【大阪ダブル選挙】大阪都構想について再度民意を問う
「大阪都構想」について、再度民意を問うとして、大阪府知事・松井一郎(以下松井氏)と大阪市長・吉村洋文(以下吉村氏)が辞職して始まった選挙戦も後半戦に突入している。
新聞各紙の情勢報道では、民意を問うとして辞職した松井氏と吉村氏が優勢とされている。投票の判断は都構想の当否だけで決まるわけでないと思うが、このまま二人が知事選挙と市長選挙を制すれば、あらためて都構想実現のための動きが加速し始めることになってしまう。
あらためて、本当に大阪都構想なるものが必要なのか否か。じっくり考えてから投票すべきではないだろうか。
この選挙が結果として大阪都構想についての民意を再度問うものであるならば、有権者にはその投票は、より慎重に行って欲しいと思うところだ。
大阪都構想とは?
大阪都構想とは何か。その概要を簡単にまとめると以下のようになる。
まず大阪市を廃止し、複数の特別区に分割する。廃止された大阪市の大半の権限や財源は大阪府に移し、一部の権限や財源は特別区に渡す。
イメージとしては、東京都と東京23区の関係に近いものを大阪でも実現させようとするものと言えば分かりやすいだろう。
かねてから問題として、指摘されてきた大阪府と大阪市の二重行政の克服。そして、地域の実情に応じたきめ細やかな行政サービス提供の実現。その両者を実現する策として、大阪維新の会が最重要政策に掲げ、日本維新の会がその実現を現在も画策している。
大阪都構想は大阪の問題の解決策となりうるのか?
その実現のために2015年5月に実施された住民投票では、僅差とは言え反対が多数となり、大阪都構想は頓挫した。にもかかわらず、あらためて実現へ向けて民意を問いたいというのが今回の松井・吉村両氏の主張である。
既に民意が示された問題を、あらためて蒸し返すのは、彼らの党利党略に過ぎないと思うが、大阪都構想の実現をあらためて掲げてきた以上、それに対して、きちんと反論をすることが求められているだろう。
これは、自由民主党・市民クラブ大阪市会議員団が開設しているサイトだ。ここでは、都構想に対して詳しい反論がなされている。
これはこれで十分に説得力を持つとは思うが、はっきり言って、分かり難い。これだけの量と質の文章を読んでくれる有権者は最初から都構想には反対だろうし、反対を主張する候補に投票してくれる。
私たちが行うべきでは、あまり詳しくない人にも伝わる反論を簡潔に行うことだ。
では、その簡潔な反論とは何か。
大阪府と大阪市の関係で解決出来なかった諸課題が大阪府と特別区の関係になったからと言って解決出来るのか。いや、出来るわけがない。ただこれだけだ。
大阪都構想を推し進めたとしても、大阪府と大阪市の関係が大阪府と特別区の関係に置き換わるだけで、本質的な課題の解決にはつながらない。
裏を返せば、大阪府と特別区の関係にすれば課題が解決出来るというのであれば、現在の大阪府と大阪市の関係においても工夫次第で課題解決は出来るということだ。
その努力を放棄して、何としても都構想を実現しようというのは、今まで誰もやったことがないことを自分たちで成し遂げたいという功名心以外の何物でもない。
日本維新の会の考えの先には、大阪に明るい未来はない。
都構想が実現に至れば、実現したことだけをもって、それを成果として誇ることだろう。その他に何らかの成果らしいものが出れば、今度はその成果を大きく宣伝することだろう。
しかし、その成果らしいものは現在の大阪府と大阪市の関係の中でも出すことが可能なものばかりだ。二重行政の解消というのであれば、大阪府と大阪市が現在の仕組の下でも連携して解消することが十分に可能である。地域の実情に応じたきめ細やかな行政サービス提供も、大阪市内で区に権限移譲を行うなどすれば実現可能なことばかりである。なぜ、その方法を採ろうとしないのか。
府知事と市長を日本維新の会の政治家で占め、それぞれの議会でも十分な数の議席を日本維新の会で占めていながら、その連携が出来ていないというのであれば、自らの無能や怠惰を責めるべきではないか。
「大阪都構想が実現しないから大阪府と大阪市が抱える課題が解決しない」というのは詭弁に過ぎない。
日本維新の会は改革を標榜している。その看板のために、「改革のための改革」を繰り返し主張している。大阪都構想は、そのための方便だと思った方が良い。いま日本維新の会が行おうとしているのは、改革のための改革であり、大阪を舞台にした危ない橋を渡る実験である。
彼らの党利党略のために、大阪府民や大阪市民の生活を犠牲にしてはならない。真に考えるべきは大阪府と大阪市の都市としての今後の行く末であり、いかに都市としての生産性を上げていくのか。これに尽きる。制度を実験的にいじくり回したところで、成果は乏しいものに留まるだろう。
日本維新の会の「火遊び」に付き合っていては、大阪に明るい未来はない。そう思って投票態度を決めるべきではないだろうか。