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令和元年を振り返る〈政治編〉

 

 

 

強かった自民党。安倍一強の力強さ

 

平成から令和へ。一つの時代の終わりとともに、新たな時代が幕を開けた2019年。政治毛経済社会など各分野でやはり様々な出来事のあった一年だった。令和元年も残すところあとわずか。今年一年を振り返ってみたい。

 

政治分野においては今年は選挙イヤー。4月の統一地方選挙に加えて7月には参議院選挙が行われた。“一強多弱”、“安倍一強”と揶揄されるように、今年も安倍自民党の強さに揺るぎはなかった。

 

参院選では、与党が勝利。改選定数124議席の過半数63議席を上回る71議席を獲得しその強さを見せつけた。6年前に多くの議席を獲得していたため与党は自民党は議席を減らしたものの過半数を維持し、公明党も改選議席を伸ばし、その強さを見せつけた。

 

野党の選挙結果としては、立憲民主党が改選議席から数を伸ばしたものの、与党を追い込むまでに行かなかったというのが実情だった。

 

むしろ参院選のハイライトは、N国やれいわの議席獲得だったと言える。与党を不支持の票が、主要野党ではなくそのほかの勢力に流れたことは、2020年以降の政界地図にも影響を及ぼすことだろう。

 

統一地方選挙で注目だったのは、大阪維新の会の、大阪府知事選挙、大阪市長選挙のダブル選挙でいずれも当選を決めたことだろう。国政では今ひとつだが、地元大阪では依然としてその影響力に衰えはない。

 

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揺れた霞ヶ関。信頼回復の道筋はあるか?

 

今年は、霞ヶ関の問題で国会が揺れたニュースも多かった。年明けには、国の勤労統計で調査方法に誤りがあり、雇用保険などで約600億円の過少給付が発覚し、政府は対応に追われた。政府統計への信頼感が揺らぐニュースだった。国が公表する統計だけに、その運用には細心の注意が払われることはもちろんのこと、国家の舵取りにも影響を及ぼすだけに、統計不正問題は特に大きく扱われた。

 

このほかにも、「老後資金2000万円」という言葉が踊った報告書問題。麻生金融相の対応とも相まって新聞やテレビ、ネットを賑わしたことを覚えている人も多いのではないか。

 

さらに、大学入試改革に伴う大学共通テストの一連のゴタゴタは、将来を担う高校生を中心に受験生へ大きな影響を与えた。英語民間試験導入による拭えぬ不公平感への対応不足とこれ関連して飛び出た「身の丈発言」もあった。さらに国語と数学で導入される記述式問題も見送りの方向で調整が進んでいる。

 

どの政策を取っても、すべての人がすべて賛成することなどあり得ない以上、多少の批判は止むを得ないが、その批判に対して明確な説明ができないような中途半端な計画で物事を進めようとしていたならあきれるほかない。批判を無視して話を進めてきたにも関わらず、ここにきて見送るとは情けない。

 

 

長期政権がもたらした政府・与党内のおごり

 

史上最長の通算在職日数を更新した安倍総理による長期政権のせいだろうか、閣僚の辞任が相次いだのも今年の特徴だったかもしれない。

 

参院選を終えて、第4次安倍再改造内閣が発足し、閣僚待機組の在庫一掃セールとも揶揄された新内閣がスタートしたものの、程なくして、公設秘書が選挙区内で香典を渡した疑惑で経済産業大臣だった菅原一秀氏が辞任した。

 

また、参院選で当選を果たした妻に公職選挙法違反疑惑が持ち上がったのをきっかけに、法務大臣だった河井克行氏が辞任している。いずれもポスト安倍の呼び声も高い菅官房長官に近い議員だったため、菅官房長官の影響力低下をささやく声も聞かれている。

 

さらに首相主催の「桜を見る会」の批判も飛び出した。安倍首相の後援会関係者が多数招待され、その本来の目的が政府行事としてではなく、政治家の選挙目当てとも取られかねない運営になっていたという。その影響もあって来年度は中止にすると発表された。

 

 

野党は再結集への第一歩を

 

一方で、一強に立ち向かう野党各党は、苦しい時期を過ごしているといういのは事実だろう。特に参院選では、与党の過半数を許してしまったという点ではなかなか有権者への浸透や支持拡大が進んでいない面は否めない。

 

参院選後、立憲民主党、国民民主党など野党の4党派は、衆参両院で共同会派の結成を届け出て、政権与党に対峙していくことでまとまって行動していく姿勢を打ち出すことができた点は一歩前進だったろう。

 

一部には、「ただ民主党に戻るだけ」と軽視する発言もあるが、そうした言葉に惑わされず、有権者が期待する自民党に変わる政権担当勢力を育てていくことがこれからは求められる。単に一つの政党を志向するのではなく、国民民主党の玉木代表が指摘する連立の仕組みも十分視野に入れつつ、「ただ民主党に戻るだけ」という批判を払拭する未来型の政権像を描いて欲しい。

 

将来、新しく令和の時代の幕開けに起こった野党の第一歩が日本の政治史に記録される変化の第一歩となることを期待したい。