復興庁の後継組織の設置が明記される
東日本大震災から丸8年を迎える。
11日には、政府主催の東日本大震災8周年追悼式が千代田区の国立劇場で行われた。
追悼式の安倍総理の式辞では、復興が進む地域がある一方で、仮設住宅での避難生活を強いられる方が1万人を越えるなど、政府として被災者の実情に応じた対策が求められることが強調された。さらに、発災から8年を経て、震災の教訓を風化させてはならないことも主張された。
この安倍総理の式辞にあるような問題意識は、3月8日になされた東日本大震災の復興基本方針の改定にもあらわれている。この復興方針は、同日、閣議決定もされ、日本政府としての公式の方針となっている。
閣議前には、復興推進会議と原子力災害対策本部会議の合同会合が開催された。その様子は官邸webサイトで公開されている。
議事や配布資料は復興庁Webサイトで公開されている。
2020年度には「復興・創生期間」が終了する。このことから、復興庁も廃止となる。その後継組織の有無に注目が集まっていたが、改定された復興基本方針において、復興庁と同じような組織が引き続き置かれることが明記された。復興は次のフェーズへと移った。復興基本方針を見ると、そう思わされる。
今後の復興の取り組み
改定された復興基本方針には、今後の取り組みが示されている。項目としては、以下の五つが示されている。
「復興・創生期間」における東日本大震災からの復興の基本方針(案)
(1) 被災者支援(健康・生活支援)
(2) 住まいとまちの復興
(3) 産業・生業の再生
(4) 原子力災害からの復興・再生
(5)「新しい東北」の創造
全般的には、これまでの取り組みを踏襲した内容となっている。これまでの取り組みを継続した上で、更なる取り組みをというのが今回の方針である。
「復興・創生期間」の終了を受けて、今後の基本的方向性というものも示されている。
復興の基本的方向性は、地震・津波被災地域と原子力災害被災地域に分けて、それが示されている。
地震・津波被災地域
① ハード事業
② 心のケア等の被災者支援
③ 被災した子どもに対する支援
④ 住まい
⑤ 産業・生業
⑥ 地方単独事業等
⑦ 原子力災害に起因する事業
原子力災害被災地域
① 事故収束(廃炉・汚染水対策)
② 環境再生に向けた取組
③ 帰還促進・生活再建等
④ 福島イノベーション・コースト構想を軸とした産業集積
⑤ 事業者・農林漁業者の再建
⑥ 風評払拭・リスクコミュニケーション等
⑦ 地方単独事業等
それぞれ、乗り越えなければならない課題が数多く残ることを物語るような項目が列挙されていると言えよう。
安倍総理が強調したように復興が進んだ面もあるとは思うが、実際に乗り越えるべき課題を列挙されると、現実はまだまだ厳しいと言わざるを得ない。
事を難しくしているのは、被災地に限らず、少なくない地方都市は様々な課題を抱え、苦しい状況に立たされていることだ。被災地は震災からの復興という課題がそこに追加されているゆえ、さらに厳しい状況に置かれている。
一番分かりやすい課題が人口減少だろう。多くの地方都市は人口減少という課題に直面している。そういう中で大規模な災害である。災害がさらなる人口減少への圧力となってしまっているのである。
復興から再興へ
復興基本方針は、その名称が表すように、復興に関する基本方針である。そのため、災害と直接関係がある課題について、その対応策を示すというのが基調となっている。それ自体、批判されるようなことはではないが、これだけでは、各地域が抱える課題と相俟って復興が停滞している場合、どうしても不十分な対策となってしまう。
安倍総理の式辞でも語られているように、インフラの復旧はほぼ完了するなど、政府が当初予定した復興のための取り組みは着実に進んでいるのかもしれない。それでも、まだまだ復興に向けて課題があるというのであれば、震災からの復興という側面だけでなく、いずれの地域においても存在する課題の克服という側面も合わせて考えるべきときが到来しているということではないだろうか。
使い古された言い方だと思うが、「復興から再興へ」。復興は次なるフェーズへと移りつつある。
最近、「地方創生」の言葉をあまり聞かなくなったように思うが、復興基本方針を土台としつつも、政治が本気を見せて、被災地の再興に取り組むことが求められている。そんな思いを強くした、3月11日であった。