火事場泥棒、現れる?
火事場泥棒
- 火事場のどさくさに紛れて盗みを働く者。火事どろ。
- ごたごたにつけこんで不正な利益を得ること。また、その人。火事どろ。
(デジタル大辞林より引用)
新型コロナウイルス感染症の感染拡大という非常事態につけこんで不正な利益を得ようとする火事場泥棒のような者がいるらしい。
先日、政府の行う布マスクの配布にかかわり、調達に応じた3社の社名が厚生労働省から公表された。当初、4社が調達に応じたと伝えられており、残りの1社が不明である点につき疑念があることは指摘したところである。
その後、残りの1社と追加でもう1社、計2社の社名が公表された。
公表された社名は、ユースビオと横井定。
横井定はマスク専門企業であり、Web検索をすれば会社の詳細も容易に知ることが出来るが、一方のユースビオはそうではなく、いわば謎の会社だ。
早速、マスコミやネット上で、その正体を探る動きが活発化している。
こちらの東洋経済onlineの記事に、この間の出来事の時系列が掲載されているが、何とも怪しい動きが透けて見える。およそ公共調達に応札する資格がないような企業が突然参加を認められ、大きな金額の調達に応じているのだ。
公共調達に応じるのは簡単ではなく、実際に今回の布マスクの調達に応じたのも、ユースビオを除けば、相応の規模や実績がある企業だ。ユースビオと同時に社名を公表された横井定もマスク専門企業であり、その詳細を見れば、公共調達に応じたことにも納得がいく。しかし、ユースビオについてはそういう納得のいく説明がしにくい。むしろ、何らかの口利きがあって潜り込んだのではないかとの疑念を持たざるを得ない。
実際に、ユースビオと公明党議員との関係も取り沙汰されている。果たして政治家の口利きで、これまで布マスクを扱ったこともないのに、これだけの大規模な公共調達に応じることが出来るようになってしまうものなのだろうか。あれよあれよという間に布マスク納入が決まったようだが、随分と話の都合が良すぎないだろうか。
厚生労働省が遅れて情報を公開したことも、その疑念を強めている。良からぬ者がどさくさに紛れて、不当に利益を得ているのではないだろうか。新型コロナウイルス感染症の感染拡大という非常時に、混乱に乗じて火事場泥棒のごとく利益を上げたということであったら、それは決して許されることではない。
非常時を理由に確認の手を緩めてはならない
今回の布マスクの配布は、それ自体が何とも唐突であった。マスクを国民に配布すること自体は感染症対策としてあり得る方策であるとは思うが、取って付けたように安倍総理から実施が表明されたからだ。
週刊文春も布マスクの配布について検証する記事を掲載している。
これを見ても、随分と場当たり的に実施が決められた対策であることがうかがえる。
担当官が「数さえ揃えばいい」と言い放ったと記事にはあるが、まさに布マスクの数だけ揃えれば、後はどうなろうと知ったことではないと言わんばかり。
ユースビオのような実態がつかめない企業が公共調達に参加している。さらには、466億円と言われる予算の一部分しか、その内訳が未だに明らかにされていない。
しかし、こういう政府の手抜きやそれに乗じて利益を得ようとする良からぬ者の存在も、刻々と進展していく事態を前にして、その実態がかき消されてしまいがちだ。
5月6日までとされた緊急事態宣言も延長される見通しとなった。
今後は、緊急事態宣言をどこで終わりにするのか議論されることになるだろう。それはもちろん重要なことではあるが、その裏側で税金を原資とする公共調達を食い物にする企業なり人物、さらには政治家や役人もいるかもしれないことは忘れてはならない。
火事場泥棒は混乱に乗じて不正に利益を得る。今回のような公共調達の事案では、不正の損害を負うのは国民である。混乱の中だからと不正を見逃すことは国民に不当な負担を押し付けることに他ならない。
非常時を理由に、不正がないのか否か確認する手は緩めてはならない。