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地方で人気のない安倍首相、候補者統一が進まない野党、混沌とする2019年参院選

 

 

 

亥年現象という言葉をご存知だろうか。元朝日新聞の記者が作り出した言葉で、亥年は統一地方選挙と参議院選挙が重なる。前者は4年に1度、後者は3年に1度、選挙が行われることから、12年に1度、この2つの選挙が同じ年に行われるのである。それが亥年だ。そして、その亥年に行われる選挙では、政権与党の自民党が参議院選挙で苦戦する、というのが亥年現象、というわけだ。

 

 

亥年の選挙は自民党は苦戦する


なぜ、そのような選挙結果になるのかは諸説あり、本当のところは分からない。ただ、過去の選挙結果を見るとそうなっているし、直近の12年前の2007年の参議院選挙でも、例えば、定数が3の神奈川選挙で自民党は1議席、民主党が2議席という驚くべき結果だった。

 

さて、こうしたジンクスに従えば、来年行われる参議院選挙は政権与党・自民党、公明党が苦戦し、野党が躍進となるはずだが、現時点でそのような見通しは立たないのが現状だ。

 

 

地方で人気のない安倍首相


与党・自民党の状況を見ると、実は野党には有利な材料は多い。その最たる例が安倍首相の地方での人気のなさ、だろう。9月下旬に行われた自民党総裁選。安倍首相の得票は553票、石破茂衆議院議員の得票は254票と、安倍首相の圧勝だったが、党員票に限ってみれば、224票対181票という結果だった。

 

党員票とはまさに、地方で暮らす有権者そのものだ。自民党総裁選を見れば、安倍首相が地方では人気がないことは一目瞭然だろう。その分析の詳細は本稿に依るところではないが、アベノミクスの恩恵がいつまでも地方都市に及ばない、結局、豊かになっているのは都市部だけ、という経済問題が大きく影響しているものと思われる。

 

選挙の顔である首相が地方で人気がないとなれば、本来、野党にはチャンスである。地方都市にフォーカスした政策を打ち出していくことで、自民党と伍していくことは十分可能だろう。しかし、残念ながら、現在、そういう状況にはなっていない。

 

 

選挙区調整が進まない野党の足踏み


理由は簡単で、選挙区調整が遅々として進まないからである。立憲民主、国民民主、共産、自由、社民の野党の5党首は、1人区については選挙区調整を行う方針を確認したところだが、果たしてすんなりいくか。全国に32ある1人区にうち、立憲は1、国民は2、共産は22選挙区で候補者を内定しており、長野と長崎で国民と共産が競合している状況だ。

 

野党共闘といっても、旧民進党系2党と、共産党では思惑が異なる。そういう中で既に競合している長野、長崎で候補者調整ができるかは、大きな試金石と言っていいだろう。ここが調整できないようであれば、残りの選挙区も推して知るべし、である。

 

 

昨年の民進党解党劇が尾を引く


野党共闘をさらに難しくしているのは、近親憎悪といってもいい、立憲民主党と国民民主党の関係だ。国民民主党の玉木代表は懐深く、「自民党を利することがないよう、2人選挙区も調整をしよう」と呼びかけるが、立憲民主党はつれない。

 

去年の民進党から希望の党への雪崩を打ったような新党劇の中で、枝野代表をはじめ、その輪から弾かれ、泣く泣く立憲民主党を立ち上げた経緯が影響している。

 

あの選挙では小池都知事の笑顔での「排除します」発言で、希望の党への期待は一気にしぼみ、有権者の判官贔屓も手伝っ立憲民主党は野党第1党の地位を手に入れ、今日に至っている。一度は死の淵を見た立憲民主党からすれば、「何を今さら」という気持ちはわからなくもないが、しかし、そうした感情で物事を見ていれば、自民党を利するだけである。

 

 

政権奪取の橋頭堡が2019年の参院選

 

参議院選挙の先には、次の衆議院選挙が視野に入ってくる。スケジュール的には2020年の東京オリンピックを超えてから、ということになるだろうが、果たしてその時の日本の社会情勢はどうなっているだろうか。今、蓋をされているあらゆる難しさが誰の目にも明らかになっていることだろう。

 

したがって、来年夏の参議院選挙はそういう視野で見れば、来たる政権奪取に向けて、より戦略的な行動を取れるか、に一重にかかっており、野党リーダーの胆力が問われていると言ってもいいだろう。