会期延長の有無
1月22日に始まった通常国会も、連休が明けると、後半戦。6月20日の会期末へ向けて、与野党間の日程闘争が激しさを増していく。
衆参両院での残された審議時間を考えると、政権側として成立させたい法案はそろそろ審議入りさせておきたいところ。実際に、本国会の安倍政権の看板政策である働き方改革法案は野党の欠席の中でも審議入りさせた。
昨年の通常国会最終盤に指摘したことだが、再登板後の安倍首相は国会の会期延長を望んでいないようだ。
おそらく、今国会も延長はせずに、6月20日で幕引きを図ることが予想される。それは、森友学園・加計学園問題は言うに及ばず、財務省の福田前事務次官のセクハラ発言問題など、次々と政権にとって好ましからざる問題が表面化してくるからである。国会を開いていると、その都度、審議で野党からの追及を受けることになる。よって、出来るだけ国会を開かずに時間を稼ぐことで、国民が政権の問題を忘れてくれることで凌ぐと言うのがこれまでに採用されてきた方法であり、実際にそれは功を奏してきた。もし、それでも厳しいとなれば、最後は伝家の宝刀である解散を断行する。それを的確に実行してきたのが安倍総理だ。
これまでは、会期延長を希望する与党と延長を希望しない野党という色分けだったところが、現在の安倍政権ではその色分けが逆転している。後半国会では、会期延長をめぐる駆け引きが様々な場面で繰り広げられるはずであり、これが第一の注目ポイントとなる。この駆け引きの中で、与野党それぞれの主張が通る場面もあれば、通らない場面も出て来るだろう。
法律案成立率はどうなるのか
安倍政権の看板政策である働き方改革法案が審議入りしたと書いたが、国会に提出されている法案はもちろん他にもある。ほとんど注目されない法案でも、それが成立した暁には国民生活に大きな影響を及ぼすようなものもあり、無視できない。なかでも内閣が提出する「閣法」は政権として成立させたい法案であり、基本的には与党が賛成に回り、成立していくことになる。ただ、数多くの法案が提出され、審議時間にも制約があるため、閣法であっても全てが順調に成立するわけではない。そこで、法律案成立率が時の内閣の政権運営の巧拙を図る指標のひとつと目され、国会閉会後はその率の高低が話題になるのだ。
現段階では、閣法の成立数は多くない。議員提案である衆法も成立は数本、参法は全て審議中という状況である。
ここから、どれだけの法案を成立させることが出来るのか。野党も対立姿勢を鮮明にせざるを得ないという場面も多々あるだろうが、それでも賛成に回ることが予想される法案も少なくない。どの法案が優先させ、どの法案は持ち越しになるのか。あるいは廃案に追い込まれるのか。残りの会期の日数との見合いになるが、その取捨選択も後半国会の注目ポイントだ。
政党の動向
この9月には自民党総裁選が予定されていることから、後半国会の審議の裏側では、自民党内での議員同士の各種の駆け引きが繰り広げられるだろう。聞くところによれば、自民党内では、これだけ安倍政権にスキャンダルが相次ぎ内閣支持率が低下しても、安倍総裁の3選は固いとの空気に満ちているそうだ。
確かに、いざ総裁選挙となっても、安倍総理に対抗し得る有力な候補がなかなか出て来ないということもあるだろう。ただ、安倍総裁3選となっても、自民党の三役や内閣の布陣につき一部入れ替えも予想され、それを見越して、自民党の議員間で様々な思惑が錯綜する。各議員の国会内での活動にも影響は及び、次のポストを見据えて国会内での活動や発言を活発化する議員も現れるだろう。
自民党の総裁選を見据えて、自民党議員が国会でどのような動きをするのかが後半国会を見る上での第三のポイントとなる。
そのような政党の中の動きにより、国会審議に影響が及ぶということは自民党に限らない。5月7日には、新たに国民民主党が結成され、野党の中の力のバランスも変動する。現状では、立憲民主党の野党第一党の座は揺るがないようだが、委員会の委員の配分など、一部変更が予想される。それが国会での野党の動向にも影響を及ぼすはずだ。
特に、希望の党から国民民主党へと移行しない議員も一定数見込まれ、彼らが無所属として会派を結成するなどすると、それも野党の力のバランスの変更につながる。
そもそも、野党の議席数は少なく、一致出来る点は一致して事に当たらないと、大多数を占める与党には対抗出来ない。何でも反対をすれば良いと言うことでは当然ないが、対抗すべき点はきちんと野党として一致して対抗出来るのかどうか。野党として存在感を見せることが出来るのかどうかも後半国会を見る上でのポイントのひとつになるだろう。