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野党の「質問からも逃げる」のが安倍政権!?

 

 安倍政権は「国会から逃げる」政権であると書いたが、今度は質問からも逃亡しようとするようだ。

 

 

 

野党の質問時間を増やしたのはもともと自民党である

 自民党の若手議員の中から、与党議員の国会での質問の機会が少ないとして、衆議院予算委員会などの審議で野党側に質問時間が多く配分されている慣行を改めるよう要望が出された。これに対して、菅官房長官は30日の会見で、「国会議員が等しく質問できるよう、各会派に議席数に応じた質問時間の配分を行う。それは当然のことだ」として、若手議員の要望に理解を示している。与党が大きな議席数を有することから、質問時間の配分の変更が行われると、安倍政権は国会での野党による質問からも逃れることになる。

 

 そもそも、野党側に質問時間が多く配分される慣行は、民主党政権が成立した際に野党になった自民党が強硬に主張したことにより出来上がったことである。それまでも、野党側に対しては長めの質問時間が配分されていたが、自民党の主張により、それに増して質問時間が多く配分されていたのである。これを覆そうというのが今回の動きである。

 

国会審議は国会の花舞台

 国会の審議でも、特に予算委員会のそれはNHKのテレビ中継も行われ、国会の「花舞台」とも呼べるものだ。有権者に国会での活動を伝えるという意味でも、予算委員会で質問に立つのかどうかは極めて重要な事柄となる。それゆえ、与党議員からすると、予算委員会での質問の機会が少ないというのは悩ましいことではある。加えて、与党議員は質問に立っても、通常は政権に対して批判的な質問をするわけでもないことから、質問の内容が報道されることも少ない。このことから、与党議員に対しては、支持者から「国会で活動していないのではないか」と声が出てしまうのである。

 

 野党側にとっては、国会審議の場は、政権に対峙し自らの存在感を示すことが出来る最大の場である。何より、国会での審議を通して問題点を明らかにし、政権の活動を正すことが出来るのである。もちろん、国会は立法の場であり、野党にも立法機能を果たすことが求められていることから、闇雲に国会審議の場で政権を追及すれば良いわけでもないが、野党側は法案を提出しても、与党側が反対をすればそれは実現が出来ないため、国会審議を通して政権を監視するという役割に重きが置かれることになる。予算委員会で弁舌さわやかに総理以下、大臣を問い詰めれば、支持者からも「国会できちんと活動している」と評価されることになる。

 

与党の質問時間増加は国会審議の形骸化を助長する

 ここで、改めて確認すべきは、国会に提出される法案の形成過程である。国会で審議される法案は、基本的に与党の事前審査を経て、国会に提出されている。この事前審査の場面で、自民党の議員は質問を行うことも出来れば、修正などを行うことも可能である。国会に提出された法案は自民党として了承したものである以上、国会での自民党議員による質疑は最低限で十分であると言えるだろう。もちろん、法案の詳細を明らかにするという意味で、与党議員による質問も必要とされるところではあるが、往々にして与党議員による質問は「緩い」ものになりがちだ。森友学園や加計学園の問題が取り上げられた審議では、問題点を明らかにするどころか、論点をすり替え、あたかも質問をしている野党側が間違っていると主張するようなことが質問の名を借りて行われていた。今後、もし与党側の議席に応じて質問時間が配分されるとすると、国会の審議はさらに形骸化していくことになるだろう。

 

安倍政権は野党の質問時間を減らし逃げている

  与党側の質問時間が少ないというのであれば、単純に国会における審議時間自体を増やせば良い。国会から逃げる安倍政権ゆえ、国会の開催日数は最低限に抑えられているが、開催日数を増やし、審議時間自体を増やせば、与党議員の質問時間も確保されるのだ。最低限しか国会を開かずに、その中で与党と野党の質問時間の割合を変更し、与党側ばかりが質問をするようにするというのであれば、安倍政権が「逃げている」との誹りを受けざるを得ない。

 

 実際の国会審議の場で安倍総理は野党議員の質問の最中に野次を飛ばすなど、国会での質疑を「軽視」する姿勢を見せてきたが、今度は、野党側の質問時間を減らして逃げ回るということで、そこまで大きな問題を何か抱えているのであろうか。正々堂々と国会を開き、野党側からの多数の質問にも丁寧に答えてもらいたいものである。