古屋議員によるパーティー券収入過少申告の疑い
17日、朝日新聞が自民党の古屋圭司衆議院議員の事務所によるパーティー券収入過少申告の疑いを報じた。
記事によると、古屋議員の事務所は、政治資金パーティー券の販売実態をノートで管理した上で、政治資金収支報告書には実際の収入の半分程度しか記載していなかった疑いがあると言うのだ。
これに対して、古屋議員は実際の収入と報告書への記載にはほとんど差はないと答えたと報じられている。本来は、差はあってはならないはずなのだが、議員本人が差の存在自体は認めたかたちだ。
何が行われていたのか
朝日新聞の記事によると、古屋議員が開いた2016年の政治資金パーティーにつき、実際の入金が1188万円あったところ、昨年11月に公開された20116年分の収支報告書に記された同パーティーの収入は642万円だったというのである。実際の入金が1188万円であれば、500万円あまりが報告書には掲載されず、いわば裏金として消えてしまったことになる。
その1188万円の内訳について管理していたと思われるノートの存在を朝日新聞がスクープした。記事には、その画像も掲載されている。
個別の企業名は隠されているが、何かの通し番号(記事によればパーティー券の通し番号)、企業名、丸で囲んだ数字(記事によれば実際に売れた枚数)、数字(記事によれば購入を依頼した枚数)、担当者名が写っている。このノートで、パーティー券の販売実態を記録管理していたということなのだろう。
朝日新聞は、このノートに記載されている企業に取材を行い、丸で囲まれた数字が実際にパーティー券を購入した数、ただの数字が購入を依頼された数であることを確認しているとも伝えている。
購入した企業の側に嘘をつく動機はあまりないので、おそらく実際の購入枚数はそのとおりなのだろう。政治資金パーティーの開催自体は法律上も認められているので、正直に収入を報告すれば、それで済むはずなのだが、実際には過少に収支報告がなされていた疑いが濃厚だ。
「券は売って費用は最低限」が政治資金パーティーの成功の秘訣
政治資金規正法では、パーティーごとの総収入や20万円を超える購入者の名前や金額の報告が義務付けられている。
国会議員のパーティーとなれば、その券は1枚数万円というのが相場だ。20万円を超えるとなると、10枚単位での購入ということになる。実際に、それほどの枚数を購入している人や企業は限定されることから、購入者の名前や金額が報告されることは必ずしも多くはない。
もちろん、パーティー券を購入したからといって、実際にパーティーに足を運ばなければならないわけではないので、購入された枚数分の参加者があるわけではない。購入だけして実際には会場に来ない人の存在は政治家の側も重々承知している。むしろ重要なのは、そのようなパーティー券を購入しても実際に会場へ足を運ばない人の存在だ。その数をどれだけ確保するのに、事務所関係者は苦心することになる。
というのも、パーティー会場では飲食物を提供することが多く、その費用がパーティーの収支に直結するからだ。提供した飲食物のわりに参加者が多いと、参加者からは「少ない」と不満が出るし、飲食物が多過ぎれば、その分が損失となる。たくさん券は販売して、それなりの参加者があり、当日かける費用は合理的な範囲内で、というのが政治資金パーティーの成功の秘訣だ。
裏金作りにつながりかねない政治資金パーティー
パーティーの1回の収入が1千万円以上になると「特定パーティー」として収支報告書に購入者の総数の追記が必要とされる。購入者数が明らかになってしまうと、当然に、今回の古屋議員のように申告と実態が合っていないという指摘を呼ぶ可能性が生じる。これが過少申告の一因になっているのかもしれない。
悩ましいのは、購入されて実際に入金があった口数と当日の参加者数は当然に合致しないということだ。先に述べたように、券は買っておいて、当日は来ないという人が最初から想定されている。ただ、そういうことを知らない参加者もいるので、参加者の中から、「購入者総数のわりに参加者が少なかった。何か変だ」という声が出かねない。
記者も当日は取材に訪れているので、事後に報告書を確認して、実態と合っているかどうか探ることも出来る。政治家としては探られたくない腹を探られることは避けたいというのが本心だろう。
また、パーティー券だけ事前に送っておいて、パーティー当日に、会場で精算するということも可能だ。そういうことがあるからこそ、古屋事務所のノートにあったように、券に通し番号を振って管理することになる。それでも、一部事前に振込で券の代金を支払っておき、当日残りの分を払うといった人、あるいは、パーティー券の代金以上のお金を会場の受付に置いていく人もいないわけではない。
古屋議員の肩を持つわけではないが、どうしても誤差が生じる余地があるのである。裏を返すと、そのような誤差の中に、裏金を忍び込ませることも出来ないわけではない。今回、朝日新聞が見つけてきたノートは、経理担当者の表の報告書と裏の実態管理簿を使い分けるための道具であったように見える。
そうやってひねり出した利益は私設秘書を雇う費用などに消えていく。今回、古屋議員が過少に申告していたとしても、それで私腹を肥やしというわけではなく、実際には日々の政治活動の中でそのお金は消えて行ってしまったというのが実情だろう。
いずれにしても、実態と政治資金収支報告書が合わないというのは許されることではない。最終的には、修正報告を行うことで事を治めるということにはなるのだろうが、安倍総理の父親の晋太郎氏の秘書を務めた経験もある古屋議員。総理とも近しい関係にあるようなので、「お友達」優遇といわれないよう、その襟をきちんと正して欲しいところだ。