GSOMIA破棄されず
23日に失効することが予定されていた日本と韓国の間の軍事情報包括保護協定(GSMOIA)は延長されることになった。
日本による輸出管理強化に対して反発した韓国はGSMOIAを延長せずに破棄することを8月に表明していた。直前までの韓国側の強硬な姿勢に、日本では破棄も止む無しとの雰囲気もあったが、結局、失効直前に回避されて延長されるかたちとなったのである。
韓国は、日本の輸出管理強化の見直しを延長の条件としていたことから、延長されたとなれば、日本が韓国の要求に応じてしまった可能性もあるが、経済産業省の発表や報道される内容からは、あくまでも日本は見直しに向けた議論に応じるというところまでの譲歩に留まったようである。韓国側としては、日本に譲歩したと国内向けに発信できない以上、日本からの譲歩を勝ち取ったと宣伝するはずだ。そういう宣伝は日本側にも伝わってくることから、日本側が大きく譲歩したかのように見えてしまう懸念もある。両国とも面子があることから、自国が多くを譲歩したと見えるようなことだけは避けたいところ。実際に、両国がどこで折り合ったのかは外側からは不明な点であって、折り合った事項を巡って両国の情報発信が積極的になされていくことだろう。
さっそく、日本の政府高官からは「日本外交の勝利だ」といった発信がなされた。対して、韓国はその発言について日本に抗議し、日本が謝罪するということが起きている。
後に、日本は謝罪の事実を否定しているが、このような両国の情報戦は今後も続いていくことになろう。
少なくとも現段階では、日本が行った韓国に対する輸出管理強化は取り消されておらず、GSOMIAは延長された。これが事実であって、今後については両国の交渉の進展を見守っていくしかないだろう。
現段階で、どちらが勝ったとか負けたとかいった議論はあまり意味をなさない。
現実路線だった国民民主党支持層
ところで、このGSOMIAの破棄の件。韓国による破棄が直前に迫った時点で行われた日本での世論調査では、国民民主党の支持者だけ「延長されるべきだ」という意見が「破棄はやむを得ない」という意見を上回っていた。他の党の支持者は「破棄はやむを得ない」が上回っていたことから、国民民主党の支持者の考え方が顕著に他党の支持者と異なっていたことになる。
結果どうなったのかと言えば、国民民主党の支持者がそう考えていたように、GSOMIAは延長されることになった。
威勢良く韓国に対して強硬な姿勢を日本が見せることも時には必要なことかもしれないが、そこは現実を見て、日本の国益にかなう行動をすべきところ。GSOMIAはアメリカもその必要性や重要性を強く認識しているものであり、アメリカは韓国に破棄を思いとどまるよう働きかけていた。
安倍総理はGSOMIAが破棄されても支障はないと表明していたが、さすがにこれは強弁に過ぎるだろう。
無くても全く支障がないレベルの協定であれば、そうそう結ぶこともないだろうし、アメリカが直接韓国に破棄を思いとどまるように要請するようなこともしない。
破棄されたとなれたとき、直ちに大きな支障が生じないという意味では安倍総理の発言が正しかったとしても、何かの折には日本にも支障が生じ得る。そういうときの日本の国益も勘案して、延長出来るものなら延長するように調整するという強かな外交が求められよう。
そういう強かな外交のあり方を指向したかのような国民民主党の支持者の意見は極めて現実的なものであり、結果として日韓両国の対応を正確に見通していたとも言えよう。
ただただ隣国に対して拳を振り上げるだけではなく、冷静に自国の利益を衡量して、主張すべきところは主張し、譲れるところは譲る。そうして、自国にとって最大限の利益を確保する。そういう考え方が出来る支持者が国民民主党には多いのかもしれない。
現実的な見方が出来る支持者がいること。国民民主党にとってこれほど心強いことはないだろう。