一か月も前に野党が提案していた
国民1人当たり10万円現金給付
4月16日、新型コロナウイルス感染症対策として、国民1人当たり10万円の現金給付を行うという方針転換がなされることになった。
既に国民民主党などの野党からは同様の提案がなされていた。
例えば、国民民主党は、3月18日に発表した緊急経済対策の中で国民1人当たり10万円の現金給付を提案していた。
野党からの提案を無視し、一部の国民を対象にした30万円の給付に政府は固執してきたわけだが、支持率の下落もあってか、4月15日に連立を組む公明党の山口代表からの国民1人当たり10万円の現金給付の提案がなされて、ようやくの方針転換となった。
この件に代表されるように、安倍政権のコロナウイルス感染症対策は少しずつ遅れることが多い。
現金給付については、3月の時点で、広く国民全体への支援の必要性が指摘されていた。野党からの提案だから受け入れられないということなのか、この間、その対策は採用されずにきた。しかし、結局それを採用するわけであり、一か月近くの時間を浪費したことになる。
この後に補正予算を組み替えて、給付を始めるということになるが、実際に国民の手元に現金が届くまで、さらに時間を要することになる。
野党の提案を採用したくない与党の面子なのか、予算を握る財務省の意向なのか、よく分からないが、現金給付も一歩遅れた対策となってしまった。
緊急事態宣言の指定地域の拡大も遅れる
16日には、既に発令されている緊急事態宣言の対象を全国に広めることも表明された。
7日に対象地域を指定した際に、対象外となった京都府や愛知県から対象に含めるよう声が上がっていた。これも結局対象を全国に拡大することになったわけで、遅れての対応となったことは否めない。
全てが後手であり、対応策が泥縄式に繰り出される現状である。そして、感染拡大という現実は進行し、さらには経済的苦境に立たされている国民の多くへの救済策も立ち遅れていっている。
このまま後手後手の泥縄式の対応を続ければ、感染拡大だけではなく、経済的な窮地からも抜け出せないという状況に陥らざるを得ないだろう。もはや現在の安倍政権に先手の対応は求めるべくもないのかもしれないが、先手の対応が今こそ求められている。
野党の提案にも真摯に向き合い、一日も早い対策を
先の国民1人当たり10万円の現金給付がそうであったように、野党からも様々な提案がなされている。
しかし、安倍政権では、野党からの提案に真摯に向き合わない姿勢が顕著である。そのために、野党がまともな提案をすると、かえってその提案が実現されず、政権側の出した的外れな策が強行されてしまうという悪循環が生まれてしまっている。
このような非常時に、与党とか野党といったことは本来は無関係であり、必要とされる対策であれば、それを採用して直ちに実施すれば良いはずだ。
実際に、東日本大震災の際には、当時野党であった自民党や公明党からの提案を民主党政権は取り入れていた。
国難と言える事態に何が適切な対応策なのか。実際に政策の実施にあたる政権側が様々な提案に真摯に向き合い、必要とあればそれが野党による提案であっても受け入れて、迅速に実行に移すべきである。
現在も例えば国民民主党から不動産の賃料支払いを猶予する法案の提出を行うとの提案がなされている。
緊急事態宣言の対象地域が全都道府県となることに伴い、これまで以上に休業する事業者や個人が増加するはずである。
対象地域を拡大するのであれば、その対応策もセットで迅速に実行に移すべきだろう。
事態の進展は急であり、一刻の猶予もない。
野党からの提案にも真摯に向き合い、必要な対策を一日も早く打ち続けることが安倍政権には求められている。