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令和時代こそ国会改革実現を 内閣委員会にてタブレット端末初使用

 

 

 

内閣委員会にてタブレット端末が使用される

 

 4月26日の衆議院内閣委員会にて、タブレット端末を使用しての質疑が行われた。

 

mainichi.jp

 

 

 この日は、行政手続のデジタル化を進めるための法案が審議された。その審議にあたって、牧原秀樹委員長(自民党)が開会の文言をタブレット端末を見ながら読み上げた。そして、自民党の牧島かれん議員や国民民主党の浅野哲議員がタブレット端末を用いて質問を行い、それに対して平井卓也科学技術担当相もタブレット端末を見ながら答弁を行った。

 

 これまでの国会審議ではタブレット端末が使用されたことはない。一方で、地方議会では既にタブレット端末の使用が広がりを見せている。ようやく、遅れていた国会も重い腰を上げたということになるだろう。

 

 とは言え、今回のタブレット端末の使用は手放しで褒められるものではない。というのも、タブレットの通信機能は遮断されていたからである。これまで紙で配布されていた資料をPDFにして、それをタブレット端末内に保存し、端末でそれを表示させて議員たちが読み上げた。別にタブレット端末を使わずとも出来ることを、タブレット端末を使用としたと言いたいがために、無理に使用しただけとも言えなくもない。
 確かに、国会審議に関する改革として、大きな一歩ではあるが、最初の一歩としては少々慎重すぎるものだったのではないだろうか。
 いずれにしても、平成最後になって、ようやく国会審議でタブレット端末が使用されたことは記憶に留めておきたい。

 

 

国会改革の実現へ向けて

 

 自民党の小泉進次郎衆院議員ら超党派の「『平成のうちに』衆院改革実現会議」が目指す国会改革案の中には、ペーパーレス化の推進があった。今回の国会審議におけるタブレット端末の使用は、その実現のための第一歩にはなったが、まだまだその道のりは半ばである。
 「平成のうちに」と謳われたが、結局実現したのはタブレット端末の限定的な利用というのはお寒い状況である。平成最後に、ようやく第一歩が踏み出されたわけだが、来る令和時代には「国会が時代遅れ」という状況からは抜け出したいものだ。

 

 ところで、国会改革案は国民民主党や立憲民主党も打ち出している。自民党は小泉議員を中心とした一部の議員のみ積極的であって、党としては国会改革に前向きではないのかもしれない。対して、野党は国会改革に前向きなのだ。

 

www.ksmgsksfngtc.com

 

 

 特に、国民民主党が昨年末に打ち出した国会改革構想の中間報告は詳細かつ具体的なものであり、注目に値する。

 

www.dpfp.or.jp

 

 

 その中に、次のような一文がある。

 

 「今回の国会改革が、我々が主張する本質的な改革を実現することなく、「ペーパーレス化」・「ICT化」の推進等をもって完結したかのような状況をつくり出してはならない。」

 

 この指摘はなかなか鋭い。国民民主党の国会改革構想中間報告は2018年12月末に出されたものであるが、ここでの懸念が現実のものになりかねない。というのも、ペーパーレス化の本格導入については衆院議院運営委員会での議論が10連休明けから始まると決まったに過ぎず、先行きは不透明だからだ。

 

www.jiji.com

 

ともすると、タブレット端末の使用で事が完結しないとも限らないのである。

 

2019年1月30日の衆院本会議では国民民主党の玉木代表が用意した質問をタブレットで読もうと持ち込みを申請したが与党の反対で実現しなかった。その反対理由は前例がないという1点のみであったのだ。

本会議に先立つ衆院議院運営委員会理事会で与党側が「前例がない」と難色を示したのが理由。玉木氏は質問の冒頭で「国会のペーパーレス化のためにも、こうした古いルールを改めて進めていこう」と訴えた。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2019013001079&g=pol

 

 今回限定的にタブレット使用が実現したが、今後の利用予定もないという事で、与党のパフォーマンスのみで終わらないかが懸念される。

 

情報通信技術の積極的な活用を

 

 「『平成のうちに』衆院改革実現会議」の目指す改革案の中に、妊娠・出産で本会議を欠席した女性議員によるインターネット投票の導入があった。国民民主党の国会改革構想の中間報告の中に、ほぼ同様の記述があり、「女性議員の妊娠・出産時の表決については、代理投票や通信端末を用いた遠隔地投票などの手法が考えられる。」とされている。
 ICT化の推進をもって完結させるわけにいかないのは国民民主党が指摘するとおりだが、さりとて、これだけ様々な情報通通信技術の利用が可能になった現状で、国会がそれを利用しないというわけにもいかないだろう。むしろ、そのような情報通信技術を利用しないが故に、国民から「国会は遅れている」と認識されることのマイナスは大きい。

 

 平成時代は技術的に遅れてしまった国会。令和時代には技術的も最先端を行く国会へと変貌して欲しいと思うところだ。
 連休明けから、ペーパーレス化の本格導入について検討されることになるが、ペーパーレス化に留まらず、例えばインターネット投票を利用した国会での採決の実現など、さらなる国会改革の実現へ向けた議論を期待したいものだ。