霞が関から見た永田町

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厚生労働省の統計調査も信用ならない

 

 

 

厚生労働省の背信

 

 厚生労働省による「毎月勤労統計」の調査方法について不正があった件。

 

www.ksmgsksfngtc.com

 

 

 不正が明らかとなった経緯など、その詳細も明らかとなりつつある。

 

www.asahi.com

 

 これによると、昨年12月、厚生労働省と総務省の担当職員が統計委員会の西村清彦委員長らと協議した際に、東京都では従業員500人以上の事業所について抽出調査をしているため、抽出調査を東京以外の地域での調査にも拡大したいと厚生労働省の職員から発言があったことにより、明るみに出たというのだ。この時、西村委員長が抽出調査はルール違反であることを指摘し、これを契機に調査方法に問題があったことが公表されることとなった。

 

 この時、厚生労働省の職員は特に問題のない行為を行っているかのような口ぶりだったようで、本人達もまさか違法だとは認識していなかった可能性がある。しかし、統計法では、基幹統計調査を行う際には、総務大臣の承認を受ける必要があるとされ、承認を受けるべき事項が法律にも明記されている。
 毎月勤労統計については、従業員500人以上の事業所については全数調査とすることとされていたにも関わらず、総務大臣の承認を受けずに、抽出調査に切り替えていたというのが今回の厚生労働省である。これは明確な法令違反である。
 菅義偉官房長官も16日午前の記者会見で、統計法違反だったとの認識を示した。

 

www.sankei.com

 

 

統計法には罰則もある

 

 にわかに注目を集めた統計法。最初に公布されたのは1947年。2007年に大幅な改正が行われている。
 この改正時に担当大臣である総務大臣であったのが現在の菅官房長官である。国会審議を逐一記憶しているとは思いにくいが、今回、菅官房長官は改正時のことを思い出しているのではないだろうか。

 

www.shugiin.go.jp

 

 

 統計法は昨年の通常国会で改正されており、現在確認出来る条文は昨年6月1日に公布されたものである。

 

elaws.e-gov.go.jp

 

 この統計法には罰則規定があり、違反をすれば一番重いもので「二年以下の懲役又は百万円以下の罰金」に処される。
 今回の厚生労働省による違反は次の規定にかかわる可能性があるだろう。

 

 統計法
 第六十条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
  一 第十三条に規定する基幹統計調査の報告を求められた者の報告を妨げた者
  二 基幹統計の作成に従事する者で基幹統計をして真実に反するものたらしめる行為をした者

 

 総務省としては全数調査により真実を把握出来ると考え、そのような調査にあたることを厚生労働省に求めて承諾を得ていたにも関わらず、実際には全数調査ではなく抽出調査を行っていたというのだから、真実に反するものたらしめる行為を行っていたと解される可能性があるのである。
 厚生労働省の担当者が違法性をどこまで認識していたのかは判断の分かれるところだと思うが、調査手法を正しく装うためにデータ改変のためのソフトも作成していたと伝えられており、必ずしも正しくない調査手法を用いているということについては担当者の中で認識されていたのではないだろうか。

 

this.kiji.is

 

 

厚生労働省に対する信用は地に堕ちた

 

 昨年、障害者雇用に関して、役所が雇用者数を水増ししていたという問題が発覚した。水増しを行った省庁の中でも厚生労働省は特に悪質であるとして批判した上で、「誤魔化しているのは障害者の法定雇用率だけなのか」と問うたが、まさに、誤魔化しているのは障害者雇用の数だけではなかったことになる。

 

www.ksmgsksfngtc.com

 

 同じく昨年、働き方改革関連法案の審議に際しては、厚生労働省による裁量労働制に関するデータの改竄が問題となった。

 

www.ksmgsksfngtc.com

 

 今回のことで、厚生労働省は、統計法のような法律があっても、それを守らずに勝手な調査手法を用いる省庁であることがこれで分かった。さらには、都合が悪ければデータも改竄するし、公表数字の水増しも行う。もはや厚生労働省の公表する調査結果や報告は信頼のおけないものであることが明白となったのではないだろうか。厚生労働省の信頼は地に堕ちたと言えるだろう。

 

 今回、国会開会中ではないため、問題が明らかとなったからと言って、それが国会審議で直ぐに取り上げられ、政府の説明がなされるということにならない。そのため、あまり大きく取り上げられるニュースともなっていないが、これは由々しき事態である。 
 毎月勤労統計の結果が異なることにより、失業保険などの過少支給が生じており、その影響は延べ約2千万人近くに及ぶとされている。政府が行う統計調査に対する信頼を毀損するだけではなく、国民生活に直接の悪影響を及ぼしている今回の厚生労働省の背信行為。 府省が起こした問題を批判すると、それは政権批判にも直結するため、特に与党の腰は重くなりがちだ。だからこそ、ここは野党が厳しく追及して欲しい。