霞が関から見た永田町

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かくも恐ろしい人口減、年金・医療の問題に正面から取りかかれない政治家は要らない

 

 

 

内閣官房・内閣府・財務省・厚生労働省が発表した「2040年を見据えた社会保障の将来見通し」。この中に社会保障給付費の見通しに関する一枚の資料がある。2018年度のGDPは564.3兆円。その内訳は、年金が56.7兆円(10.1%)、医療が39.2兆円(7%)、介護が10.7兆円(1.9%)、子ども・子育てが7.9兆円(1.4%)、その他6.7兆円(1.2%)となっている。

 

これが2025年、2040年にどうなっているのか、少し見てみよう。まず2025年だと、GDPが645.6兆円。年金が9.3%の59.9兆円、医療が7.4%の47.8兆円、介護が2.4%の15.3兆円、子ども・子育てが1.5%の10兆円、その他が1.2%の7.7兆円だ。国としては医療も介護も伸びを抑えたいという意図を感じるが、それでもグロスで見れば、13兆円の増を見込んでいる。

 

 

高齢化の重しがずしりとのし掛かる未来


2040年になると、さらに数字の変化は顕著だ。GDPは約790.6兆円。年金は9.3%の73.2兆円、医療は8.7%の68.5兆円、介護は3.3%の25.8兆円、子ども・子育てが1.7%の13.1兆円、その他が1.2%の9.4兆円。

 

国の試算は、2040年にはGDPが790兆円に拡大していることが前提となっている。言い方を変えれば、このGDPを達成しなければ、年金も医療も介護も社会システムは成立しないということになる。国が出した試算であるから、それなりに固めに見積もった数字である。

 

高校の公民で、あるいは大学の一般教養で習うことだが、GDPは非常にシンプルな数式で算出される。それは人口と一人あたりのGDPだ。一人あたりのGDPは生産性のことである。日本の人口は2015年時点で1億2700万人。2025年には1億2250万人、2040年には1億1000万人となる。

 

 

人口予測は外れない


予測と書くと、何も知らない人は当たるも八卦当たらぬも八卦と思うかもしれないが、人口予測は外れない。少なくとも、向こう数十年の数字が大きく変動することはない。そうなると、GDPの算出の片側は減っていくわけだから、現状のGDPを維持するだけでも、生産性を向上させないといけないことは、掛け算さえ分かれば誰でも理解できるはずだ。ましてや、今後の高齢化に伴う、年金や医療、介護の、グロスとしての伸びを考えれば、生産性は1.6倍にならないといけないことになる。

 

永田町にいる政治家がこのリアルをどこまで語れるか。もっといえば、踏み込んだ、未来の議論を展開できるかが今、問われている。

 

 

社会保障のグレートリセットを語るのは誰か


方法は以下に述べる2つだ。1つは社会保障のグレートリセット。もう1つは徹底した生産性の向上だ。あるいは、この2つの組み合わせによって社会システムを安定させるというのも、もちろん、解だろう。

 

社会保障のグレートリセットというと、年金の給付を少なくする、あるいは給付開始の対象年齢の引き上げなどがすぐにアイデアとして浮かぶが、これだと年金の給付率が下がって、実は抜本的な解決にはならないとされている。そういう意味で重要になるのは、積立方式と世代内保険方式の組み合わせがベスト・ソリューションと思われる。

 

 

旧みんなの党の活用が実はポイント


実はこの辺の、最も具体的かつ効果的な政策を提案していたのが、今はなき、みんなの党だった。この提案を作り上げた者たちは今、落選中で捲土重来を期している者、在野で活躍の場を得た者、様々で、残念ながら現在、国会議員としての残っている旧みんなの党の政治家で、このテーマを扱っていた者はいない。

 

生産性の向上については、高プロで的外れな議論を展開していた、立憲民主党のような野党には対応できない問題だろう。この辺は自民党および改革派保守政党としての国民民主党に期待したいところだ。社会保障のグレートリセットについては、在野に詳しい人材がある。国民民主党などがこうした人材を再発掘して、永田町に送り込んでほしいものだ。