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勝者なき2019年参議院議員選挙

 

 

 

参議院議員選挙を終えて

 

 参議院議員選挙が終わった。

 

www.nhk.or.jp

 

 

 野党統一候補として無所属で戦い当選した議員がこの後に所属する政党を決めるため、まだ議会の勢力図は確定していないが、自民党と公明党の与党勢力が改選・非改選を合わせて過半数を維持し、さらに政党では自民党が第一党、立憲民主党が第二党になることは確定している。よって、自民党から議長が、立憲民主党から副議長が選出されることになる見通しだ。

 

 今回の参議院議員選挙。その結果をあらためて確認しておきたい。
 報道では、与党が過半数を超えたため、与党の勝利。れいわ新選組やNHKから国民を守る党が議席を得たことから、それらの党の躍進を伝えるが、結果を虚心に見れば、少し違った様相を見せる。

 

 

議席を減らした自民党と議席を増やした公明党

 

 まず自民党。公示前は66議席だった。これが今回は57議席となった。
 一部には、3年前の参議院議員選挙で得た56議席(追加公認を含む)と比較して議席が増えたので、議席が増えたとする意見もあるようだが、それは議席数の減少を認めたくない故の詭弁だろう。自民党が議席数を減らした。これは厳然たる事実である。
 自民党として厳しい結果になったのは東北地方の一人区においてであった。岩手・秋田・宮城・山形の四県で現職候補者が接戦を落とした。その他、新潟・滋賀・大分の各一人区でも現職が野党候補に競り負けた。
 今回も一人区全体では大きく勝ち越したものの、これは忘れられがちだが、2013年の参議院議員選挙では31の一人区のうち29で自民党の候補者が勝利していた。このときに自民党以外の候補者が勝ったのは岩手県と沖縄県の選挙区。このうち、岩手県で議席を得ていた平野達男氏はその後に野党から転じて自民党入りしている。つまり、選挙前に各1人区は自民党の現職が独占しているような状況にあったのだ。
 6年前は2人区であった新潟県と長野県が1人区に変更されているため、32の1人区が今回はあったことになる。このうち、22が自民党候補、10が野党系の候補が勝利した。これを比較すれば、自民党の勝利ではあるが、多くの現職候補を落選させてしまった以上、簡単に喜べるような状況ではあるまい。
 知名度や与党議員であるがゆえの実績で、自民党現職議員の方が有利であったはずの1人区。なおかつ、選挙戦を通じて、接戦とされた選挙区には安倍総理をはじめとして幹部や著名な議員を応援に集中投入しながら、結果として接戦区ではことごとく競り負けたことの意味は大きい。自民党としては、引き締めていきたいところだ。

 

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 一方で連立を組む公明党は議席数を増やした。
 低投票率になると組織政党が有利になると言われ、実際にそういう結果になったかたちだ。1人区は公明党による選挙協力で自民党候補が安定した戦いを見せたところも多い。少なくとも選挙においては、公明党が存在感を見せたと言えそうだ。

 

 

伸び悩んだ立憲民主党

 

 第二党となった立憲民主党。事前の予想では20議席程度の獲得が見込まれていたが、思ったほどに議席数は伸びずに17議席となった。
 他党と競っていた東京選挙区の2議席目、大阪選挙区や京都選挙区、兵庫選挙区の1議席が確保出来なかったことが結果として20議席に到達できない要因となった。
 比例区は労働組合系の候補者が堅調に票を集めた一方で、複数擁立した著名人の候補者は苦戦し、格闘家の須藤元気氏が最後に議席に滑り込むのに成功した程度だった。著名人の候補も一定程度の票を集めているので、擁立自体は無駄ではなかったと思われるが、批判される割には得られる成果は大きくないことを肝に銘じるべきだろう。

 

 接戦であった1人区では立憲民主党系の候補が健闘して議席を確保したところもあり、野党の共闘は一定の成果をあげたと言えよう。今後は第二党になったことにより、参議院では野党を代表しての振る舞いを立憲民主党には求められるところとなる。野党の要として、存在感を示すことが出来るのか。次の衆議院議員選挙へ向けて、特に枝野代表の調整能力が試される場面も増えるだろう。

 

 

最低限を確保した国民民主党

 

 当選者が6名に留まったのが国民民主党だ。
 一人負けだったかのような報じられ方もあるようだが、そこまで悲観するような結果ではなかったのではないだろうか。
 国民民主党の候補者が選挙区で議席を確保したのは、静岡・長野・愛知。長野は1人区であり、現職の羽田雄一郎氏が自民党候補を圧倒した。静岡・愛知も現職の候補者が安定した戦いを見せて議席を確保した。野党同士を比較しても仕方がないかもしれないが、静岡と愛知ではそれぞれ立憲民主党の候補者を票数で上回っており、野党間での競争でも一定の存在感を見せたと言えよう。
 ただ、埼玉・東京・大阪・福岡といった選挙区では国民民主党の候補者が苦杯をなめた。それぞれ急遽擁立した候補者であり、やはり知名度不足が響いたと言えそうだが、新人候補者であったことを考えると十分に健闘したと言える票差ではあった。野党共闘を進める中で立憲民主党に譲った部分も多く、国民民主党単体で見た時には十分な成果とはされにくい側面もあるが、党の支持率もなかなか上がってこないなかで健闘し、ほぼ現有議席の維持に成功したという点では、最低限の成果を得ることが出来たのではないだろうか。

 

 

東日本で議席を確保した日本維新の会

 

 日本維新の会は関西地区ではその力を見せつけたが、それ以外の地域では大きな広がりを見せることが出来なかった。
 そんな中でも、東京と神奈川の両選挙区で議席を確保することが出来たことは同党にとっては明るい材料だろう。
 関西地区での強さは証明済みだが、議席数という意味では既に頭打ちの雰囲気も漂う。関西以外での議席確保や勢力拡大をいかに図るのか。あるいは、関西地区での影響力の保持を重視するのか。次の衆議院議員選挙へ向けた動向が気になるところだ。

 

 

れいわ新選組やNHKから国民を守る党の過大評価は禁物

 

 最後に、れいわ新選組やNHKから国民を守る党を取り上げるが、両党が得た議席は2と1であることはきちんと認識しておく必要がある。新興勢力として議席を得たことは立派だが、その影響力を過大に見積もるのは禁物だ。
 今後、両党に関する報道も増えるだろうが、国会の中では、残念ながら両党は極めて小さな勢力である。既にNHKから国民を守る党の立花代表は自民党との協力も示唆しているようだが、自民党に限らず、既存の政党と折り合いをつけながら国会ではやっていくしかない。既存の政党の中で埋没せずにいかにやっていくのか。議員数の少なさを跳ね返すだけの活動が出来るのか。選挙後に大きな注目を集めたからこそ、両党にとっては今後が正念場となる。