立憲民主党の福田昭夫衆議院議員、国民民主党の岸本周平衆議院議員などが名を連ねる勉強会「日本の未来を立て直す公平な税制を考える会」。ここに集う野党会派71人の有志が、今回の新型コロナウイルス感染症による経済対策として、「消費税率の5%の減税」を求める提言を発表した。
いち早く消費減税に言及していた玉木代表
もともと、新型コロナウイルスによる経済の冷え込みを見据えて、消費税5%をいち早く打ち出していたのは、国民民主党の玉木代表だ。3月上旬の段階で、「消費税5%」「10万円給付」「返済猶予」の3点セットを打ち出していた。
もう少し詳しく説明しよう。3月10日の参院財政金融委員会で麻生財務大臣が「これまでの緩やかな回復という政府の景気判断は大きく変わるものではない」と答弁したのに対して、玉木氏は「認識が完全に間違っている」とした。
その根拠としては、2019年10月〜12月の国内総生産(GDP)が年率換算で7.1%の減だった点を挙げている。新型コロナがなかった時点で、これだけの経済の落ち込みで、まさに日本経済が下降局面に入っている証である。そこに新型コロナウイルス感染症の影響が出てくる。
GDPの構成要素のうち刺激できるのは消費だけ
玉木代表はここでリーマンショックの数字を論拠に使っている。2008年は年率換算マイナス3.4%、その翌年はマイナス2.2%だった。この平均を取って、約3%のマイナス成長と仮定すると、GDPは15兆円だ。
これが国民民主党・玉木代表の政策論の根拠になっている。最低でも15兆円の緊急経済対策が必要で、GDPの4つの構成要素、「消費」「投資」「政府支出」「純輸出」のうち、新型コロナで世界経済が大打撃を受けている現状にあって、輸出というファクターは消える。
加えて、政府支出についても、今の膨れ上がる政府債務を考えると難しい。もちろん、国内経済も大きく冷え込んでいるため、投資も見込めないのは論をまたない。当然の帰結として、消費を刺激する以外になく、そのために減税というのが玉木氏の考えだ。非常にロジカルである。
政局を意識して動けない立憲民主党
一方で、先の勉強会の提言と足並みが大きく乱れるのが立憲民主党だ。同党枝野代表を中心に執行部は消費税減税に慎重な姿勢を崩していない。理由が「安倍政権にフリーハンドを与えることになる」と懸念しているからだ。これは端的に言えば、政局で物事を判断しているといえよう。
国民民主党は玉木代表自らの理論武装していることもあり、勉強会の提言と代表の考えに齟齬がないが、立憲民主党の場合は、ここに大きな乖離がある。どちらがより、有権者の理解を得られるかは火を見るより明らかだ。
自民党議連から巻き起こる消費税ゼロ
一方の政権与党にも動きがある。自民党の若手議員らによる議員連盟「日本の未来を考える勉強会」からは、消費税率を「ゼロ」にすべきだという提言を打ち出している。やはり、問題意識は国民民主党の玉木代表と同じだ。
この議員連盟は与党の中にあって異色の集団だ。2017年のグループ立ち上げ当初から「消費税は10%にするのではなく5%に減税せよ」と訴えていた。そして、10%に上げた結果が前述した経済の落ち込みである。彼らは消費増税だけで、これだけ経済が落ち込んだ中でのコロナ騒動を考えると、5%への減税だけではもはや間に合わないと主張する。
もう一つユニークなのは、この議員連盟は政府が推し進める「特別貸付制度」にも疑問を呈している点にある。結局は融資であるため、金利負担が要らないとはいえ、いずれ返済しなければいけないお金。これ以上、借りても返済する自信がないという事業者は事業そのものを辞めてしまうおそれがある、とする。
与野党を超えた大同団結はあるか?
与野党を超えて、巻き起こる消費税減税。ハードルは様々あるにせよ、与野党を超えている点は注目したい。特に国民民主党と自民党は本件については政局やパフォーマンスで動いていないところが好印象だ。ぜひとも、それぞれの立場を超えて政策連携してもらいたいものである。