17日、政府は自民党内閣・厚生労働部会の合同会議で中長期的な高齢者施策の指針「高齢社会対策大綱」の改定案を示した。公的年金の受給開始年齢を70歳を超えても選べる制度を目指すことを発表。元気でまだ働くことができる高齢者の就業を促しすべての人が活躍できる社会を目指す。
現在の年金受給可能な年齢は?
現在は、原則として65歳から受け取ることが可能である。しかし、希望すれば60歳から65歳の間でも繰上げて受給することができる、この場合は、請求をした時点に応じて年金が減額され、減額率は一生変わらない。また、65歳から70歳の間で繰下げて受給することも可能であり、この場合は、繰下げをした時点に応じ年金額が増額される。
上記の公的年金受給開始年齢を70歳以上でも選択できる仕組みを、高齢者施策の指針「高齢者社会対策大綱」の改定案に示した。
高齢社会対策大綱とは?
高齢社会対策大綱は、高齢社会対策基本法によって政府に作成が義務付けられているものであり、政府が推進する高齢社会対策の中長期にわたる基本的かつ総合的な指針となるものである。
高齢社会対策大綱案の全容
・副業、兼業の普及を促進
・日本政策金融公庫の融資を含めた資金調達の支援
・年金の受給開始年齢を70歳以上でも可能にする
・介護職員の処遇改善をし人材を確保する
・介護基盤やサービス付き高齢者向け住宅の整備
・仕事と介護を両立できる雇用・就業環境の整備
・高齢のがん患者に適した治療法を確立
基本的施策のほかに数値目標として、60~64歳までの就業率を現状の63.6%から67%、健康寿命を男性は71歳から1歳以上、女性は74歳から2歳以上延伸するなどがある。
選択可能な受給年齢を70歳以上に引き上げる目的は?
政府には、少子高齢化で労働人口が減っているため、多くの高齢者に働き続けてほしいという考えがある。今までの高齢者に比べ、身体・知的機能や就労状況、本人の意識が若くなっている。今まで65歳以上のシニアが高齢者とされていたが、65歳までを完全現役として積極的に社会で活躍してもらう目的がある。また、社会保障費が増大しているため、社会保険料などの税金を納めてもらう目的がある。
年金受給年齢選択の仕組みは?
現在は、ライフスタイルに合わせ60歳から65歳までの間に受給開始すると1ヵ月あたりの受給額が0.5%減で支給される。65歳から70歳までに受給を開始すると1ヵ月あたりの0.7%増で支給される。見直し後は、70歳以上の年齢で受給開始するとさらに受給額が増える仕組みとなっている。
現在の高齢者の就業率は?
平成28年の労働力人口6,673万人中、65歳以上の人は786万人であった。そのうち70歳以上は336万人で、労働力人口総数に占める65歳以上の割合は11.8%であった。65歳以上の労働力人口の割合は、13年連続で増え続けている。
(参考:4 高齢者の就業|平成29年版高齢社会白書(全体版) - 内閣府)
政府は月内に大綱を閣議決定し、厚労省で具体的な制度を設計する。2020年までに関連法改正案を国会に提出することを目指す。