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希望の党と民進党が目指した統一会派の結成とは

 

 

 

会派の結成と政党の合流は異なる

 

 希望の党と民進党による統一会派結成の試みが頓挫した。

 この過程で、両党が迷走しているとの印象を国民に与えてしまったはずだが、そこには国会議員と国民の間に認識の相違があったように思われる。

 

 

 頓挫したのは、あくまでも国会内の会派結成の話である。少なからずの人が、希望の党と民進党の合流が破談になったと受け取っているはずだが、少なくとも現段階では合流の話ではない。将来的な合流への布石だったとしても、国会内での統一会派の結成は合流とイコールではないのだ。この点、会派結成を進めていた希望の党や民進党の議員は、「あくまでも会派結成の話なのに」と思っていたのかもしれないが、一足飛びに合流の話をしていると受け止められてしまい、進む話も進まなくってしまったというのが実情だろう。

 

 では、会派とは何なのだろうか。

国会では、2名以上の議員により、会派を結成することが出来る。議会では、この会派を基本として活動していくことが基本となっているのだ。国会内での活動単位は、政党ではなく、会派である。

 

各委員会の議席数や発言・質問の時間配分は、会派の所属議員の人数に応じて決められている。多くの会派は一つの政党によって構成されていることから、会派イコール政党だと思われがちだが、そうではなく、一人でも多くの議員による会派となるために、複数の政党による統一会派が結成されることもある。実際に、自民党は参議院において、会派「自由民主党・こころ」を結成しているが、この会派には自民党の議員の他に日本のこころの議員と無所属の議員も所属している。

 

今回、希望の党と民進党が試みたのは、参議院で自民党と日本のこころが結成しているような会派と同様に、異なる政党が同じ会派で活動していくことを目指すということであった。

 

 

会派内の意見の相違は想定内

 

会派の議員は議会内で歩調を合わせて活動をしていくことになることから、別々の政党が一緒に会派を結成する場合には、事前の政策の擦り合わせが必須となる。この点で、希望の党と民進党が折り合うことが出来なかったようだが、制度上は、会派内で法案への賛否が分かれたりすることには特段の問題はない。実際に、無所属議員が集まって結成される会派では、法案ごとに所属議員の賛否が変わるようなこともある。

 

一致して活動していくのは基本としても、異なる政党同士が同じ会派で活動する場合、どうしても異なる意見がぶつかり合うこともある。ただ、そのような相違も許容されるのが国会内での会派であるとも言える。

 

 

結束することで国会に緊張感を

 

希望の党に所属する議員の大半は元々民進党の議員であった。よって、現在の民進党と希望の党に所属する議員との間では、政策面で重なり合うところも大きい。結局、重なっていない部分の差がクローズアップされ、統一会派の結成にまでは至らなかったが、希望の党と民進党、あるいは立憲民主党も含めて、それぞれの意見が異なるテーマばかりが国会で取り上げられるわけではなく、一致して国会で行動できる場面も多数あることだろう。

 

国会での活動の基本単位は会派であり、会派の大きさはそのまま国会での影響力の大きさにも直結する。出自を同じくする議員が多い希望の党・民進党・立憲民主党がバラバラに会派を結成することは、その三つの政党全ての国会での影響力を小さくすることにつながる。その打開のために、何らかの形で連携をしていくことは今後も必要とされる。

 

ただし、殊更に安倍政権打倒を掲げても、それだけは国民的な理解を得ることにはつながらない。打倒安倍政権だけを掲げて数合わせで統一会派を組むといったことは慎むべきで、方向性が一致する政策について国会で共同歩調を取り、国会の審議や採決でも連携を取って行くことは検討されるべきだろう。

 

どうしても会派と政党はイコールで見られてしまうため、国会での活動のために統一会派を組みますと言ってみても、それだけでは理解されないだろうが、弛緩した国会を引き締めるには与党に対抗する強力な会派が国会内には必要だ。国会での活動を通して野党が連携し、場合によっては統一会派を組むことで、緊張感のある国会を取り戻して欲しいところである。