霞が関から見た永田町

霞が関と永田町に関係する情報を、霞が関の視点で収集して発信しています。

MENU

新型コロナを契機に9月入学へ

 

猛威をふるう、新型コロナウイルス。緊急事態宣言から2週間が経ってもなお、新規の感染者数が劇的に減るには至っていない。学校教育に目を向けると、3月の卒業式はなくなり、4月の入学式も既に見送られたところだ。こうした形で人生の節目を祝うことができなかった新入生は気の毒としかいいようがないが、それだけ新型コロナウイルスが社会に与える影響は大きい。

 

 

新型コロナで拡大する教育格差

今回の新型コロナウイルスは社会の様々な分野に影響を与えるのが、その中でも顕著なのは教育だろう。ゴールデンウィークまでは授業を開始しないという対応を取っているわけだが、果たしてゴールデンウィーク明けに授業が再開できるのか、その見通しは経っていない。特に緊急事態宣言から2週間が経ってもなお、新規感染者がそれほど減っていないことから、ゴールデンウィーク後も引き続き、緊急事態宣言を出さなければいけないのではないか、という論調もある。

 

4月の1ヶ月間だけを見ても、学校の教育現場に与えた影響は大きい。特に大学、高校、中学の学びの継続をどうするかは悩ましい問題だ。一部の私学はオンライン授業に切り替え、何の問題もなく授業を継続している一方、公立の場合は、オンラインに切り替えられずに、実質、学びがストップしている。

 

また大学もマンモス校ほど対象となる学生、教員の数が膨大になるため、オンラインへの移行に難しさがつきまとう。都内にある、某有名私大の場合、非常勤講師まで含めると教員だけで6000人にものぼり、かつ、教員のネットリテラシーにばらつきがあること、学生も万を超える数がいることから、完全オンラインの移行を断念し、公平を期すために、「授業を停止」したと聞く。もちろん、大学の中には、「オンラインで対応できる授業だけでもオンラインでやる」という融通を効かせたところもあるが、いずれにしても、学びの継続性に問題が生じているのは確かだ。

ギガが足りない

こうした状況を踏まえて、3月以降、民間企業主導で教育のオンラインコンテンツが提供されてきたが、それでも、やはり、地域や家庭の格差を埋めるには至っていない。社会のインフラになったとはいえ、まだパソコンを持っていない家庭もあるし、ネット環境もスマホ頼みであれば、あっという間にギガを超えてしまう。通信費がかさんでしまい、ストレスなく学べる環境にない人も多いだろう。

新型コロナウイルスで生まれた学びの格差に注目しているのが、国民民主党の玉木代表だ。玉木氏は自身のFBで「学びの継続性」「遅れを取り戻すキャッチアップ」を目的に、9月入学を提案している。9月入学、新学期を検討することで等しくスタートできるようにすべきだというのが玉木氏の主張だ。特筆すべきは、すべての生徒が等しく学習できる環境を整えるために、ネットワーク含めて国が責任を持って対応しようではないか、と言っている。

9月入学移行への法的ハードルは低い

そして、驚くべきことに9月入学への移行はそれほど難しくないという。現在の4月入学を決めているのは法律でも政令でもなく、文部科学大臣が出す省令で定めているとのことで、ここは積極的に議論することで、速やかに9月入学へ移行しようというのが玉木氏の主張で、ここは一聴に値するだろう。

既にアジアでは中国も韓国も台湾も9月入学へ切り替わっており、世界はもちろん、アジアのスタンダードになっている。9月入学のメリットはほかにある。入学の時期が揃うことで、留学生の受け入れがより活発になるし、それによって東大や京大など日本の大学の競争力が高まることも想定される。また、大学受験の時期が真冬でなくなることから、インフルエンザなどの感染症により試験が受けられないといったことも避けられる。

今回の新型コロナを契機に、入学の時期を再検討するアイデアは是非とも検討して欲しいものだ。