新しい政策には財源が欠かせない
新しい政策を打つ上では財源の議論は切っても切り離せない。選挙の時ともなれば、各政党から様々な新規政策の提案がなされるが、当然、何か新しい政策を提案する以上、財源の手当てもきちんと示されなければならないのだ。
そうかと言って、財源の議論にまで進んでいかないのが現状だ。国民の耳に聞こえの良い政策が次々と提案される一方で、その裏付けとなる財源については不明確ということも少なくない。実際に、政権を担う自民党や公明党のみならず、野党でもその種の財源の議論は十分とは言えない。
国民民主党による財源の議論
そんな中で、興味深いツイートを見つけた。国民民主党の泉健太政調会長によるものだ。
#国民民主党 の『#新しい答え2019』。
— 泉ケンタ (@office50824963) July 11, 2019
これら政策に必要な財源は約3兆。うち児童手当増額や給食無償化など子ども関連の約2兆は、未来投資であり『子ども国債』で確保。
家賃補助などその他約1兆は、金融所得税率の引き上げ、GAFA課税、予算組み替えで確保します。 #参議院議員選挙2019#参院選 pic.twitter.com/5tcRJmRaf6
今回の選挙で国民民主党が掲げた「新しい答え2019」について、そこで提案されている新しい政策に関する財源が明確に示されているのだ。
まず、新しい政策に必要な財源は約3兆円であると明示している。そして、その財源を確保する方法が次のように示されている。
「児童手当増額や給食無償化など子ども関連の約2兆は、未来投資であり『子ども国債』で確保。」
「家賃補助などその他約1兆は、金融所得税率の引き上げ、GAFA課税、予算組み替えで確保」
「子ども国債」は以前から国民民主党の玉木代表も主張してきた方法である。
現在の財政法では、「建設国債」しか発行が認められていない。そして、この「建設国債」はインフラ整備のために発行することが予定されているため、現状では社会福祉や教育のためには使えない。そこで、子ども向けの政策のための国債をということで提唱されたのが「子ども国債」である。
結局は国債で手当てするのかと思われそうだが、現在の自公政権は財源が足りなければ財政法の特例である赤字国債を発行すれば良いというスタンスであるのに対して、国民民主党はそういうスタンスではない。無責任に赤字国債を積み重ねるのではなく、子どものためにだけ使う国債を発行するというのである。
新しい政策を展開するとともに、財政法を改正して、人的資本形成のために用途を限定する「子ども国債」の発行を可能とする。玉木代表によれば、「私の提案する「こども国債」は、こうした公債発行対象経費の抜本的見直しを伴うものであって、単に借金を増やす政策ではありません」とのことだ。
その他に、金融所得税率の引き上げ、GAFA課税、予算組み替えによる捻出が提案されている。
金融所得課税とは、株式を売却したときの利益や配当に対してなされるもの。その引き上げは自民党でも検討されていたものであって、ここで国民民主党が財源確保策として提案したこと自体、特段に不自然なことではない。十分にあり得る財源確保策であると言えるだろう。
金融所得課税の引き上げは株式の売買に影響を及ぼす可能性があり、株価の下落を懸念した自民党は結局引き上げを昨年見送っている。選挙後ともなれば、おそらく再度検討されることになるのではないだろうか。
GAFA課税とは、Google・Apple・Facebook・Amazonに対する課税の強化のことだ。これは、先日の大阪のG20でも議論されたテーマである。
今後、国際的なルール作りを行っていくこととされたため、その具体策は今後検討されるところとなるが、課税により一定の税収が期待できることだろう。これも十分にあり得る財源確保策である。
予算の組み替えは、それだけでは大きな財源を捻出することにはつながりにくいが、一定の規模の金額は当然に確保されることになる。上記の金融所得税率の引き上げやGAFA課税と組み合わせて1兆円というのは、それほど無理のある想定とも言えまい。
総合すると、「子ども国債」という新たな国債発行のあり方の実現、さらに、現在の自公政権下でもおそらく採用されるであろう財源確保策、その組み合わせによって、国民民主党は新たな政策についてその財源を手当てしようというのである。
国民民主党以外の党も財源の根拠を示せ
一部には、反対する勢力が他党を攻撃するために、財源の議論を持ち出すむきもあるようだが、どの党であっても何らかの提案をする以上は財源を合わせて示す必要がある。少なくとも、国民民主党は自らの示す政策案について、その財源を明確にしており、その策も十分に実現可能なものである。
特に政権を担う自民党や公明党は国民受けのする政策をただ打ち上げるだけではなく、国民の負担増につながるかもしれないその財源についても明確にすべきであると言えよう。