投票率はさらに下がる恐れが。
参議院選挙の投票に「必ず行く」と答えた人が57%になったと新聞報道があった。記事によると、「2016年参院選の終盤に実施した情勢調査で、投票に行くかを聞いた質問に「必ず行く」との回答は67%あった。実際の投票率は54.70%だった。13年参院選では65%で、投票率は52.61%だった。今回は過去2回の参院選より「必ず行く」の割合が低い」という。
低投票率も有権者の声の表れとはいえ、有権者の半分前後が投票しないという現実には政治家側の努力不足を指摘せざるを得ない。
参院選も終盤に入り、各党、各候補ともに最後の1票の獲得に血眼になっている。
選挙区での熾烈な争いもさることながら、回線124議席のうちの50議席を占める比例区の議席争いにも注目したい。
有名人で票集めする政党は信用できない
比例区の投票方法は、「政党名」または「候補者名」を記載する仕組みで、政党が獲得した総得票数によって、党ごとに比例議席が分配される「ドント方式」が採用されている。
そこで生じるのが、「政党名」を覚えてもらうか、誰でも知っている有名人を連れてきて「候補者名」を書いてもらえばいいという安易な発想だ。例えば、当選後、神戸市議と手繋ぎ写真くらいでしかお目にかからない自民党の今井絵理子議員は、前回の参院選で約32万票を集めて自民党で5位につけた。党所属議員の得票数が増えれば比例候補の当選者が増えるので、32万票の集票力は実に優秀。前回の参院選で自民党の次に比例区の獲得議席数が多かった民進党の場合、比例区トップの得票数は27万票だったのでその今井議員の数字の大きさがよくわかる。
政党としての得票数が稼げるから、集票力が弱い候補者を当選に導くには手っ取り早い訳である。
投票所で比例区の候補者名簿を見ても特別な事情がなければ知っている人がいるわけでもない。「誰かわからない人が当選するくらいなら」という気持ちで知った人の名前を書くのも致し方ない。それが投票者心理というもの。
そんな心理を利用しようと思えば、元国民的アイドルグループのメンバーだったり、ボイスパーカッションが上手い人だったり、"みんながすでに知っている人"を連れて来れば良いと思いつくのかもしれない。
もちろん立候補には相当な覚悟が必要だ。国の行く末を憂うその気持ちを否定するつもりはない。ただ、その志を客寄せパンダに使おうという助平根性丸出しの左派政党の存在があるということだけは指摘しておかなければならないだろう。
比例区こそ人物ではなく政策重視で選びたい
そこで、比例区は政党名での投票を考えてみたい。比較対象となるはやはり政策だ。主要各党・政治団体の政見放送の文字起こしがインターネット上でも掲載されているのでチェックしてみた。
特徴的なのは、自民党や公明党は政権与党の立場であるため、実績を順に強調しているという点。これは野党がどうにもかなわない部分だ。同時に与党は「揚げ足取り」や「人気取りだけの実現できるか怪しい政策を言い始める」野党を厳しく批判している。
一方、立憲民主党は枝野代表が非正規雇用の増加や貯蓄ゼロ世帯の増加などのトピックスを挙げて与党を批判はするものの、政見放送内に一切の具体的な主張がない。年金制度も「国民的な議論が必要」「政治が率先してビジョンを提起していきたい」というだけで、それ以上の話がない。「大企業がもうけて内部留保がたまる」というおきまりのフレーズを繰り返して議論の必要性を訴えるのみ。議論が必要なことは誰でも分かっているのだが、感情的な話のみに終始する。話している枝野代表は官房長官経験者というのだから恐ろしい話だ。
具体性でいうと、れいわ新選組代表の山本太郎候補は政見放送で具体的な政策を話しているようにも思えるが、内容によく目を通してみると「あなたは自分が生きていても許される存在だと、胸を張って言えますか」「この国は壊れている」など国民の不安を煽る言葉が次々と並んでいる。
現状、こうした左派勢力は有権者に具体的な話をせず、不安を煽り、さも独裁政治が行われているかのように振る舞うことで、有権者を扇動しようと試みているのかもしれない。
国民民主党くらいしか真面目な政策論争に挑んでいない
それに対して、政府に対して冷静な対案を示しているのが国民民主党の玉木代表である。是々非々と言う点で日本維新の会もあるが、「身を切る改革」というフレーズばかりが踊り今ひとつ物足りない。
国民民主党の玉木代表は元財務官僚だけあって政策に明るく、国務大臣の秘書官経験もある。政見放送でも家計第一の経済政策には具体的な数字とともに明確な主張が次々と飛び出してくる。限られた時間の中でなぜ「家計第一」を掲げるのかを理路整然と述べているので、立憲民主党のぼんやりとした主張との違いが際立って見えてくる。
残念ながら華がないというのがこの党の辛いところだが、政策論争で議論を進めたいという姿勢はもっと評価されていい。