霞が関から見た永田町

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新型コロナがトリガーで現実味を増す道州制

今回の一連の新型コロナで安倍政権の凋落傾向が著しい。もともと低空飛行ではあったが、NHKの世論調査によると年初に44%あった政権支持率は4月14日現在で39%。もうまもなく、5月集計の政権支持率も発表されるころだが、アベノマスクの失敗をはじめ、検察官定年延長を巡って、安倍政権に対する世間の見る目は日増しに厳しくなっている。

 

一方、めきめきと評価を上げているのが、小池東京都知事であり、吉村大阪府知事だ。小池都知事については、元来の世間の空気を読むことに対しての天才的なセンスと、7月に控えている都知事選、そして何よりこの局面でパフォーマンスをすることで再び、日本初の女性総理大臣が見えてくるという色気もあっての行動、言動と言っていい。という意味で筆者は冷ややかに見ているが、それでも彼女が有事のリーダーとして期待感をもって世間が見ているのは間違いない。

 

 

新型コロナで評価を上げた首長たち

小池氏との比較で、その存在が際立つのは吉村氏だ。彼もいずれは国会へ戻る人材だろうが、今はそういう野望が前提にあっての、新型コロナにおける府知事のパフォーマンスではない。純粋に知事として、この有事をどう乗り切るか、府民の命と経済をどう守るか、という職責からの行動と、世間の目には映っている。だからだろう、一部のメディアでも吉村氏の未来の総理大臣待望論という論調も出ている。

 

さて、本稿で書きたいのは未来の総理大臣に誰がふさわしいか、という話ではない。この有事で知事や市長など自治体リーダーに注目が集まったことで、地方分権が加速するのではないか、ということだ。

 

リーダーによって、かくも違うものか、ということを日々、私たち国民は見せつけられている。しかも、ウィズコロナ、アフターコロナでは人々の働き方も変わっていく。今までのように、決まった時間に通勤ラッシュに揺られてオフィスへ行き、そこで仕事をするというスタイルにはもう戻らない。オフィスワークとテレワークのハイブリッドへ移行していくだろう。

 

働き方の変化で地方へ人が動き出す

例えば、午前中はオンライン会議などテレワーク、午後からオフィス勤務というスタイルになるかもしれないし、テレワークを基本にしつつ、週に2日はオフィス勤務というスタイルになるかもしれない。様々なタイプのハイブリッドが生まれるだろうが、いずれにしてもオフィスに全社員分の床と机を用意する、というスタイルは終わりを告げる。

 

オフィスの床面積が減れば、その分、賃料は下がり、それは場合によっては社員の通勤定期へ回る可能性が出てくる。つまり、東京や大阪、名古屋、福岡など各経済圏の中心地から新幹線で1時間離れた場所も住む場所としての選択肢になっていく時代の始まりだ。都市への人口集中が逆回転を始める可能性がある。

 

コロナによる人々の地方回帰は調査からも明らかになりつつある。例えば、NHKの報道によると、20代転職希望者への調査によると、地方へ転職したいという意識が都市部の若者に広がっているといい、実に36%の回答者が「地方への転職を希望する」と答えたという。この数字は今年2月の数字より14ポイント多くなった。

 

スワローズの脱東京の衝撃

ほかにも、ある。ヤクルトスワローズが本拠地を現在の神宮球場から静岡市、新潟市のいずれかに移転するかもしれないという、ウルトラCが囁かれている。この話は夢物語ではなく、意外に現実味を帯びそうだ。

 

こうした新型コロナを契機にした人や企業の地方への流れ、そして前述した自治体リーダーによる都市経営の巧拙が合わさってくると、いよいよ、地方分権、道州制の議論が活発になるのではないか。これまでにみんなの党や大阪維新の会など、道州制を政策イシューに掲げた政党は生まれては消えていったが、政治からの道州制は業界内のステークホルダーもあって、なかなか議論が前に進まなかった。

 

経済が地方分権を加速する

しかし、今回は新型コロナという外圧によって、企業や人が地方へと移動、あるいは移動する意向を持っていることが明らかになっており、もしかすると、経済活動がトリガーとなって地方分権の議論に再び火がつくかもしれないのである。政治も経済も文化もすべてが東京に集中している姿はある意味、異様でもあった。日本をバランスある国家へリデザインするためにも、今はチャンスといえよう。