9月12日付けの産経新聞は、「政府が電波オークション導入を検討」と報じた。
政府が電波オークション導入を検討
電波オークションとは
電波オークションとは、電波の周波数帯の利用権を競争入札によって決める仕組みのことである。アメリカやイギリス、ドイツやフランスなどで既に導入されており、その手法についての研究や実践が既に世界的に蓄積されている。
電波オークション導入検討への経緯
この電波オークションは、そもそも民主党政権時に導入が検討され、2012年3月の閣議決定を経て、関連法案が国会に提出されている。これに強く反対したのが当時は野党であった自民党であり、関連法案は審議もされずに廃案となったという経緯がある。
そして、自民党が政権を奪還した後に就任した新藤義孝総務大臣の下で、事実上、電波オークションの導入は封印されるかたちとなっていた。そういう背景があるなかで、突如として浮上したとも言える電波オークション導入の検討である。
入札金は政府の「臨時収入」になり得る
NTTドコモなどの携帯電話事業者が年間数百億円の単位で電波利用料を払っている中で、テレビ局は最大でも1局5億円程度しか電波利用料を支払っていないとされ、その不公平が指摘されてきたところである。今回、この不公平に切り込むのか、それとも新たに空く帯域のみにオークション方式を導入するのかは報道を見る限り判然としない。ただ、利用可能な電波の周波数帯には限りがあり、実際にオークションが実施されれば、政府に追加で毎年平均数千億円の収入になると民主党政権時の議論では推計されていた。アメリカでは、電波オークションで数兆円単位の落札があったこともあり、政府にもたらされる「臨時収入」の大きさは計り知れない。
自民党が野党時代に廃案に追い込んだ電波オークション
電波もある種の既得権益であり、電波オークションを導入するとなると反対する勢力も存在する。実際、自民党は野党時代には導入に強く反対していた。
ここにきて、手のひらを返したように電波オークションの導入を検討するというのであれば、自らが反対していた経緯について説明が求められるところである。電波オークションを導入すべきとするのであれば、2012年の民主党政権時に提出された法案に賛成するなり、賛同しつつ修正を迫れば良かったわけであり、廃案に追い込んでしまったことにつき自民党は過ちであったことを認める必要がある。
2012年に実現出来ていたかもしれない事柄について、反対することで頓挫させ、結果として5年以上を徒に消化してしまったことの責任は極めて重い。
安倍首相に説明が求められる
安倍首相は、民進党からの批判や提言に対して「御党の政権時には実現出来なかった政策ではないか」と切り返すことがあるが、自民党が頓挫に追い込んだ政策につき、今度は自分たちが取り組もうとするのであれば、かつては実現させなかった理由を国民に対して説明する必要がある。対立する政権が取り組もうとした政策を頓挫させ、あたかも自らがその政策を構想したかのように持ち出して、何の説明もなく実現させるとしたら、それは明らかに欺瞞である。