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フリーランス/副業・兼業に関する労働法制の検討を急げ(1/2)

 

 

 

フリーランス/副業・兼業などの労働法制の課題は残る

 

 国際線の飛行機に乗るとよく見かける光景である。団体ツアーで参加したお客さんがいて、添乗員と思われる人がてきぱきとその人たちに対応している。こうした添乗員は女性である場合も多い。


 かつては、海外旅行の添乗員(ツアーコンダクター)というと、大変な仕事ではあるが、旅行会社の正社員がやっていて、待遇も良くて地位も安定しているというイメージが強かった。まだ、日本人が海外に行くこと自体が贅沢だった時代は、憧れの職業でもあった。

 

 実際には、国内、海外の旅行業務も含めて、ツアーコンダクターという仕事については様々な働き方がある。勿論、旅行会社の社員もいるし、完全に独立しているフリーランスの人もいるようだ。旅行会社が派遣会社に登録されたツアーコンダクターに仕事を頼むことが顕著になっている。こうしたツアーコンダクターの働き方の基本はフリーランスであることが多いようだ。

 

 ただ、ツアーコンダクターに限らず、フリーランスという言葉の定義からしてはっきりしておらず、類型も様々であることから、なかなか実態をつかみにくい。それがゆえに労働法制も含めて、関係法の整備が追い付いていない面がある。

 

「一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会」という非営利団体が『プロフェッショナルな働き方・フリーランス白書2018』というものをまとめて、今年の4月に発表している。


 様々なフリーランスの実態の類型・実態が整理され、フリーランス業務に携わっている人へのアンケート調査などもあり 大変参考になる。政府のものでないので、概要も含めて紹介することは控えるが、ネット上にも公開されているので、一読をおすすめする。あるいは、この白書について報じた記事も出ているので、最低限それを読んでおく手もある。

 

 政府のものとしては、厚生労働省の「平成29年度在宅就業者総合支援事業」(委託事業)による「雇用類似の働き方に関する検討会」(座長:鎌田耕一・東洋大学法学部教授)が今年の3月に報告書をとりまとめている。こちらの方は概要の一部を紹介したい。


 「就業状況は、業界や職種、仕事の内容によって異なっており、仕事の内容も多岐にわたる。契約期間等がない者も多い一方、契約期間に定めがある場合は、比較的短期間で働く者が多く、特に、副業の場合、10日未満が多い傾向にあった」、「(関係団体や就業者からのヒアリングも含めた)調査では、満足度は全体的には高かった」との集約がなされている。

 

 制度の希望等については、「調査では、問題点としては『収入が不安定、低い』『失業保険のようなものがない』『労災保険のようなものがない』、今後整備・充実すればいいと思う事柄としては『特に必要な事柄はない』『取引相手との契約内容の書面化の義務付け』『トラブルがあった場合に相談できる窓口やわずかな費用で解決できる制度』『取引相手との契約内容の決定や変更の手続き(プロセス)の明確化』の順に回答が多かった」という整理がなされている。

 

 一方的にフリーランスをネガティブな側面だけでとらえるのは現実的ではないし、そもそも多様な形態があることに加え、副業や兼業を容認する傾向が定着し、シェアリングエコノミーが拡大していくと、フリーランス労働のあり方にも変化が及ぶ。


 厚生労働省の「雇用類似の働き方に関する検討会」の趣旨として、「雇用類似の働き方が拡大している現状に鑑み、その働き方について順次実態を把握し、雇用類似の働き方に関する保護等の在り方について、法的保護の必要性を含めて中長期的に検討する必要がある」「このため、まずは雇用類似の働き方に関する実態等を把握・分析し、課題整理を行う必要がある」と説明がなされている。


 拙速な対応は避けるべきだが、「中長期」という言い訳をして、いつまでも現状把握ばかりに終始しているわけにはいかない。経済社会を巡る世の中の流れは速く、その点では政策当局者の意識改革も必要だ。

 

 

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