関心を向けることの重要性
国民民主党の代表選が始まった。
候補者は玉木雄一郎氏と津村啓介氏。若い二人による一騎打ちとなった。
マスコミでは「盛り上がらない」「注目されていない」と否定的に報じられているが、それは、マスコミを含めて、はじめから盛り上げようとも注目しようとも思っていないからそうなるのであって、関心をもって見れば、少し印象は異なる。
「国民民主党」という看板ゆえに否定的に見られてしまい、それゆえに何をやっても否定的に語られるのが大前提のようになってしまっているが、あらためて虚心坦懐にその取り組みを見れば、決して否定一色で語られるような酷い状況というわけではないのだ。むしろ、今回の国民民主党の代表選は政党の代表選として新しい方向性を示しつつあるというのが第一印象である。
立候補の要件を変更
これまで、民主党や民進党の時の代表選挙では、立候補にあたって国会議員の推薦を集める必要があった。この推薦人の要件を変更し、地方議員の推薦人も必要とすることにした。今回に関して言うと、必要な推薦人の数は国会議員10人、地方議員10人であった。
結局、津村・玉木両氏は以下のような構成の推薦人を届出した。
津村氏:国会議員の推薦人を10名。地方議員の推薦人を10名
玉木氏:国会議員の推薦人を21名。地方議員の推薦人を20名
津村氏はぎりぎり推薦人を確保したということなのかもしれない。一方、玉木氏は国会議員と地方議員、それぞれ必要な数の倍の人数の推薦人を集め、その支持の厚さを見せてきた。
自民党の総裁選挙でも国会議員票と地方の党員票の重み付けが同じにされるなど、地方の支持が重要視されるようになっている。地方議員からの推薦人も必要とするとした国民民主党の今回の取り組みは、その重要性を認識した上での適切な対応と言えるだろう。
代表選の特設Webサイトを開設
代表選挙にあたって、国民民主党は特設Webサイトを開設した。
この種のサイトが開設されたことは他党でもこれまでにあったことだが、今回のサイトはこれまでの例にはない充実ぶりである。おそらく、Webの専門家が何らかのかたちで関わっているものと思われるが、代表選挙に関わる必要な情報が網羅されている。
上記の候補者2名の推薦人も特設サイトで直ぐに確認出来た。
そして、代表選挙のスケジュールも明らかにされている。
全国各地で討論会や演説会が予定されている。この情報もきちんと事前に公開されているのだ。もちろん、多くの国民にとっては関心の向かない事柄だとは思うが、少なくとも今日この時点で何が行われているのか、あるいは行われようとしているのか、それが明快に公開されていることは評価されるべきである。さらに、それぞれライブ配信が予定されている演説会や討論会もある。全国行脚が行われるが、それぞれの土地で両候補がどのような訴えかけを行うのか。わざわざ現地に足を運ばなくとも、その様子を確認することが出来るのだ。
投票に電子投票を導入
党員・サポーターによる投票については、電子投票を導入すると表明されている。
政党の代表選挙による電子投票の導入も、これまで日本維新の会で実施を向けた検討が進められたことがあったが、今回、国民民主党で正式に導入されるはこびとなった。
国民民主党の幹事長である古川元久衆議院議員は、Facebook上で「国民民主党はベンチャー政党として新しいことにチャレンジしていきます。昨日から始まった代表選挙でも電子投票をはじめ、さまざまな新しい取り組みを実施中。」と投稿しているが、まさに新しいことに果敢に挑戦しているのである。
国民民主党の党員やサポーターは民進党から引き継いでいることもあって、それなりの数がある。ということで、日本でもこれまでにない規模の電子投票実施例を国民民主党は作ろうとしているのである。
代表選で「挑戦」をすることの意味
地方議員を推薦人とすることや代表選の特設Webサイトを開設、電子投票の実施など、どれもそれひとつを取り出せば、現状からの少しだけの変更に過ぎないのかもしれない。しかし、これまで様々な理由から十分に出来て来なかったことでもある。それらを今回一気にやってしまうという挑戦。これを国民民主党はしているのである。
いくら野党とは言え、そして国民的な関心が向いていないとは言え、新たな挑戦を国政政党がその代表選で行うことにはリスクもある。そのリスクも承知した上で、今回、国民民主党は新たな挑戦を行うという判断をし、一歩踏み出したということだ。
政治の世界では困難とされるイノベーションを実現する。国民民主党の代表選挙における「挑戦」には、そんな意味が込められているのではないだろうか。
どちらの候補者が勝利するのかということと同時に、その選挙戦がどのようにやり遂げられるのか、その顛末についても関心を払いたいところである。