目指して誕生する新指標「スポーツGDP」

 

 

 

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ラグビーW杯、東京五輪の開催を呼び水に

 

イギリスで開催されたラグビーW杯、世界屈指の強豪南アフリカ共和国を下し、世界に衝撃を与えたのが2015年。奇跡と呼ばれたその勝利から4年を経て、舞台は日本にやってきた。屈強な男たちの激しいぶつかり合いに、ラグビーファンのみならず多くの人々が釘付けになっている。国内におけるその盛り上がりは未知数だが、日本代表チームの快進撃を期待したい。来年には東京五輪が控えており、スポーツビジネス分野は今大いに盛り上がりを見せているところだ。

 

過去にも、国際大会での目覚しい結果が競技への注目度を向上させることにもなるので、各競技団体もいつも以上に力が入っている時期だろう。

 

そんな中、政府はこれまでに用いてきた「スポーツGVA(粗付加価値)」から「スポーツGDP」へ推計指標を変更する。スポーツGDPは、国内総生産(GDP)統計からスポーツに関わる製品やサービスを抜き出したもので、国内産業規模を把握し、市場の育成策構築につなげたいのだという。

 

 

スポーツを今の3倍の成長産業へ

 

スポーツは、「日本再興戦略2016」において、名目GDP600兆円の達成に向けた「官民戦略プロジェクト10」の一つとして成長産業化として位置づけられ、市場規模を2012年の5.5兆円から2025年には3倍となる15兆円へと成長させることを目標としている。

 

日本はスポーツの競技人口が多いとされるものの、スポーツ関連サービスがなかなか広まらないのが課題とされており、産業としての規模を正確にとらえ、市場の育成策につなげたいとの狙いがある。

 

本政策投資銀行などが発表したデータによると、2014から2016年のスポーツ産業の経済規模は、約7.2兆円から約7.6兆円と推移しており、GDPに占める割合としては、およそ1.4%と横ばいだ。2012年の数字になるがEUが公表する加盟28カ国との比較では、日本はスポーツ産業の経済規模はGDP比で上位20位以内に入るほどとされる。トップはオーストラリアでGDP比で4%を超え、主要国ではドイツが1000億ユーロ(GDP比3.90%、約10兆円)を超える。

 

スポーツといえば、プロ野球やJリーグなどのプロスポーツのほかに、高校や大学などの学生スポーツが盛んな競技が普及しており、そのほかにも、陸上や水泳など無数のスポーツが暮らしに根付いている。また、生涯スポーツとして、高齢者や障害者が楽しむ分野も最近の注目ポイントとしてはあるだろう。

 

こうした数々のスポーツ関係者は、日々切磋琢磨を繰り替えして、競技人口の増加や関係する人口の拡大に努めている。現状でそうした人々によるアクションの結果、生み出される産業規模が7兆円あまり。これを倍にまで引き上げていこうというわけだ。

 

 

アメリカでは大学スポーツがNPB並みの集客

 

アメリカとの比較でいえば、アメリカ大リーグが年間で7300万人を集客するのに対し、日本のプロ野球(NPB)の来場者数は年間約2500万人。日米の比較の際には、アメリカの3分の1程度が一つの基準になるそうなのだが、バスケットボールで2100万人、ホッケーで約2100万人、アメフトで約1700万人など、アメリカのスポーツ産業に追いつくのはもちろん容易ではない。

 

さらにアメリカの場合、大学スポーツの観客動員も特徴だ。大学アメリカンフットボールは年間で約5000万人、大学バスケットボールが約3200万人の観客を集める。NPB並みまたはそれ以上の集客力があるのは実に興味深い。日本の大学スポーツには、そこまでの観客動員力はないが、日本でも日本版NCAAを発足させようという動きもあり、こうした取り組みは、スポーツ産業拡大の推進力になるかもしれない。

 

何れにしても人口1億人超の日本で、競技人口としてではない立場で、多くのスポーツと接する機会を増やしていくには一人が様々なスポーツに関連するような仕掛けが必要になる。

 

 

やがては「eスポーツ」も重要になってくる

 

このように、観戦の分野で産業を拡大させていく可能性のほかに、自らが実践する立場としてのスポーツも裾野の拡大には欠かせない。例えば、ランニングなど年齢を問わず、生涯に渡って楽しめるスポーツは健康寿命の長寿化という側面でも参加者は増えているし、関連産業も育っていくなど様々な効果が見込める。また、かつてのゲートボールのように、高齢者が主なターゲットとなるようなスポーツなどもまた、スポーツ文化の広がりと同時にスポーツ産業の拡大にとっては重要になってくるだろう。

 

いずれ「eスポーツ分野」も重要な割合を占めていくに違いない。スポーツ産業を成長産業化していく上では、従来の枠にとらわれたスポーツ振興策だけでは不十分だ。IT分野へ産業領域を広げていくことは、市場規模の拡大に欠かせない。すでにプロプレイヤーも誕生している市場だけに、今後、注目すべき分野と言えるだろう。

 

そんな中、ラグビー日本代表が世界トップクラスのアイルランドに劇的な逆転勝利を飾ったとのニュースが飛び込んできた。今回のラグビーW杯と来年の東京五輪をぜひともスポーツ文化隆盛のきっかけとして、スポーツ大国への階段を駆け上がっていってほしいものである。