通常国会が1月20日に招集されることになった。会期延長がなければ、6月17日まで。さて、この国会の焦点は何だろうか。
本来であれば、野党は政策ベースでその存在感を見せつけてほしいところだ。令和2年度の予算は地方創生の第2期が始まる。「ソサエティー5.0」とキーワードを変えてのスタートになるが、5年前に比べると、その熱狂は聞こえてこない。この5年間の地方創生の取り組みの中で、いよいよ、東京と地方の埋めがたい情報格差と人材格差がハッキリしたことも、熱狂なきソサエティ5.0の背景にありそうだ。
ここへきて総務省などは関係人口というワードを使い出しているが、この関係人口の増加をどうやって図っていくのか、かつ、それが地方にとって本当の意味でイノベーションの種にできるのか、議論は尽くされているとは言い難い。野党の腕の見せ所と言っていいだろう。
5Gと地方創生を野党は柱にできるか
また、令和2年度は通信政策の目玉「5G」がいよいよ始まる。特に総務省がローカル5Gに約40億円の予算を措置した。国家予算の全体から見れば、微々たる金額だが、地域の課題解決に資することがローカル5G実施の条件としており、地方創生からソサエティ5.0へと続く、総務省の強い思いが見え隠れする。地域課題をどう設定し、それをテクノロジーでどうやって代替していくのか、与野党の政策論争に期待したい。
一方で気になるのは、与党のだらしなさだ。今まで野党もだらしなかったが、与党もだらしない。
2つある。1つは「桜を見る会」を巡る一連の騒動だ。これは有権者心理としては「もっと議論すべき重要なことがあるだろう」という、やや厭世的な感情が年末には野党に向けられていた。この問題は年をまたげば、鎮静化すると思われていたが、ここへ来て、2013年〜2017年度の招待者名簿の取り扱いで公文書管理法違反があったことを、菅官房長官が会見で認めた。
さすがにこうなってくると、野党もしっかりと追及すべきだろう。行政事務の意思決定を文書に基づいて実施する「文書主義」は行政の大原則であることを考えると、このテーマは重要だ。
カルロス・ゴーンの逃走を正しく政局できるか
もう1つ、与党がだらしないのがIRだ。12月に秋元衆議院議員の逮捕だ。NHKなどの報道によれば、賄賂総額は700万を超えているという。IRの導入にあたっては、あれだけ国会でも賛否を分けたテーマだっただけに、政権与党は「李下に冠を正さず」の姿勢が求められる。政局と言われようが、このテーマは徹底的に追求すべきだろう。
とはいえ、誤解を恐れずにいえば、いかにも小物だ。金額も含めて、小物だ。例えば、かつてリクルート事件の発端は川崎市の助役が捕まったことだった。あの時の未公開株による売却益は1億円だった。今回は現役国会議員で、しかも数百万円。もしかしたら、検察はその先に大物を見据えているのかもしれない。野党はしっかりと論点を整理しつつ、本件を追求すべきだろう。
野党がもう一つ、存在感を発揮できそうなテーマは年末に世界中をあっと言わせた元日産自動車会長、カルロス・ゴーン被告のレバノンへの逃亡劇だ。ここで野党は戦略を誤ってはいけない。ありがちなミスは「日本の司法制度が世界に遅れている」という批判を展開することだ。確かにそういう側面はあるにせよ、今回の根本の問題はゴーン被告の逃走劇そのものにある。むしろ、政権与党以上に、野党が先頭に立って、国際世論に働きかけることも場合によっては、野党の存在感を際立たせることになるかもしれない。
本来は、政策論で野党は存在感を示してほしい。ましてや今年は選挙イヤーでもある。
揺らぐ自民党の屋台骨、野党はチャンス到来
加えて、ここへ来て自民党の屋台骨も揺らぎ始めている。鉄壁と言われた官房長官の威光も揺らぎつつあり、一部で囁かれていた、安倍vs菅の軋轢もどうやら、本物のようだ。岸田氏の禅譲したい安倍・麻生連合と、自民党の新しい権力構造の中心を狙う二階・菅連合の反目は永田町、霞ヶ関ではまことやしやかに囁かれるようになってきた。つまり野党にとってはチャンスである。
政局だけに走ると有権者はついてこない。政局と政策をバランスよく配合できるか。それができたとき、野党には千載一遇のチャンスがやってくる可能性が出てきた。