国会会期中には国会議員に不逮捕特権がある
日本国憲法第50条は、国会議員の不逮捕特権について定めている。この規定があるため、国会議員は現行犯や所属議院の許諾のある場合を除いて逮捕されることはない。
国会議員の活動が逮捕によって不当に妨げられないように憲法で特権を認めているわけだが、いまや不正を犯した国会議員を守るために機能してしまっているのがこの不逮捕特権であると言えるような状況になってしまっている。
と言うのも、先の参議院議員選挙をめぐる不正な資金の流れが伝えられた河井克行・案里両議員が結局逮捕されることはなく、国会の会期末を迎えそうだからだ。
既に法定額以上の報酬を車上運動員らに支払うという公職選挙法違反に問われた河井議員の元秘書の裁判は進行している。
この元秘書の取り調べの過程で、河合夫妻の関与や不正な資金の流れに関する証拠も広島地検は得ているようだが、結局、河合夫妻の逮捕許諾請求を国会には行う気配はない。
どうやら、逮捕許諾請求が必要とならない国会閉会後に、事態を動かす算段のようである。
会期末は6月17日
今国会の会期末は6月17日である。
新型コロナウイルス感染症対策に関する審議を行うべく野党は会期の延長を求めている。
対して、与党はそれに応じるつもりはないようで、このまま会期末を迎えることになりそうだ。
そもそも安倍政権下では通常国会の会期延長は例外的だ。
加計学園問題を抱える中、国会閉会となる見通し - 霞が関から見た永田町
こちらの記事は2013年から2017年までの会期延長の有無と日数を示したが、その後は以下のとおりである。
2018年:32日
2019年:0日
2020年:?
現在の安倍政権になって2013年から8回の通常国会を経ることになるが、その間に会期延長を行ったのは、2015年と2018年のみである。
果たして今国会はどうであろうか。このまま会期延長をせずに国会を閉じれば、その後には河井夫妻の疑惑を追及する検察の動きが具体化することになる。
河井夫妻の疑惑は自民党本部にも直結する?
新聞各紙も「検察当局は国会閉会後に公職選挙法違反容疑で河井夫妻の刑事責任を追及する方針を固めた」と報じている。
新聞各紙は「逮捕」とまでは踏み込んでいないが、既に5月の連休中に河井夫妻は検察の任意聴取を受けたとの報道もある。
未確定情報であるが、その際に河井夫妻が激しく抵抗したとも伝えられている。
取り調べに抵抗が予想されるようであれば、当然に逮捕という手段に打って出ることもあり得るはずだ。
与党にとって悩ましいのは、河合夫妻の疑惑が追及されると、それは自民党本部にまで類が及ぶ可能性があることだ。
河合夫妻は票の取りまとめのために地元の地方議員らに現金を配ったという疑惑が取り沙汰されている。この現金の出所が自民党本部である。
自民党本部の元職員にも検察は任意聴取を行ったとも伝えられている。
河井夫妻の容疑について調べるために、自民党本部へ捜査の手が及ぶ可能性もあるだろう。
国会を開いていれば、野党から新型コロナウイルス感染症対策に関わる不手際や給付金交付事業に関する疑惑の追及に遭う。さりとて、国会を閉じると、適材適所として法務大臣に任じたこともある河井克行議員と自民党本部からの異例な支援のもとに現職自民党議員を追い落としてまで当選させた河井案里議員の二人が検察の追及を受ける。そして、その追及は自民党本部に及ぶ可能性すらある。
安倍政権は何とも八方塞がりな状況に追い込まれてしまっている。