霞が関から見た永田町

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投票率を上げるため求めたい野党のあり方

 

 

 

2週間の選挙戦で大きな変化はなかった


長かった参議院選挙もようやく終わりを告げた。民意とはいえ、選挙の当落というのは当事者にとってはなかなかシビアなもの。全ての立候補者には敬意を表すとともに、これから6年間の選ばれた参議院議員にはしっかりと役目を果たしてもらいたい。同時に、有権者の立場としては選ばれた議員の働きを少しでも注視していきたいもの。

 

与党にとってこの結果は、6年前の大勝を受けての改選だったので議席の減は一応想定の範囲内となった。改憲勢力となる3分の2を維持できなかったことは痛手だったかもしれないが、自民党は3年前よりも1議席多い改選議席を獲得し、公明党も議席を伸ばしたことを思えば、開票開始後に語られる安倍首相の言葉には、一定の余裕も感じられた。

 

一方、野党といえば、立憲民主党が参院での第2党となる議席を獲得したが、それ以外の構成に大きな変化はなかった。全体の投票率過去2番目に低い48.80%に落ち込んだにも関わらず、れいわ新選組、NHKから国民を守る党が新たに議席を獲得したことの意味はよく考える必要がありそうだ。多くの野党にとって、今後の勢力図書き換えを期待させるような結果を手にすることはできない選挙となった。

 

 

れいわ、N国の新政党の存在感


非改選議席と合わせても参議院の勢力図に大きな変化はないものの、今後どのような政界地図が描かれていくのか、来るべき総選挙を睨んで、各党は国民にその概要を示してもらいたい。


この選挙戦を振り返れば、話題をさらった東京選挙区は自民党の武見候補と日本維新の会の音喜多候補が最後に滑り込むという展開。立憲の二人目山岸候補は一歩及ばず。れいわも国民民主党も議席には届かず、与党寄りの日本維新の会が初めて議席を得たという点は政界の勢力図にも多少なりとも影響するかもしれない。

 

また、全国比例で、れいわ新選組が2議席とNHKを国民から守る党が1議席を獲得したのは大きな驚きだったといえよう。山本太郎候補の集票力に1〜2議席は予想されていたが、過剰なまでの熱狂の様子にポピュリズムを想起する人も多かったのではないだろうか。ワンイシューのN国までもが政党要件を獲得し、丸山穂高議員に入党を要請するなど党勢の拡大に鼻息は荒い。

 

 

首を傾げたくなる極左政権への期待感


総理大臣の「伝家の宝刀」である解散がいつになるのかは定かではない。しかし、早ければ年内という可能性も囁かれる。今回の参議院選挙でもわかったように、現時点で野党への期待感はしぼんでいると言わざるを得ない。野党には来るべき総選挙に向けて、気の抜けない時間が続くことを自覚してほしい。

 

今回、れいわの議席獲得にSNS上でも好意的な発言をして共産党の志位委員長をはじめとする左派野党は、立憲、共産、社民、れいわといった各党の連立政権構想を示すことになるかもしれない。SNS上では、山本太郎を野党の統一総理候補として政権を目指すべきと発言するジャーナリストが現れるなど、なぜか過激な左派政権への機運が盛り上がっている。
だからこそ、安易なポピュリズムに走らない、冷静な政治が今こそ肝要だ。

 

 

国民民主党と玉木代表はブレていない


国民民主党の玉木代表は、開票特番を終えた後にtwitterを更新して有権者に向けたメッセージを発信した。その中で「次に向けた土台ができた」と振り返り、選挙戦を通じて若い世代との交流が多かったことをあげて今後「ネットや動画での配信に力を入れていきたい」と意欲を示した。選挙後には記者会見で選挙に対応できる組織づくを進めていくという発言もあった。しっかりと選択肢になり得る政党に進化していくことを期待したい。

 

国民民主党は、今回の参院選で消滅してしまうのではないかとさえ言われたが、実質改選議席を維持することができた。特別な追い風もない中での選挙戦だったことを考えるとこれは大きい。一方、野党第一党として露出度の高い立憲民主党は狙ったほどの議席獲得に至らなかった。あまりにも左派色の濃い野党勢力を敬遠する表れとも受け取れる。

 

 

健全な野党の存在感を有権者に届けられるか


選挙後、自民党が改憲議論に一定の理解を示す国民民主党を取り込んでしまうのではないかとも言われているが、玉木代表は改憲論議から逃げない野党党首として、安倍総裁と会談することも示唆した。これこそ野党党首としてのあるべき姿だ。何でもかんでも反対する立憲民主党との違いがここに現れている。

 

政策の良し悪しはいったん脇に置くとして、真正面から政府の政策に反対を唱え、自らの具体策を突きつけたたれいわやワンイシューとはいえ政策が明確だったN国の議席獲得には、そうした背景があると認識すべきだろう。

 

実直な活動の積み重ねがあればこそ、有権者の足は投票所に向かう。今回の参院選、投票率が過去2番目低投票率でありながら、新勢力が議席を獲得したというのは既成政党への失望と関心の低さを物語るものだ。これからいかに誠実に有権者と向き合えるか。永田町に閉じこもらず多くの国民と語り合う時間を少しでも多く作ることが、乱立する野党各党の未来を左右するに違いない。