島根県による「竹島の日」
2月22日は「竹島の日」である。
竹島がある島根県では、記念の式典も実施される。
この「竹島の日」は、2005年に島根県が「竹島の日を定める条例」を制定したことを根拠とする。1905年2月22日に島根県知事が竹島の所属所管を明らかにする告示を行ったことから、この日が記念日とされ、条例制定以来、島根県で記念の式典が行われているのである。
思い返すと、自民党は民主党から政権を奪い返す際の総選挙時に、「竹島の日」の式典を政府主催で行うことを公約に掲げていた。しかし、それは実現することなく、次の参議院議員選挙では、その文言が公約から消えてしまった。
かと言って、安倍政権の関心が薄れたというわけでは必ずしもないだろう。2013年の式典から、内閣府政務官を派遣している。今年も安藤裕内閣府政務官が派遣されている。
政務官が出席し、挨拶も行うのだが、日本国の領土に関わる問題につき、その式典が県主催のままというのは少々違和感を覚えるところだ。
例えば、沖縄県がアメリカ軍の基地問題に意見すると、「国の問題に県が口を出すな」とするのが現在の日本政府だが、一方で竹島については島根県の後ろに隠れているような印象すらある。
竹島の日に、式典が開催される松江市内に訪れてみれば分かるのだが、市内が騒然とすることがある。領土返還を主張する団体とそれに対抗する韓国人と思しき集団が激しい宣伝活動を行うからだ。
JR松江駅前のロータリーには、「竹島かえれ 島と海」の碑があり、島根県庁の近くには竹島資料室もある。島根県では、領土問題が現実のものとして存在していると言えよう。対して、日本政府は正面から向き合っていないのではないかと訝しく思ってしまうところだ。
「我が国固有の領土」
領土問題担当の宮越光寛大臣は、竹島が「我が国固有の領土」であることを強調している。
最近、安倍総理をはじめ各大臣は北方領土を「我が国固有の領土」とは言わなくなってしまったのだが、竹島については宮越大臣が「我が国固有の領土」と明言した以上、その立場に変更はないようだ。
北方領土については、国民民主党の大塚耕平議員が繰り返し安倍総理に見解をただしたが、最後まで「我が国固有の領土」とは答えなかった。
同じく国民民主党の前原誠司議員も先日の予算委員会で安倍総理に領土問題について質問したが、その答弁は大きく変わるところがなかった。
北方領土はロシアと交渉中のため、「我が国固有の領土」とは言わない。対して、韓国に実効支配されてしまい、交渉が出来るような状況には竹島については「我が国固有の領土」であると強調する。ある意味に、正直な整理の仕方をしているとも言えるが、いずれも「我が国固有の領土」であることには変わりない。簡単でないことは百も承知であるが、その奪還へ向けた取り組みを粘り強く続けていく必要があり、日本政府として注力しているところを国民にも見せて欲しいところだ。
与野党をこえた国民的な領土返還の運動を
ところで、竹島の日の式典には、政務官や自民党の議員だけでなく、野党議員も出席する。昨年のその様子が国民民主党島根県連のサイトで公開されていた。
ここで石橋通宏県連代表(当時)は「本来ならば北方領土返還要求全国大会のように、政府も主催者として記念式典・及び関係行事の開催に積極的にかかわっていくべき。」と挨拶で語ったと紹介されている。
自民党の公約にもあり、昨年は野党側の式典参加者からも提案のあった、政府主催による竹島の日の記念式典の実施。まずは、日本政府としての姿勢を示すために、早期の実現を目指すべきではないだろうか。
数年前の竹島の日に、古谷経衡氏が公表した論考が一部で話題となった。そこには、日本の外務省が渡航を自粛するように喚起している竹島に韓国経由で上陸した様子が描かれている。
この中で、古谷氏は次のように書いている。
「日本がどんなに「固有の領土」と訴えても、韓国の積み上げた既成事実を崩すことには至っていない。加えて、本日の「竹島の日」に関する式典がいまだに政府主催で開催されず、島根県という関係自治体の手によってほそぼそと実施されているという意識の低さは、韓国とは雲泥の差だ。」
「私は韓国に行って、なによりも現政府の「やる気のなさ」を痛感し、そのことに怒りを覚えた。「竹島は不法占拠された~」などという、生ぬるいことを言っているようでは、「領土を放棄した」と捉えられても仕方がない。「竹島は韓国に併合されている」のが、正しい認識の出発点だろう。」
ここでも指摘される現政権のやる気のなさ。北方領土については、プーチン大統領の甘い言葉に騙されるかのように安倍総理も前のめりになっているが、一方で竹島への関心は薄い。竹島も「我が国固有の領土」であり、その返還へ向けた取り組みを国民あげて行っていく必要があり、その先頭にきちんと立って欲しいものである。
あらためて繰り返しになるが、自民党の政権公約からは消えてしまった「政府主催による竹島の日の記念式典の実施」。この約束を果たすことから、安倍総理は始めてみるべきではないだろうか。