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地方議員も推薦人要件にルール変更した国民民主党の代表選、永田町の論理を壊す一里塚になるだろう

 

 

 

メディア的な盛り上がりはないが、9月4日、国民民主党の代表選が行われる。視聴率主義の国会議員と、それを取り巻く政治部記者が跋扈する永田町にあって、このニュースが大きく取り上げられないのは、同党の支持率が数%にも満たない現状を考えれば仕方あるまい。

 

テレビ的な関心は生まれていないが、今回の国民民主党の代表選はなかなか興味深い。なんといっても推薦人の要件が緩和されたことだ。

 

 

過去には推薦人を集められず立候補断念も


代表選に立候補する場合には、どんな党でも通常は推薦人が必要だ。この推薦人を告示までに集められるか、どんな人が推薦に名を連ねたかは、与党であれば、その後の政権運営にも大きく影響するし、野党でも、その後の国会運営や選挙戦略にも影響する。推薦人集めの段階から、陣営間で牽制があるのはそのためだし、この小さくない党内政局は党内外が面白がる所以だ。

 

国民民主党はこの推薦人の要件を緩和した。現行では所属国会議員の20人の推薦人が必要なのだが、これを「所属国会議員の15%」に改め、かつ、国会議員推薦人と同数の地方議員の彗星人を出馬要件へと変更したのである。
国民民主党の現職国会議員数は62人。新ルールを適用すると、必要な推薦人の数は国会議員10人、地方議員10人となる。

 

 

国会議員と同数の地方議員を求める大胆なルール変更


今回の緩和のポイントは国会議員と同数の地方議員を必要としたことにある。玉木代表は常々、地方議員も大切にする方針を口にしていた。

 

もちろん、これまでにも地方が大事、地域分権の時代だと口にする国会議員はいた。それが党是の政党だってあった。しかし、彼らの地域分権、地域主権は「ウケ」がいいから口にしていただけで、その実、党内運営において地方議員を大事にした形跡はなかった。

 

唯一の例外は、地域政党から国政政党へと脱皮した日本維新の会くらいだ。日本維新の会はその出自から地方議員の力が強過ぎたくらいだが、それがアダとなったのか、後から合流した旧みんなの党系国会議員から不満が漏れ、結局、大阪都構想の住民投票で破れると、上手に言い訳をして、結局、日本維新の会から離れることになった。大きく報道されなかったものの、根っこには国会議員主導か、地方議員主導か、の党運営を巡る対立があったのは間違いない。

 

 

玉木候補の推薦人になる10人の地方議員は誰か


さて、前置きが長くなったが、玉木代表の、「地方を大事にする」というこれまでの発言は少なくとも口だけではなかった。代表選の推薦人要件に、国会議員と同数の地方議員を求めるというのは、永田町においては大きな一歩と言っていいだろう。

 

玉木代表の立候補は規定路線ではあるが、彼の下にどんな地方議員が名を連ねるか、そここそが注目すべきポイントだろう。間違いなく、次の国民民主党を支える人材だ。単純な名貸しではなく、政策、選挙含めた実力ある地方議員が名前を連ねるに違いない。

 

こうした地方議員が推薦人に名前を連ねることで、永田町だけでは拾い切れない、現場の声が代表選を通じて永田町に届き、しかも、それが党の政策にもなっていくという意味では、今回の要件緩和は今後、非常に大きな意味を持つことになるだろう。

 

 

災い転じて福となせるか


今回の要件緩和は元々は苦肉の策だった。9月下旬に自民党代表選が控えていることもあり、同じ時期に国民民主党が代表選をやっても埋没するだけだ、という危機感からの前倒し。しかも、現行の国会議員20人という要件のままだと、所属議員が62人しかない現状だと、事実上2人しか立候補できないことになる。

 

ただでさえ、政党支持率が低く注目度が低いのに、代表選が盛り上がらなければ、目も当てられない。そういう中で、考案された苦肉の策が今回の要件緩和なのだ。

 

しかし、背景などはこの際、どうでもいいだろう。大切なことは代表選のルールが変わったということ。そして、このルール変更は長らく、「地方議員は単なる駒」という永田町の論理を変えることにもなっていく、大きな変更だ。そういう意味で、今はまだ盛り上がらない国民民主党の代表選は、未来から振り返ると、ターニングポイントの代表選になるだろう。