異例の会期となった特別国会 ―目には触れにくいが野党も仕事をしていた―
特別国会の会期日数
解散総選挙を受けて行われた第195特別国会が9日に会期末を迎えた。当初は、数日だけの会期が予定されていたものの、野党の反発もあって、39日間の会期となった。
平成に入ってからの特別国会の会期日数は、以下のとおり。
西暦 | 会期日数 |
2014年 | 3日 |
2012年 | 3日 |
2009年 | 4日 |
2005年 | 42日 |
2003年 | 9日 |
2000年 | 3日 |
1996年 | 6日 |
1993年 | 24日 |
1990年 | 120日 |
1990年は異例と言える120日間の会期であったが、これは通常国会の会期前半である1月24日に解散があったことにより、選挙後の特別国会が事実上の通常国会として位置付けられたことによる。
その他、24日間の会期となった1993年は、非自民8党派による連立政権が成立した時である。また、2005年は42日間の会期であったが、これは郵政解散による総選挙後の特別国会であり、郵政民営化関連法案の採決などが行われた時である。
こうして見ると、通常国会の会期の前半での解散や政権交代、郵政解散のような劇的な出来事がなければ、特別国会は数日で終わるのが通例だ。そのような中で、何か大きな出来事があったと言いがたいが、今回の特別国会は数日ではなく一か月以上の会期となった。
本特別国会での法案成立数は10本
以前、本ブログでも指摘されたように、安倍政権下では通常国会がほとんど会期延長されていない。
安倍政権は「国会を開かない」政権であると言える。そうなると、自ずと積み残しになる政策課題や法案が溜まってくる。今回は、特別国会の会期の日数が一定数あったため、積み残しとも言える法律案の一部を成立させることが出来た。
既存の法律の一部を改正する法律案が大半であったが、政府提出法案は8本が成立した。また、議員提出法案も改正薬害肝炎救済法など2本が成立した。これらの大半が与野党一致して賛成したことによる成立である。マスコミでは、森友学園や加計学園の問題に対する野党の追及不足を指摘するむきもあるが、その裏で与野党が国会で議論を行い、法律案の成立につなげているのである。
野党も国会で活動をしている
対立点を明確にし、政権を攻め立てないと、野党はその活動を国民に知らしめることが出来ない。実際、10本の法律案が成立したことは大々的には報じられず、「また野党は反対ばかりしていた」と思われるような報道が目立った。
しかし、野党が国会でまったく活動をしていなかったわけでも、森友・加計学園の問題を追及していただけでもない。
衆議院に議員提案された法律案は8本で、うち2本が成立した。残りの6本は閉会中審査という扱いになったが、このうち5本は野党が中心になって提出されたものである。さらに、参議院では、20本の議員提出法案があったが、その全てが野党提出のものである。こちらは日本維新の会所属議員が中心になって提出されたものとなっている。
法律を作ることだけが国会議員の仕事ではないが、国会は立法機関であり、国会議員の主要な仕事のひとつが法律を作ることである。政権与党の議員であれば、政府提出法案の作成に関与することで仕事を果たすということになるのだろうが、今回の特別国会に関して言うと、政府提出法案と議員提出法案を比較した時に、議員提出法案の方が多い。そして、議員提出法案の提出は野党議員によって数多く行われている。与党議員が十分な活動を行っていたのかというと心許ない状況にあると言えるだろう。
とかく、野党議員は反対ばかりしているとされるが、今回の特別国会での法案提出状況からも伺い知れるように、野党議員も提案を行っている。対して、政権与党はそれら野党議員による提出法案に対して対案を出すわけではなく、いわば数の力で葬り去っているだけである。
まともに審議もせずに葬り去られるとき、その法案は話題にもならない。マスコミも、そのような法案の存在を報じることはなく、与野党が対立している法案だけを取り上げて、野党が反対をしていることを強調する。これでは、「反対だけ行い、対案も出さない野党」という側面だけが目立つことになる。まさに、野党としては歯痒い状況が続くわけだが、野党としては、直ぐに国民の関心を引くことがなくとも、そして政権与党に葬り去られるとしても、粘り強く提案を続け、その発信を続けていくしかないだろう。
例えば、今回の特別国会で野党が提出した「公文書等の管理に関する法律の一部を改正する法律案」や「行政機関の保有する情報の公開に関する法律等の一部を改正する法律案」は森友学園や加計学園の問題を受けた上で時宜を得た内容であり、政府提出法案として提出されてしかるべきものであった。野党による提出ということもあり、成立には至らず、閉会中審査という扱いになってしまったが、これらのような法律について野党は今後も提案を続けていくべきだろう。